1. TOP
  2. 土地活用ナビ
  3. 賃貸経営
  4. 2025年(令和7年度)基準地価に基づく 今後の見通しと賃貸経営への影響

土地活用に役立つ情報が満載!土地活用ナビ

2025年(令和7年度)基準地価に基づく 今後の見通しと賃貸経営への影響

公開日: 2025.12.10

最終更新日: 2025.12.19

1. はじめに

2025年(令和7年度)の基準地価が国土交通省より公表されました。

全国平均では住宅地・商業地ともに4年連続の上昇を続け、都市圏を中心に上昇幅が拡大しています。

一方で地方都市や災害被災地では依然として下落傾向が続いており、地域差が鮮明になっています。
土地オーナーや賃貸オーナーにとって、この動向は資産価値や賃貸経営の戦略に直結する重要な指標です。

本コラムでは基準地価の仕組みと最新動向を整理し、今後の見通しと賃貸経営への影響を考えます。

1-1. 図表:全国平均地価の推移

住宅地・商業地・工業地の地価変動率を折れ線グラフで表示しています。 都市圏の上昇基調と、2020年のコロナ禍による一時的な下落が視覚的に確認できます。

1_chikasuii.png出典:国土交通省「令和7年都道府県地価調査」等を基に執筆者作成

2. 基準地価とは?

基準地価は、都道府県知事が毎年7月1日時点の1㎡あたりの土地価格を評価し、9月下旬ごろに公表する公的な指標です。

毎年1月1日時点の1㎡あたりの土地価格が3月下旬ごろに公示地価として発表されますが、その弟分的な存在・・・公示地価を補完する位置づけにあります。

つまり、国の「地価公示」と並び、土地取引や資産評価の指標≒基準となっています。

• 地価公示:国土交通省が毎年3月に公表

• 基準地価:都道府県知事が毎年9月に公表

両者を組み合わせることで、土地市場の動向を年2回把握できる仕組みです。

2-1. 図表:地価公示と基準地価の比較

指標

公表主体

公表時期

調査基準日

主な用途

地価公示

国土交通省

3月

1月1

公的評価・取引指標

基準地価

都道府県知事

9月

7月1

補完的評価・地域動向把握

3. 今年の基準地価は

令和7年の基準地価は、全国平均で4年連続の上昇となり、特に三大都市圏では上昇幅が拡大しています。

全国21,001地点で調査され、平均価格は1㎡あたり182,264円となっています。
都市圏では再開発やインバウンド需要が地価を押し上げ、地方都市でも人口流入や利便性向上が影響しています。

全国を圏域別・用途別に見た場合の前年と比べた変動率は以下の通りでした。


3-1_hendou.png
※三大都市圏とは、東京圏、大阪圏、名古屋圏のこと

※地方四市とは、札幌市、仙台市、広島市、福岡市のこと

出典:国土交通省「令和7年都道府県地価調査」


全国の平均地価は、景気の緩やかな回復を背景に、全体として上昇基調が続いています。
全用途平均、住宅地、商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大しました。

地域別の動向を見ると、三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では、全用途平均、住宅地、商業地のいずれも上昇が継続し、上昇幅が拡大しています。
特に東京圏と大阪圏で上昇幅の拡大傾向が続いています。 地方圏でも全用途平均、住宅地、商業地のいずれも3年連続で上昇しています。

地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では上昇幅がやや縮小しましたが、その他の地域では住宅地が29年続いた下落から横ばいに転じました。
再開発の進展やインバウンド需要の増加が主因で、例えば、北海道千歳市では半導体工場進出、沖縄宮古島市では観光客の増加や大型商業施設の進出により、住宅地需要が旺盛で観光・移住需要が地価を押し上げています。

また、長野県白馬村では国内富裕層や外国人による別荘地需要、スキー場周辺のホテル開発計画により、住宅地・商業地ともに高い上昇を見せています。
地価上昇は入居需要の追い風になる一方、相続税・贈与税の負担増、物件購入コストや建築費の上昇というリスクも顕在化しています。

以下の図表は、東京圏・大阪圏・名古屋圏・地方四市・その他地方の住宅地・商業地の変動率を棒グラフで比較しました。 都市圏と地方の二極化が明確に表れています。

3-1. 図表:地域別・用途別の地価変動率(2025年度)


 - 横軸:地域(東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方四市、その他地方)

 - 縦軸:変動率(%)

 - 住宅地・商業地を色分けして表示


3-2_chikahendou.png



出典:国土交通省「令和7年都道府県地価調査」を基に執筆者作成

4. 今後の地価(不動産価格)の見通しは?

まず、今後の地価動向を左右する要因は、以下の通りだと考えます。

 • インバウンド需要が継続するか?:観光地や都市中心部で商業地価の上昇が続くか?

 • 再開発・半導体工場などの進出:関連企業の需要増で工業地・住宅地が堅調!?

 • 人口減少・地方の空洞化:一部地域では下落が続く可能性が高い!?

 • 災害リスク:能登半島地震などの影響で、今後も被災地では下落傾向

総じて、都市圏は上昇基調、地方は二極化現象が続くと予測されます。

実際、国土交通省の令和7年7月「不動産価格指数」によると、近年の住宅に関する不動産価格は以下のように推移しています。

kijunchika2025.png

出典:国土交通省 令和7年7月「不動産価格指数」


住宅の不動産価格は元々マンションを中心に上昇基調でしたが、新型コロナが流行を始めた2020年頃から一層の急上昇をしており、現在でもその傾向が続いている状況です。
先程お伝えした要因に大きな変化がなければ、今後も引き続き上昇していくのではないかと感じています。

また、同資料の商業用不動産に関する不動産価格は以下の通りです。

kijunnchika2025-2.png

出典:国土交通省 令和7年7月「不動産価格指数」

住宅に比べると乱高下していますが、大局的に見れば、上昇基調であることがわかります。
今後も単年度では分かりませんが、此方も住宅同様、先程お伝えした要因に大きな変化がなければ、引き続き上昇基調が続いていくのではないかと感じています。

以上のような状況を踏まえ、今後の経営戦略を練っていきましょう。

5. 土地オーナーや賃貸オーナーが考えておくべきこと

賃貸経営や不動産取引において基準地価の変動は「需要=人気の変化」を反映しており、賃貸経営に直結します。
上昇すれば入居者の確保が有利になりますが、同時に相続税評価額や物件購入価格、建築費の上昇も招くため、経営環境は一様にプラスとは限りません。

地価動向を踏まえ、賃貸経営において以下の点が特に重要になります。

 • 資産価値の再評価:特に都市圏の土地は売却益や担保価値の増加が期待できる!

 • 賃料設定の見直し:地価上昇地域では賃料改定の余地あり!

 • リスク分散:人口減少地域では空室リスクが高まるため、複数エリアでの投資を検討してはどうか?

 • 再開発・需要増地域への注目:半導体工場進出や観光需要が見込まれる地域は長期的に有望だと思われる

 • 災害リスク対策:地盤調査やハザードマップを確認し、適切な防災対策を図る! 例えば、耐震補強や保険加入を強化し、資産保全を図る

5-1. 図表:賃貸経営におけるリスクと機会の整理表



観点

機会

リスク

地価上昇

資産価値増加

固定資産税負担増

賃料設定

賃料改定余地

入居者負担増による空室リスク

投資戦略

都市圏での拡大

地方での空室増加

災害対策

保険・補強で安心

コスト増加




6. まとめ

令和7年度の基準地価は、全国的に上昇基調を維持しつつも、地域差が拡大しています。
土地オーナーや賃貸オーナーにとっては、都市圏の上昇を追い風に資産価値を高める戦略と、地方のリスクを見極める慎重さの両立が求められます。

具体的には、地価の変動や推移を定期的に確認し、賃貸経営の意思決定に活用することが重要です。

そのためにも、なるべく日頃から頼れる不動産業者やFPを味方に付けて、変化に迅速に対応できるよう備えていきましょう。

■監修者プロフィール

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)/JーFLEC認定アドバイザー(金融経済教育推進機構)