賃貸管理費用の相場は?含まれる業務や管理会社選びのポイント
公開日: 2025.10.09
最終更新日: 2025.10.09
「賃貸管理にかかる費用をできるだけ抑えたい」そのように考える人もいるかもしれません。確かに、オーナーが自分で管理すれば、管理会社に支払う手数料はかかりません。しかし、入居者対応や建物のメンテナンス、家賃滞納への対応など、かかる手間が多く、自主管理の難易度が高いのも事実です。
とはいえ、管理会社に委託するにも「どのくらいの費用が適正なの?」「安いだけで選んでしまって大丈夫?」といった疑問があるかと思います。
この記事では、賃貸管理の費用相場や、その費用に含まれる業務内容、見落としがちな追加費用について、わかりやすく解説します。
1. 賃貸管理の方法
賃貸物件の管理方法は不動産オーナー自身が管理する方法と、管理業務全般を不動産管理会社に依頼する方法があります。さらに不動産会社へ賃貸管理を委託する場合は、「管理委託」と「サブリース」という2つの形式があります。
はじめに、自主管理と管理委託それぞれのメリット・デメリットと、管理委託とサブリースの違いについて解説します。
1-1. 自主管理
自主管理とは、アパートやマンションなどの物件管理に関する全ての業務をオーナーが自ら行うことをいいます。
不動産管理会社などへ依頼する際にかかる費用が不要になり、支出を極力抑えられるのがメリットです。
しかし管理業務を全て自分で行うため、トラブルやクレームが発生した時は時間と労力をかけて自分で対応しなければなりません。
家賃の滞納があれば、入居者に対して家賃の催促をするなどの業務が発生します。また入居者の退去後には、原状回復工事をする必要があり、クリーニングや工事の発注をする手間もかかります。
基本的に管理戸数が多ければ多いほど、賃貸管理は煩雑になるでしょう。
特にアパート経営などを副業として行っており本業が忙しい方や、不動産の知識が十分でない人にとっては、トラブル対応が煩雑で精神的なストレスとなる場合もあります。
1-2. 管理委託
管理委託とは、アパートやマンションの管理業務の全部もしくは一部を、不動産管理会社へ委託することをいいます。
入居者の募集活動や契約業務、集金の確認、先述したトラブル・クレームの対応、定期清掃や室内設備のメンテナンスなどを不動産管理会社が代行するのが一般的です。
例えばエアコンが故障した場合は、不動産管理会社が修理費の見積もりや工事の発注までを代行してくれます。
ただし賃貸管理のプランによっては、対象外の業務もあります。もし管理委託を検討するなら、どこまでがサービスに含まれるのか確認するようにしましょう。
1-3. サブリース
サブリースとは、不動産会社がオーナーから賃貸物件を一括で借り上げ、入居者に又貸し(転貸)する仕組みです。
オーナーは不動産会社に物件管理を一任できるうえ、入居状況にかかわらず、あらかじめ定めた賃料を毎月受け取ることができます。
このため、空室が発生しても賃料収入が途切れることはなく、安定した収益が得られる点が大きな魅力です。
また、入居者からのクレームや修繕の手配といった実務的な対応も原則としてサブリース会社が貸主として担うため、オーナーは賃貸経営に伴う煩雑な業務や精神的負担から解放されます。
特に、本業が多忙な人や遠方に物件を所有しているオーナーにとっては、サブリースは有効な選択肢といえるでしょう。
ただし、契約期間中の賃料の見直しや中途解約の条件などによっては、思わぬリスクが生じる可能性もあります。
そのため、契約書の内容は十分に確認しましょう。
【管理委託とサブリースと自主管理の違い】
|
管理委託 |
サブリース |
自主管理 |
契約形態 |
オーナーは管理会社に管理業務の全部または一部を委託し、その対価として管理手数料を支払う契約 |
管理会社がオーナーから物件全体を一括で借り上げ、管理会社自身が入居者に転貸(サブリース)する契約
|
オーナー自身が管理業務の全てを担うため、管理会社との契約は発生しない |
賃貸契約の相手方 |
入居者(借主) |
サブリース会社(不動産会社) |
入居者(借主) |
家賃収入の安定性 |
入居状況によって家賃収入も変動する |
家賃収入が安定しやすい |
入居状況によって家賃収入も変動する |
費用の仕組み |
一般的に家賃収入はオーナーに入金され、入金額から管理手数料が差し引かれる仕組み |
オーナーには、入居状況にかかわらず、管理会社からあらかじめ定められた固定の家賃(サブリース賃料)が支払われる |
管理会社への手数料が発生せず、入居者から支払われる家賃がそのままオーナーの収入となる |
サブリースについて詳しく知りたい方はこちらの記事も確認してください。
2. 賃貸管理を委託する場合の費用について
ここから先は、管理委託を検討している方向けに、管理委託の話を深掘りしていきます。
管理手数料の仕組みや相場、管理手数料以外にかかる費用について解説しますので、ぜひ参考にして下さい。
2-1. 管理手数料の仕組み
管理手数料は定額制ではなく、「家賃収入○%」のように手数料率を定めて契約するのが一般的です。
計算のもととなる「家賃収入」には、満室時を想定した総家賃収入を基準にする場合と、実際に集金できた家賃を基準にする場合があります。
前者の場合、空室が発生して実際の家賃収入が減っても、支払う管理手数料は変わりません。契約によって手数料の計算方法や空室時の扱いが異なるため、契約前に必ず確認しましょう。
2-2. 管理手数料の相場
管理会社やサービスの範囲によって費用が変わるため、相場は一概にはいえませんが、一般的な管理会社の場合「家賃収入の5%」前後が相場といわれています。
例えば、家賃10万円の部屋が8戸のアパートであれば、家賃は「10万円×8戸=80万円」と計算し、「80万円×5%=4万円」が月額の管理手数料になります。
2-3. 管理手数料以外にかかる費用
管理手数料以外にかかる可能性がある費用は、以下のとおりです。
ただし、金額や支払い条件は不動産会社や契約の内容ごとに多少異なります。
・入居者募集活動費・広告料
・契約・更新時に不動産会社へ支払う事務手数料
・入居者が退去した後の原状回復工事費用
・設備のメンテナンスや交換費用
・定期清掃費
賃貸物件の経営を行う場合は管理手数料以外にかかる費用を把握し、支出に備えておくと安心です。
管理委託する場合は対応範囲によって、賃貸管理手数料も変動するケースが多いので、自身がどこまでサポートを必要としているのか、そのサポートを受けるためにはどの程度の管理委託料がかかるのかをしっかりと確認するようにしましょう。
3. 賃貸管理の費用に関するトラブルの事例
賃貸管理に関するトラブルを未然に防ぐためにも、トラブルになりやすいポイントを事前に把握しておきましょう。
ここでは、2つの事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
3-1. 管理手数料とは別の追加費用が多発したケース
管理手数料の安さに魅力を感じて管理会社と契約したのに、管理委託契約に含まれない業務が多く、結局想定よりも高くなってしまって後悔したケースです。
一部の管理会社では、基本的な管理業務以外をすべて「追加オプション」として扱い、入居者募集の広告費や契約更新の事務手数料、退去時の立ち会い費用などを別途請求するケースがあります。
その結果、「目先の安さに惹かれて契約したものの、年間を通してみるとかえって割高になってしまった」という声も少なくありません。
信頼できるパートナーを選ぶためには、契約前に管理手数料でカバーされる業務範囲をしっかりと確認し、どのような場合に追加費用が発生するのか、書面で明確にしておくことが大切です。
管理委託契約を締結する際は、管理手数料の安さだけではなく、どこまでの業務が契約に含まれるのか、また別途費用がかかる可能性のある業務について事前に確認しましょう。
3-2. 建物の修繕やメンテナンスを管理会社側に無断で行われたケース
本来、建物の修繕やメンテナンスの最終的な意思決定はオーナーが行うものです。
しかし、管理会社によっては、オーナーへの十分な説明や許可なしに工事を進め、事後的に高額な費用を請求してくる、という悪質なケースも報告されています。
特に「緊急対応」と称して、工事内容や費用の詳細な見積もりを提示せずに判断を迫るような場合は、慎重な対応が必要です。
管理会社から提案された工事が建物維持管理上必要なものなのか、を冷静に見極める視点が重要といえるでしょう。
4. 賃貸管理を任せる管理会社選びのポイント
最後に、上手な管理会社の選び方を解説します。
アパート経営において、管理会社選びは重要です。不動産経営を成功させるためにも、これから紹介する3つのポイントを参考にしてください。
4-1. 管理手数料の安さだけで選ばない
管理委託先は、管理手数料の安さ「だけ」で選ばないようにしましょう。
大切なのは、適切な費用で、手厚いサポートをしてくれるかどうかです。管理会社によって提供してもらえるサポート範囲や体制が異なるので、管理手数料の安さだけで決めてしまうと、契約に含まれない業務が多く、かえって割高になるケースも起こり得ます。
また、担当者との相性も大切にしましょう。打ち合わせの段階でレスポンスが遅いと感じたら、要注意です。コミュニケーションがスムーズにとれないと、緊急時の対応を依頼する際に苦労する可能性があるからです。
4-2. 管理業務の範囲と内容を具体的に確認する
管理手数料のパーセンテージが同じでも、契約に含まれる業務内容が全く違うケースもあります。
管理会社を選ぶ際は、どこまでの業務が管理手数料に含まれるのか、確認・比較することが重要です。
管理手数料に含まれる業務範囲が狭い管理会社は、オプション対応などが増え、結果的にトータルのコストが高くなるおそれがあります。
例えば緊急対応が業務範囲外の場合、とくに休日や夜間は高額な料金を設定していることが多く、対応のたびに費用が発生するし、結果としてトータルコストが高額になってしまうので気を付けましょう。
4-3. 入居者の募集に強い管理会社を探す
賃貸管理の依頼先を選ぶ際は、入居者の募集に強い不動産会社を選びましょう。家賃収入を最大化するためには、入居率を高くすることが大切です。
では、入居者の募集に強い不動産会社かどうかを見分けるためには、どうしたらよいのでしょうか。
Webサイトで管理戸数や入居率といった客観的な実績を確認するのはもちろんですが、複数の会社と面談し、担当者が物件のあるエリアの家賃相場や入居者ニーズをどれだけ深く理解しているかを比較検討することも重要です。
また、実際にその会社が管理している物件を訪れて、共用部分の清掃が行き届いているか、募集看板は分かりやすく設置されているかなどを自分の目で確かめるのも、信頼できる会社を見極めるための有効な手段でしょう。
5. 賃貸管理はプロに任せるのがおすすめ
不動産経営において、収益性を高めるためにも、経費は最小限に抑えることが大切です。しかし、経費削減を優先して管理手数料を節約してしまうと、クレーム対応などで思わぬ時間を取られて本業に支障が出たり、十分な集客が行えなかったりして、結果的に空室率が上がってしまう事態になりかねません。
賃貸物件の管理はプロである不動産会社に委託し、客付けやトラブル対応・家賃回収まで代行してもらいましょう。
アパート経営や賃貸運営に関する疑問・お悩みをお持ちの方は、ぜひ大東建託にご相談ください。
また賃貸経営のノウハウが詰まったカタログを無料でプレゼントしていますので、お気軽にお問い合わせください。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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