【2025年/令和7年】賃貸経営に興味がある、または検討中の方に知っておいてほしい最新の金利動向
公開日: 2025.01.23
最終更新日: 2025.01.28
昨今、老後資金2000万円問題を皮切りに、老後不安が強まっています。
また、その対策として、iDeCoやNISAなどの資産運用が急速に広がる一方、怪しい金融商品のお話しも見受けます。
ただ、さらなる資産形成の一環として、賃貸経営に興味を持つ方が増えてきたことはとても良いことだと感じています。
賃貸経営に興味があるなら、双方に密接な関係がある「金利」のことも知っておくことが大切です。
そこで今回は、金利の基本から今後の見通し、賃貸経営への影響に至るまで、幅広くお伝えします。
1. 金利の基本と現状について
そもそも「金利」とは、「お金を貸し借りする際の手数料」のことを言います。
「金利」は一般的には「1%」など%で表され、一定期間、お金を借りた側はお金を返す際、金利という手数料を上乗せして返済します。
当然ながら、金利が高いほどに手数料が高くなる...借りる側からすれば、お金を借りるコストが高くなることを意味するわけです。
一般的に賃貸経営を始めるには数千万円~数億円のお金が必要になります。
大抵の人は、そんな大金を自力で用意していません。そのため、賃貸経営を始める際に、アパートローンや住宅ローンなどを使って、お金を工面することになります。
あらゆる料金が商品やお店によって違うように、金利も商品やお店(基本的には金融機関)によって違います。参考までにお伝えすると、最近のアパートローン金利(基準金利=店頭金利=いわゆる定価)は「およそ4~5%」が相場です。
一方、アパートローンの適用金利(いわゆる実際の価格)は「およそ1.5~2.5%」となっています。
参考までに、住宅金融支援機構の「賃貸住宅融資金利の推移表」によると、最近の参考金利(≒住宅金融支援機構による予想適用金利)は以下のように推移しています。
[出典:住宅金融支援機構「賃貸住宅融資金利の推移表」]
仮に、1億円を30年返済、金利2%で借りたとすると、支払う金利の総額は約3300万円になります。
しかし、同じ条件で金利が1.5%なら、金利総額は約2400万円です。このように大金を借りる場合は、0.5%違うだけでも大違いになります。
金利は返済期間や金利の種類(固定金利・変動金利等)などによっても変わってきますが、金利そのものも、絶えず変化していきます。
借りる側としては、金利は安いほうが良いですが、そう都合よくはいきません。お金を借りる際≒賃貸経営を始める際にはタイミングも大事で、「金利の動向」も注視しておく必要があります。
2. 国内・世界の金利情勢は
重ねて・・・今の金利(水準)が高いか安いかは相対的なものです。
まずは時間軸・・・過去と比べて今がどうかを考えて、そのうえで今後(の予測)と比べて今がどうかを考えることが重要です。
住宅金融普及協会の「民間金融機関の住宅ローン金利推移」によると、近年の住宅ローン金利は以下のようになっています。
一般的な賃貸経営で使うのはアパートローンですが、金利の動きは同じ(アパートローンの方が割高なだけ)ですから、これで金利の動きや高低を把握しましょう。
[出典:住宅金融普及協会「民間金融機関の住宅ローン金利推移」]
この通り、金利はここ20年ほど超低金利の状態が続いていました。
近年は少しずつ上昇基調が出てきましたが、変動金利については未だに上がっていません。
一方、金利はさまざまな要因が絡み合い、変動します。その時々により、金利に影響する要因にも強弱があります。
ここ数年、影響が強い理由が「海外の金利が上がると国内金利も上がる」ということです。ですから、現在の金利を考える際には、海外の金利動向を把握しておくことが大切です。
外務省の2024年「主要経済指標」によると、世界の主要国における金利の値動きは以下のようになっています。
[出典:外務省 2024年「主要経済指標」]
各国で金利に違いはあっても、値動きはおおむね似通っており、特に2020年頃を境にコロナ禍以降の物価の急上昇も影響して、金利も上昇基調になっていることがわかります。
特に今年2025年は、米国でトランプ大統領が再任されます。
地政学リスク(≒地域的・政治的な理由などで物価や特定の価格が変動するリスク)が今まで以上に高まることが予想されます。
ぜひ、このような世界的な状況も踏まえ、金利の値動きについても把握しておきましょう。
3. 金利は今後どのように変化していくか
先ほどの国内金利の推移、海外金利の推移のグラフを見ただけで多くの方が感じられるでしょうが、金利は今後、上昇していく可能性が高いと思います。
この思惑は国としても同様のようで、内閣府の令和6年「中長期の経済財政に関する試算」によると、国の見通しは以下の通りです。
[出典:内閣府 令和6年「中長期の経済財政に関する試算」]
実際にどこまで上がるかは不明ですが、国としても金利は上がる前提で考えている様子と見られます。
それを裏付けるかのように、金利に大きな影響を及ぼす日銀が2024年7月、政策金利の利上げを発表しました。
これは変動金利に影響を及ぼす短期金利の利上げです。今のところ大きな変化は起きていませんが、そう遠くないうちに固定金利と同じく、変動金利も上がってくる可能性が高いと思われます。
いずれにしても種類を問わず、今後「金利は上がってくる可能性が高い」と考えておくのが自然です。
4. 賃貸経営に与える影響は?
金利が上がるということは、賃貸経営を始める際に必要なお金を準備するコストが上がることを意味します。
ただ、実際のところ、金利が上がるということはそれだけに留まらず、実は建築コストの上昇も招いてしまうことにもなります
(金利上昇→早急な購買意欲の上昇→物価上昇・建築費上昇)。建物物価調査会の2024年「建築費指数」によると、昨今の建築費は以下のように推移しています。
[出典:建物物価調査会 2024年「建築費指数」]
この通り、長年低調だったものの、金利の上昇と時期を合わせるように2020年頃から加速的に上がっているのが見て取れると思います。
もっとも、この建築費上昇は金利だけが原因ではありません。当時は新型コロナウィルスが猛威を振るい、またロシアとウクライナの戦争が始まった時期でもあります。これらによって建築資材の輸出入が大幅に制限されたことなども大きな一因となっています。
金利と同じく、実際にどこまで上がるかは未知数ですが、今後は当面、上昇する可能性が高く、そうなれば金利と合わせて二重のコストアップとなるわけです。
もっとも金利上昇はマイナス影響だけではありません。賃貸経営においては「家賃」が大きなポイントの一つですが、全国宅地建物取引業協会連合会の2024年「不動産市場動向データ集」によると金利変動の影響もあり、昨今の家賃は以下のように推移しています。
[出典:全国宅地建物取引業協会連合会 2024年「不動産市場動向データ集」]
本当に金利はさまざまな価格に影響があります。そして「金利が上昇すると株価が下がる(金利上昇→さまざまなコストが上昇→企業の業績低迷→株価下落)」という理屈もあるのが経済のメカニズムです。
しかし上記の通り不動産なら、金利が上がれば家賃も物件価格も上がる傾向にあります。つまり老後対策として何かを検討中なら、少なくとも今は株式投資より不動産投資(賃貸経営)のほうが合理的との見方もあります。
5. 賃貸経営を検討中なら考えるべきこと
ここまでお伝えした通り、現在は金利が上昇局面です。
その結果、賃貸経営を始める際に必要なお金を調達するコストが上昇局面であり、同時に建築コストも上昇局面になっています。
つまり今は、「賃貸経営を始めるのが遅くなるほど経営環境は厳しくなる」という局面です。
総じて、すでに賃貸経営を具体的に検討中の方が考えるべきことは、遅くなるほど経営環境が厳しくなる局面ですから、タイミングを見計らう状況ではないということです。
やるなら早く始めた方が良い局面といえます。やるにしても、やらないにしても、検討だけは早く始めたほうがよいでしょう。
この事情は、すでに経営中の土地オーナーや賃貸オーナーも同じです。既存物件のリフォームや建て替えを考えている、そろそろもう一棟増やそうか検討中...なら、決断が遅くなるほど状況が厳しくなる局面といえます。いずれは...と考えているなら、早めの決断がおすすめです。
賃貸経営は大金が動きますから、そんなに即決できなくても無理はありません。焦りは禁物というのも確かです。
しかし今は、決断が遅くなるほど状況が厳しくなる局面なのも確かといえます。頼れる不動産業者などにも相談しながら、少しでも決断を急ぐよう心がけましょう。
6. まとめ
少し前まで金利は超低利が当然でしたが、すでに現在は上昇局面に入っています。
その結果、賃貸経営に必要なアパートローンの金利や建築費も上昇局面となりました。
しかし金利の上昇局面では家賃も上昇傾向にあるうえ、逆に株式などは下落傾向となります。少なくとも、老後対策として賃貸経営を始めるのは合理的な判断です。
まずは早めに関係するセミナーに参加したり、あるいは大手の不動産業者に相談したりして、賃貸経営を始める意識を高めていきましょう。
■監修者プロフィール
株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘
マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)/JーFLEC認定アドバイザー(金融経済教育推進機構)
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