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人生100年時代と賃貸住宅の役割

公開日: 2026.03.10

最終更新日: 2026.03.12

2025年11月、およそ5年ぶりに国土交通省が管轄する住宅宅地分科会から「住生活基本計画」の素案が発表されました。

この計画は、今後の住まいに関する国の方針を左右するものであり、ひいては不動産に関わるすべての方に大きな影響を及ぼします。

既存の不動産オーナーは元より、今後、相続や資産運用などで不動産に関わる可能性がある方は特に、しっかり内容を確認する必要があります。

そこで、これから複数回に分けて次期「住生活基本計画」についてお伝えしていきたいと思います。今回は、「ヒト(住人)」に関する部分について見ていきましょう。



1.住生活基本計画とは?


そもそも住生活基本計画とは、住生活基本法に基づいて、国民の住生活の安定の確保と向上の促進に関する基礎となる計画のことを言います。

つまり、国民の「住まいに関する国の方針」であるともいえます。

この住生活基本計画は大きく2種類あり、国が作成するものを「全体計画」といい、その後、この全体計画に沿った形で各都道府県が具体的な対応を示す「都道府県計画」が公表されます。

つまり、国が全体的な方向性を定めて、その後に各都道府県が全体計画を元に、各都道府県の事情に合わせて具体的な計画を作成する...といった流れになります。

住生活基本計画には、たとえば「子供を産み育てやすい住まいの実現」など、現在8つの目標が設定されています。

また、主要項目の達成具合を分かりやすくするために、「民間賃貸住宅のうち、一定の断熱性・遮音性がある住宅の割合」などの具体的な数値目標が設定されます。

この達成度合や世の中の変化などを見ながら、5年ごとに計画自体が見直されていくことになります。

先程申し上げたとおり、国の計画は「住まいに関する国の方針」ですから、実現するために補助金や減税などの形で大きなお金が動くことになります。つまり、この住生活基本計画に沿って動けば、それだけ不動産業において有利に動けるわけです。

また、具体的な「都道府県計画」に先んじて「全体計画」が公表されるわけですから、一歩先読みし対応するためにも、不動産業に関わる(かもしれない)方はしっかりその内容を把握しましょう。

2. 今回の住生活基本計画の背景について


近年、世の中は大きく変わってきましたが、国視点での最たるところが「総人口の減少」です。合わせて、今後は継続的に子育て世帯が減少する一方で、高齢単身世帯は増加し続けることがほぼ確定的となっています。

実際、厚生労働省の令和5年「将来推計人口の概要」によると、今後の人口推移予測は以下の通りです。

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出典:厚生労働省 令和5年「将来推計人口の概要」

また、先ほどの「ヒトの変化」は、「モノ(へのニーズ)の変化」も起こします。
シンプルなところを挙げれば、やはり子育て世帯と高齢単身世帯では、求める住まいが違うわけです。それも重なり、今後は住宅の大量相続が発生するとともに、それらが「空き家」になりかねない点も予測されています。

なお、総務省の令和5年「住宅・土地統計調査」によると、現在の空き家状況は以下の通りです。

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出典:総務省 令和5年「住宅・土地統計調査」



このようにヒト・モノが変化する中でも、衣食住の一角である住環境は国民に欠かせないものです。

同時に、今の日本は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて進んでいる状況です。そのような点も踏まえ住環境を最適化しつつ、2050年の目標を実現するためには、国や地方公共団体だけでなく、不動産に関係する事業者やNPO、不動産オーナーなどあらゆるプレイヤーが目標を共有し、相互に連携しながら取り組んでいくことが不可欠と国は考えているわけです。

このような点から、今回の住生活基本計画では、大きく「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」それぞれの視点から、時代の変化や現状を踏まえつつ、目標設定や今後の計画が作成されました。

不動産に関係する(かもしれない)方は、まさに一人のプレイヤーとして、この計画の中身をしっかり知っておきましょう。

3「住まうヒト」に対する政策について(国が将来的に目指す姿)


「住まうヒト」の視点において、国が将来的に目指しているのは以下の通りです。

  1. 人生100年時代を見据え、高齢者が孤立せず、希望する住環境を実現できる環境整備

    ・資産運用も活用しながら早期の備えを自発的に意識し、
     ライフスタイルに合った住まいへの円滑な住み替えやリフォームが可能となる

    ・住まいの近くに医療・福祉施設等があり、多世代との交流が定着し、
     (単身)高齢者が孤立せず、安心して健康に暮らすことが可能となる

  2. 若年世帯や子育て世帯が希望する住まいを確保できる社会の実現

    ・低所得世帯でも住まいが選べるとともに、多世代との交流や社会活動への参画など、
     地域コミュニティとの繋がりを持ちながらの居住が可能となる

    ・子供の数や世帯構成の変化などに応じて住まいを選べるほか、
     仕事と子育ての両立がしやすい住まいを選ぶことが可能となる

  3. 住宅確保要配慮者が安心して暮らせる居住環境・居住支援体制の整備

    ・公民双方の賃貸住宅がともに住まいを安定させ、「気づき」と「繋ぎ」を元に、
      住まいを確保することが困難な人でも地域で住まいを確保できる

    ・不動産や福祉の関係者が居住支援協議会を通して互いに連携し、
     入居前の相談から退去までの支援が円滑に行われる仕組みが整備される

    ・公的賃貸住宅も含めて、公民連携による資産運用の観点も取り入れた整備や所有、
     管理運営がなされることで、地域活力の維持・向上が進む

    ・身寄りのない単身高齢者等でも、賃貸住宅に円滑に安心して入居できる

  4. 過度な負担なく希望する住生活を実現できる環境整備

    ・誰もが過度な経済的負担を感じることなく将来を見通せ、
     比較的優良な住まいを確保できる市場が構築される

    ・住宅取得希望者が、効率的に必要資金を準備でき、多様な住まいの選択肢が市場に供給される

このように一見、広範囲の目標が設定されていますが、突き詰めれば「誰でも孤立することなく適した住まいを確保することができるようにしたい」ということになります。

ただし、肝心の「誰でも」という点が、今や昔と違っています。現在は多様化を受け入れる(≒受け入れやすい)社会になっているので、住まいに関しても高いレベルでこの多様化に対応するため、準備・整備しなければならない...ということになります。

4.「住まうヒト」に対する政策を受けてのオーナー視点で大切なポイント


先ほどの通り、「住まうヒト」の視点では今回、4つの方向性が示されました。
住生活基本計画では、それぞれの方向性において具体的な指針も示されているので、しっかり把握しておきましょう。

少し量がありますので、今回はオーナー視点で大切なポイントに絞ってお伝えします。

まず高齢者向けとしては、大きく「バリアフリー化、省エネリフォーム」、「サ高住やセーフティネット登録住宅」、「ICT活用住宅※、居住サポート住宅」あたりを国は求めています。いずれも、高齢者向けの話題で比較的よく聞くところかもしれません。

※ ICT活用住宅とは、情報通信技術(ICT)やモノのインターネット(IoT)技術を住宅設備や家電に取り入れ、インターネットと繋ぐことで、生活の利便性、快適性、安全性、省エネ性を向上させた住宅

若年・子育て世帯向けとしては、大きく「子育て対応リフォーム、テレワークスペースの設置」、「子育て支援施設や医療施設等との併設」、あたりが求められています。また並行的に、これらを実施する際の「相続空き家の活用」が望まれている様子です。

単身高齢者や低年収世帯向けとしては、大きく「セーフティネット登録住宅の促進」「居住支援法人や関係機関との連携による就労支援や死後事務も含めたサポート体制の推進」あたりが求められています。

これについては主には公営住宅やUR賃貸住宅の領域ですが、オーナーの考え方によっては、できる範囲で対応していくのもアリかもしれません。

過度な負担を防ぐ形としては、大きく「(空き家の)サブリース活用」、「住宅金融支援機構による金融支援」などが挙げられます。賃貸オーナーがこれらを活用することで(≒これらを活用した物件を入居者が選ぶことで)、オーナー側の経済的負担やリスクが軽減され、その結果として家賃水準を抑えやすくなる、という間接的なロジックに基づいています。

これは「オーナーがこうした制度を使うと入居者の負担が直接的に下がる」という話ではなく、「オーナー側の負担を軽くすることで、しわ寄せが入居者に行かないようにする」という趣旨です。国としては、こうした制度の活用によって、比較的割安な賃料水準の供給につながることを期待しています。

これらが関係するかはオーナー次第ですが、オーナーとしては知っておきたいところといえます。

そして、これらの目標に対する具体的な指標としてオーナーにも関係するものとしては、「高齢者向け住宅の供給数」が挙げられています。

高齢者は今後、増えていく予想がありますから、どの方向性で話に乗るか判断に迷われたら、この高齢者向けを優先的に考えるのも一つかもしれません。

5.「住まうヒト」に対する政策を受けてのオーナーが考えるべきこと


前述しましたが、この住生活基本計画は国の今後を左右するものであり、その実現のためにさまざまな形で大きな資金が動きます。つまり、この計画に基づき行動できれば、相応の恩恵を得られる可能性が高まるわけです。

現在の経営状態が不十分な方なら尚更ですが、そうでない方でも、なるべくこの計画に乗る方向性で検討することをおすすめします。

ただし、とにかくどんな政策でも乗れば良いというわけではありません。高齢者向けか、子育て世帯向けか、あるいは単身高齢者や低所得世帯向けか...「どの話(政策)に乗るか」を考えることが大切です。

そのためには、「自身の(予定している)物件の立地」が重要になります。エリアマーケティングを通して、なるべく未来の入居者に選ばれやすい方向性で考えましょう。


また「優先順位をどうするか」も大切です。

4つの方向性もそうですが、同じ方向性のものでも複数の対応方法があります。

なるべく多く対応したいところですが、残念ながらお金や時間は有限です。資金とコストの両面を意識してコスパを考え、優先順位を決めて対応していくことをおすすめします。


もっとも、不動産には不動産業者という心強い味方が存在しますから、けして一人で考える必要はありません。エリアマーケティングの相談・依頼も含めて、彼らと一緒になって動けば良いわけです。頼れる不動産業者を味方に付けて、この住生活基本計画に効果的に乗りましょう。

6. ここまでのまとめ


まず「住まうヒト」の視点では、大きく「高齢者向け」「若年層・子育て世帯向け」「単身高齢者や低所得世帯向け」に改善が計画される一方で、「過度な負担を防ぐ形」の計画も作成されました。
住生活基本計画は国の計画であり、その実現のために大金が動きますから、オーナーならなるべくこの話に乗るほうが有利です。
まずはエリアマーケティングで自身の物件の立地を考え、合わせて計画への乗り方や優先順位なども考え、今後の不動産ビジネスに活かしていきましょう。


引き続き、住まうモノの視点である『【中編】賃貸住宅市場の循環とストック活用 (公開準備中)』もご確認下さいませ。


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■監修者プロフィール

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)/JーFLEC認定アドバイザー(金融経済教育推進機構)