アパートの空室対策は何ができる?タイミング別に実施できることまとめ
公開日: 2024.02.29
最終更新日: 2024.03.12
アパート経営で空室が発生すると、その部屋の家賃収入が得られなくなるため、収益に大きな影響を与えます。
しかし、どんな良い物件・場所でも人の入れ替わりは発生するため、常に満室状態を維持するのは困難です。
そのため、空室リスクへの備えとして、空室発生時と入居後それぞれのタイミングで対策を講じることが重要といえます。
空室発生時の対策では、入居者募集を積極的に行い空室期間を短縮すること、入居後対策では、入居者満足度を高めることで退去を防ぎ、長期入居を促進することなどが考えられます。
そこで本記事では、賃貸アパートの空室対策の具体的な方法をタイミング別に解説します。
目次
1.アパートを建てる前にできる空室対策の例
空室対策は立地条件や競合物件の数などによって、適切な方法が異なります。
以下に空室対策のポイントを3つ紹介します。
1-1.建築予定エリアの調査
建築予定エリアの調査をすることで、どのような人が賃貸物件を探しているのかを明らかにできます。
調査結果は部屋の広さや物件の強みを決める判断材料になるほか、需要のあるアパートの形態を考えるうえで必要不可欠な情報です。
一般的な調査の例として、エリアの賃料相場、住んでいる世帯数、街の人口構成などがあげられます。
また、競合になりえる物件がどのくらいあるか調査し、賃貸市場における需要と供給のバランスを確認することも大切です。
もし建築予定の物件の需要が高かったとしても、類似物件が多く供給が過剰なエリアでは入居者の獲得が容易ではありません。
一方で競合になる物件が少ないエリアでも、賃貸需要そのものが低い場合は入居者が集まりにくくなります。
1-2.競合物件の調査
競合物件の調査では、周辺エリアに建っているアパートの情報収集をしましょう。
建築予定の物件に近いタイプがどのくらいあるかを調べれば、ほかの物件との差別化をするヒントになります。
競合物件がある地域でも、近隣の物件にない強みを作り出せれば、入居者に注目される可能性も高まるでしょう。
競合となる物件情報の調査はアパート経営を始めた後でも実施できるので、入居者が思うように集まらないとき、改善策を考えるために実施することをおすすめします。
差別化の方法としては、たとえば内装や外装のデザインを刷新する、最新の設備を導入する、入居者サービスを充実させるなどがあげられます。
そのほか、良いアイデアや工夫できる点がないか、賃貸管理会社や建築会社へ相談してみるのもおすすめです。
1-3.ターゲットの選定
アパートを建てる前に、どんな人に入居してもらいたいかターゲットを明確にし、建てるアパートの特徴決めや戦略に反映させることが重要です。
ターゲットから逆算した部屋づくりや宣伝ができれば、より効率的に経営が進められるでしょう。
また、ターゲットは具体的に決めたほうが、戦略が立てやすいといえます。
たとえば若い単身者をターゲットにする場合、ワンルームなどコンパクトな間取りで、インターネット無料設備がある物件が良いでしょう。
一方、ファミリー層をターゲットにする場合、2LDK以上の広めの間取りで、生活音が響きにくい遮音性能が高く、駐車場併設、子育て支援施設からの距離が近い物件が好まれる傾向があります。
エリアや競合物件の調査結果をもとにして選定できるとより効果的なので、事前に入念な調査をすることが重要です。
2.アパート経営を始めた後にできる空室対策
ここまでアパートを建てる前にできる空室対策をご紹介しました。
空室対策はアパート建築を始める前に検討できるのがベストですが、経営を始めた後でも実施できる対策はあります。
アパート経営を成功に導くためにも、できる対策がないか考えてみましょう。
2-1.住宅設備の追加
住宅設備の追加は、より住みやすい家を目指して入居者の満足度向上を図るための有効な施策になります。
ほかの物件との違いをアピールしやすい空室対策といえるでしょう。
たとえば、以下のような対策があります。
・IoT対応の設備や省エネ設備など最新の設備を導入する。
・収納スペースを充実させる。
・キッチンを使いやすい設備にする。
・トイレのウォシュレット設置など水回りを充実させる。
・宅配ボックスを設置する。
・無料インターネット設備を設置する。
・エアコンや家具付きの部屋にする。
・バスルームをユニットバスからシステムバスへ変える。
・浴室乾燥機を設置する。
特に人気の高い設備、利用者にとってメリットの大きいサービスを取り入れることがおすすめです。
また、オートロックやディンプルキー、防犯カメラ、火災報知器を設置するなど、セキュリティ面を強化することも満足度向上につながります。
設備の種類によっては多額の初期費用がかかるデメリットがあるため、最近のトレンドや新築アパートに備わっている設備などを把握して、不足しているものは何か物件の状況と照らし合わせ、十分に検討したうえで判断することが大切です。
2-2.デジタルマーケティングの強化
WebサイトやSNS上の情報を充実させて、ターゲットの関心を集める方法も有効な対策になります。
物件を内見する時間がない人向けに、動画を作成するのも集客において効果的です。
現地を案内しなくても物件の確認ができるようになるため、より多くの人に物件を知ってもらえるチャンスとなるでしょう。
また、オンラインでの賃貸借契約も可能にすれば、契約手続きの手間がかからず、さらに契約の可能性が広がることが期待されます。
なお、デジタルコンテンツの強化は賃貸オーナーが自分で投稿や更新をするほか、賃貸管理会社に広告の掲載などを依頼するケースもあります。
2-3.共用部分の整備・清掃
ほとんどの人が利用する共用部分を整備し、物件の第一印象を変える方法です。
修繕やメンテナンスを適切に行い、管理が行き届いている状態であれば、入居希望者の安心感や信頼性の獲得につながります。
建物の外観やエントランス、通路などの共用部分は、内見時にも見られる可能性があるので、清潔感のある状態に保っておけば新しく入居者を受け入れる面でも重要です。
モデルルームや室内だけでなく、建物全体を魅力的な状態に保つことを意識しましょう。
また、24時間コールセンターや何かあった際の速やかなサポートなど、管理サービスが充実していることも、入居者満足度向上を図るうえで重視されるポイントです。
2-4.入居者アンケートの実施
入居している(していた)人の声を集めて経営の改善に活用する方法です。
実際にアパートに住み生活していた人ならではの意見を知ることができます。
入居者のニーズや要望を把握して不満を解決できれば、より長期的に住んでもらえるでしょう。
また、入居者のほか、退去者に絞ってアンケートを実施するのも効果的です。
退去時の理由を把握できれば同じような理由で退去を考える人への対策がわかり、新たな空室対策が思い浮かぶ可能性が高まるためです。
3.慎重に実施したほうが良いアパートの空室対策
アパートの空室対策の中には、慎重に実施すべき対策も存在します。
以下に紹介する注意点を踏まえて判断するようにしましょう。
3-1.賃料や手数料の見直し
いくつかある空室対策のうち、シンプルに効果が出やすい方法のひとつです。
住まいを探している人にとって、賃料や手数料を判断材料にしている人が多いため、とにかく早く入居者を集めたい場合には有効な対策になります。
しかし、アパート経営やマンション経営において、賃料や手数料の減額は収益悪化の原因になりやすいため、慎重に行わなければなりません。
仮に賃料を値下げして入居者が集まったとしても、一度家賃設定を下げてしまうと簡単には元に戻せないので、物件の利回りや利益率を改善するのは難しくなります。
そのため、周辺の競合物件の家賃調査や収益シミュレーションを行うなど、安易には考えず十分な検討をしたうえで判断することをおすすめします。
また、賃料は毎月の収入にかかわるため、敷金や礼金、更新料の見直しを先に検討しても良いでしょう。
入居から一定期間、家賃を無料にする「フリーレント」も有効な対策になります。
さまざまな対策をチェックして比較検討したうえで、空室率の低下、入居率の向上を図るようにしてください。
3-2.部屋や設備のリフォーム・リノベーション
部屋や設備のリフォーム・リノベーションは、アパートやマンションの築年数が一定以上経過したときに検討されることが多い手法です。
部屋や設備を刷新すれば、物件の魅力が高まり、すでに入居している人の満足度向上につながるほか、これから入居を考えている人へのアピールにもなります。
ただし、実施に必要な工事費用を回収できない可能性があるため、しっかりと予算を確保したうえで慎重に検討しなければなりません。
リフォームやリノベーションの目的は入居者を増やし、安定した賃料を得ることなので、工事によって高い費用対効果が得られるかどうか、コスト負担に見合った成果が現れるかどうかの見極めを重視すべきです。
なお、リフォームやリノベーションの種類としては、機能性やデザイン性の高い設備の導入、セキュリティ対策として有効な設備の導入、和室を現代的な洋室に変更するなどがおすすめです。
迷ったときは建築会社へ相談して、リノベーション事例を紹介してもらうと良いでしょう。
もちろん、外壁塗装などの修繕工事、定期的なメンテナンスや、10~15年程度のスパンで行われる大規模修繕を行うことも重要です。
3-3.入居条件の緩和
入居条件の緩和は、入居できる人を増やす空室対策です。
より多くの人をターゲットとし、今まで募集できなかった人を受け入れることで、入居の可能性を向上させます。
たとえばペット可物件にする、外国籍の人の入居を許可するなどの対策が考えられます。
しかし、すでに賃貸住宅に入居している人から良い反応が得られるとは限らず、入居条件の緩和が不評になれば、解約や退去者が続出してしまうリスクもあるので注意しましょう。
また、募集条件を広げれば入居率は増加するかもしれませんが、さまざまなタイプの人が入居するので、今までの物件では起きなかった家賃滞納などの問題や、入居者同士のトラブルが発生するリスクも考えられます。
4.アパートの空室対策は土地活用のプロに相談を
アパート経営や不動産投資において適切な空室対策を講じることは、不動産オーナーにとって重要なポイントといえます。
空室を完全に予防することはできないので、満室状態が長く続いているときでも、空室が発生した場合のことを常にシミュレーションしておきましょう。
しかし、オーナー様自身ですべての対策を考え実施するのは困難です。
そのため、不動産管理会社、建築会社など複数の専門家へ相談し、過去の経験やノウハウから的確な空室対策を求めることが大切です。
もし相談先に悩んだときは、全国規模で賃貸経営を行っており、空室改善などのノウハウがしっかりしていて実績のある会社へ問い合わせてみることをおすすめします。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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