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土地活用でホテル経営を選ぶメリットと具体的なステップ

公開日: 2024.08.30

最終更新日: 2024.08.30

土地活用の選択肢として、ホテル経営が注目を集めています。安定した収益が期待できる宿泊事業は、土地所有者にとって魅力的な選択肢です。しかし、ホテル経営にはさまざまな課題や検討事項が存在するので、経営を始める前に押さえておきたい点がいくつかあります。

 

この記事ではホテルの事業モデル、建設できるホテルの種類、適した立地条件、そして事業展開の際の注意点まで、幅広く情報をまとめました。土地活用を検討している人はぜひ参考にしてください。

目次

1. ホテルの事業モデル

1-1.事業用定期借地方式

1-2.サブリース方式

1-3.フランチャイズ方式

1-4.直営方式

 

2. ホテルの種類と向いている場所

2-1.ビジネスホテル

2-2.リゾートホテル

2-3.カプセルホテル

3. 土地活用でホテル建設を検討する際の注意点

3-1.土地活用のなかでもコストが高くなりやすい

3-2.場所によっては競合が多い

4.ホテル建設と運営の具体的なステップ

Step1.土地活用の相談

Step2.土地診断と需要の調査

Step3.提案されたプランを比較検討

Step4.契約する会社の決定

Step5.経営計画の立案

Step6.建築計画の作成

Step7.工事の実施と検査

Step8.営業開始

5.土地活用としてのホテル経営の可能性

 

1.ホテルの事業モデル

ホテル事業は、土地活用の魅力的な選択肢の一つです。ホテル経営にはさまざまな経営方式があり、オーナーの希望や立地条件に応じて適切な方法を選ぶことができます。ここでは、ホテルの事業モデルについて詳しく見ていきましょう。

1-1.事業用定期借地方式

事業用定期借地方式は、土地所有者にとって安定した収入を得られる魅力的な選択肢です。

この方式では、ホテル事業者に土地を貸し出し、定期的な借地料を受け取ります。
建物の建設や日々のホテル運営は全て事業者が担当するため、土地所有者は運営ノウハウや初期投資の心配もありません。
そのため、安心して土地活用ができます。

 

立地条件が良ければ、高額な賃料も期待できます。
また、契約期間が長期的であることが多く、安定した収入が長く続く可能性があるでしょう。

1-2.サブリース方式

サブリース方式は、土地所有者が建物を建設し、それをサブリース会社に一括借上げしてもらう事業モデルです。
サブリース会社がホテル運営を行い、土地所有者には固定賃料が支払われます。

 

この方式のメリットは、安定した収入が得られることです。
稼働率や売上に関わらず、一定の賃料が保証されるため、土地所有者にとって安心感があります。

また、ホテル経営のノウハウがなくても参入できる点も魅力です。

初期投資は必要ですが、長期的な視点で見れば収益性の高い土地活用方法となる可能性があります。

 

1-3.フランチャイズ方式

フランチャイズ方式は、土地所有者がホテルチェーンのブランドを借り、その経営ノウハウを活用してホテルを運営する事業モデルです。
土地所有者は建物を所有し、直接ホテル事業を展開しますが、大手チェーンのサポートを受けられます。

 

この方式のメリットは、確立されたブランド力と運営ノウハウを活用できることです。
集客や宿泊客の確保が比較的容易になり、安定した収益が期待できます。

また、チェーンのマーケティング戦略やコンセプトを利用できるため、独自のホテル開発よりもリスクを抑えられます。
ただし、ロイヤリティの支払いが必要なため、収益性の検討は重要です。

1-4.直営方式

直営方式は、土地所有者が自ら建物を建設し、ホテルの運営も全て自身で行う事業モデルです。
この方式では、土地活用から宿泊事業の展開まで、全てのプロセスを土地所有者が主体となって進めます。

 

このモデルの最大のメリットは、高い収益性の可能性です。
中間業者を介さないため、売上の全てが直接オーナーの収入となります。
また、ホテルのコンセプトや運営方針を自由に決定できるため、独自の魅力あるホテル作りが可能です。

 

さらに、マーケットの変化や宿泊ニーズに柔軟に対応できる点も大きな利点です。
ただし、初期投資が高額になる可能性や、ホテル経営のノウハウが必要となるため、リスクも他の方式に比べて高くなります
長期的な視点での検討が大切です。

2.ホテルの種類と向いている場所

土地活用でホテル事業を展開する際、立地条件や周辺環境に合わせて適切なホテルタイプを選択することが重要です。
各タイプには特徴があり、ターゲットとなる宿泊客も異なります。

ここでは、主なホテルの種類とそれぞれに適した立地条件について紹介します。

2-1.ビジネスホテル

ビジネスホテルは、出張者や近年増加しているインバウンド観光客向けの宿泊施設です。
旅館業法では、一般的に土地の大きさは最低60坪以上が条件とされています。
また、1室あたりの広さは9㎡以上かつ客室数は10室以上が最低基準と定められていることも覚えておきましょう。

 

客室数が少なるほど運営コストを抑えられる一方、利用客数の上限も低下して収益性が低下してします。
理想の客室数は、立地や対象の客層、運営コスト、競合状況、市場の需要によって変化するので、事前にしっかりと計画を立案する必要があるでしょう。

 

例えば、30室以上、理想的には100室程度が望ましい環境の場合、延床面積はフロントやロビー、廊下を含めて100~300坪程度必要です。
重要なのは容積率で、例えば60坪の土地に300坪の建物を建てるには、容積率500%以上のエリアが必要です。

 

敷地面積が小さくても、高い容積率が確保できる立地であれば、ホテル事業を展開できます。
駅や空港に近い場所、大通り沿いなどの利便性の高い立地が理想的といえるでしょう

2-2.リゾートホテル

リゾートホテルは、観光客向けの宿泊施設で、豊かな自然環境や有名観光地の近くに位置することが多いです。
土地の大きさは、明確な規定はありませんが、一般的に広大な敷地が必要とされます。これは、リゾート施設や屋外アクティビティのスペースを確保するためです。

 

1室あたりの部屋の広さは、ビジネスホテルと同様に最低9㎡以上が必要です。
ただし、リゾートホテルでは快適性を重視するため、通常はこれより広い客室を提供します。なお、客室数に明確な規定はありません。

 

リゾートホテルでは、レストランやスパなどの付帯施設も考慮する必要があります。
旅館業法の基準を満たしつつ、魅力的なリゾート体験を提供できる施設設計が求められます。

2-3.カプセルホテル

カプセルホテルは、旅館業法で簡易宿所営業として規定されています。
客室の延床面積は33㎡以上が必要で、10人未満の場合は3.3×人数以上が求められます。
2段ベッドを使用する際は、上下段の間隔を1m以上確保しなくてはなりません。採光は、窓などの開口部が床面積の8分の1以上(理想は5分の1以上)必要です。

 

1カプセルは通常1.25㎡程度で、全体で50100カプセルが一般的です。
土地の大きさに明確な規定はなく、多くはビル内に設置されます。適切な換気、照明、防湿、排水設備も必須です。

ターミナル駅近くや繁華街での展開が人気で、近年はサウナやアメニティの充実による差別化が進んでいます。
効率的な空間利用と低価格が特徴的な宿泊施設といえます。

 

3.土地活用でホテル建設を検討する際の注意点


土地活用でホテル建設を検討する際には、さまざまな要素を慎重に吟味する必要があります。
立地条件や法規制、初期投資と運営コストなど、多角的な視点を持たなくてはなりません。

ここでは、ホテル事業を成功させるために土地所有者が押さえておくべき重要な注意点について解説します。

3-1.土地活用のなかでもコストが高くなりやすい

ホテル建設は、土地活用のなかでもコストが高くなりやすい選択肢の一つです。
形態によって異なりますが、一般的に初期投資が大きくなります。競合との差別化を図るため、設備投資も欠かせません。

 

また、集客に直結するため、客室や共用設備の極端なコストカットは避けるべきです。
質を落とせば、宿泊客の満足度低下や評判の悪化につながる可能性があります。

 

自ら経営する場合、建設費に加えて維持管理費も考慮が必要です。特に人件費は大きな負担となります。
フロント、清掃、メンテナンスなど、さまざまな業務にスタッフが必要となるためです。

これらの高コスト構造を踏まえ、長期的な収益性と資金計画を慎重に検討することが重要です。

3-2.場所によっては競合が多い

ホテル市場は、特にインバウンド需要の影響で競争が激化しています。
観光庁の調査によると、2024年の外国人延べ宿泊者数は1,298万人に達し、前年比72%増加しました。
この需要増加を受け、都市圏や観光地ではホテル建設が急速に進んでいます。

 

しかし、需要の伸びに伴い競合も増加しているため、市場分析が非常に重要です。
さらに、独自の設備やサービスを提供することで差別化を図ることが成功の鍵となります。

 

例えば、地域の特色を活かしたテーマ性のある内装や、最新技術を活用したサービス、ユニークなアメニティの提供などが考えられます。
また、特定のターゲット層に特化したサービス展開も効果的です。

競争が激しい市場であるからこそ、綿密な戦略立案と独自性の創出が不可欠です。
常に市場動向を注視し、柔軟に対応する姿勢が求められます。

 

【出典】「宿泊旅行統計調査 (20243月・第2次速報、20244月・第1次速報)」(観光庁)

4.ホテル建設と運営の具体的なステップ


事業用定期借地以外の事業モデルの場合、土地を活用して
ホテル建設と安定的な運営するには、綿密な計画と段階的な実施が必要です。
安心して事業を進められるよう、具体的なステップを解説します。

Step1.土地活用の相談

ホテル建設を検討する最初のステップとして、専門家への相談が重要です。
不動産会社、建設会社、フランチャイズ運営会社などに連絡を取り、土地活用の可能性を探ります。

 

相談の際は、所有地の広さ、予算、土地活用の目的を明確に伝えます。これにより、専門家から具体的なアドバイスや提案を得ることが可能です。
この過程を通じて、ホテル事業の具体的なイメージが形成されていきます。

Step2.土地診断と需要の調査

この段階では、所有地の実測調査を行い、ホテル建設の可能性を評価します。土地の面積、形状、地盤状態を確認し、建築規制(用途地域、建ぺい率、容積率など)との適合性の検証が必要です。

 

同時に、市場調査も実施します。周辺地域の宿泊需要、競合ホテルの状況、稼働率、料金設定などを分析し、自身のホテルの潜在的な需要と位置づけを把握します。
これらの調査結果を総合的に評価することで、ホテル事業の実現可能性と成功の見込みを判断できるでしょう。

Step3.提案されたプランを比較検討

複数の会社から提案されたプランを比較検討します。
この段階では、建設コスト、予想収益、運営方式、設備の内容などを詳細に比較します。また、各プランの強みや弱み、リスクを慎重に評価することが重要です。

 

また、長期的な視点で、市場動向や将来の需要予測も考慮しましょう。
必要に応じて、金融機関や不動産の専門家にも相談し、客観的な意見を求めることをおすすめします。最終的に、自身の目的や予算に最も合致したプランを選択します。

Step4.契約する会社の決定

プラン検討後、契約する会社を決定します。
この際、会社の実績や信頼性、財務状況なども重要な判断基準です。
契約内容を細部まで確認し、不明点があれば質問や交渉を行います。特に、責任の所在や保証内容、追加コストの可能性などについて明確にしておくことが大切です。

 

また、長期的なパートナーシップを築くことになるため、コミュニケーションの取りやすさや企業文化の親和性なども考慮に入れましょう。
必要に応じて、弁護士などの専門家に契約内容のチェックを依頼することも検討してください。

Step5.経営計画の立案

この計画には、ターゲット顧客の設定、マーケティング戦略、価格設定、運営体制、収支予測などが含まれます。
競合分析や市場トレンドを踏まえ、差別化戦略を明確にすることが重要です。

 

また、季節変動や経済変動に対する対策も考慮しましょう。資金計画では、初期投資だけでなく、運転資金や予備費も含めた長期的な視点が必要です。

Step6.建築計画の作成

建築計画では、ホテルの規模や客室数、設備内容、デザインコンセプトなどを具体化します。
この段階で、建築家や設計事務所と緊密に連携し、法規制や安全基準を遵守しつつ、魅力的な施設を計画します。
環境への配慮や省エネ設計など、持続可能性も考慮に入れましょう。

 

また、将来の拡張や改装の可能性も視野に入れた柔軟な設計が望ましいです。建築費用の精緻な見積もりも行い、予算内に収まるよう調整します。
必要に応じて、内装デザイナーやランドスケープデザイナーとも協力し、総合的な魅力を高めることを検討してください。

Step7.工事の実施と検査

建築計画に基づき、実際の工事を開始します。工期や予算の管理、品質の確保が重要です。定期的に現場視察を行い、進捗状況を確認しましょう。予期せぬ問題が発生した場合は、迅速に対応することが必要です。

 

工事完了後は、建築基準法に基づく検査や消防法による防火設備の検査など、各種法定検査を受けます。これらの検査に合格することで、正式に建物の使用が認められます。また、設備の動作確認や試運転も忘れずに行いましょう。

 

Step8.営業開始

いよいよホテルの営業を開始します。
直営方式の場合は、開業前の準備が特に重要です。

まず、全ての設備・備品の最終点検を徹底的に行います。客室、共用スペース、バックヤードなど、細部にわたるチェックが必要です。

 

同時に、スタッフの研修も実施します。接客マナーやサービス品質の統一、緊急時の対応など、幅広いトピックをカバーする研修プログラムを用意しましょう。特に、ホテルのコンセプトや方針を全スタッフが深く理解し、一貫したサービスを提供できるよう指導することが大切です。

 

開業直後は運営状況を注意深く観察し、必要に応じて迅速な改善を行います。
顧客からのフィードバックを積極的に収集し、サービス向上に活かすことも重要です。

5.土地活用としてのホテル経営の可能性


土地活用としてのホテル経営は、安定した収益が期待できる魅力的な選択肢です。
インバウンド需要の回復や国内旅行の活性化により、宿泊施設への需要は今後も続くと予想されます。

 

しかし、成功には綿密な計画と慎重な実行が不可欠です。
立地条件、市場分析、差別化戦略、資金計画など、多角的な検討が必要となります。
また、運営方式の選択や法規制の遵守など、考慮すべき点は多岐にわたります。

 

専門家のアドバイスを積極的に取り入れ、段階的にプロジェクトを進めることが重要です。
長期的な視点を持ち、変化する市場ニーズに柔軟に対応できる体制を整えることで、持続可能な事業として成功を収めることができるでしょう。

■監修者プロフィール

有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者