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知ろう!家族信託。備えよう!認知症。

最終更新日: 2023.02.06

公開日:2022.11.14

内閣府の平成28年と令和4年の「高齢社会白書」によると、2022年時点の65歳以上の認知症有病率は18.1%ですが、2025年には20.6%と、およそ5人に1人が認知症になるとされています。

そして、2060年の頃には34.3%とおよそ3人に1人が認知症になりかねないという予測も出ています。

もはや、誰もが認知症になってもおかしくない時代といえます。

 

なるべく認知症にならないよう健康に気を使うことは大切です。ただ、ここまで可能性が高い事を考えると、認知症になってしまったことを考え、備えておくことも大切です。

 

認知症になった場合に備えておきたいことは、「介護(身上監護)」とともに「財産管理」が重要といえます。この財産管理の方法として最近、注目を集めている手法の一つが「家族信託」です。

 

今回は、この「家族信託」についての基本をお伝えします。

1.そもそも家族信託って何?

そもそも家族信託とは、自分の財産を「信頼できる家族の誰かに託す(信託する)」ことです。財産とは現金や預金だけでなく不動産なども対象です。

 

ただし、託している段階では、まだその財産の所有権は託す当人のもので、あくまで財産を「管理や運用・処分など」をする権利を託しているにすぎません。また、託す人は、託す財産をどのように管理などをしてほしいかを決めておくこともできます。

 

家族信託の関係者を簡単に表すと、以下の通りです。

少々言葉が難しいですが・・・

 

・委託者:財産を託す人・・・例えば、認知症になりそうな本人

 

・受託者:財産を託される人(名義ごと託される)・・・例えば、本人の家族

 

・受益者:利益を受ける人(基本的には委託者、他の子供など第三者や家族複数人も可)・・・例えば、委託者=認知症になりそうな本人

 

・その他:必要に応じて監督人や代理人を置くことも可能

 

認知症の財産管理における最大のリスクは、「財産の凍結」です。

認知症になったと判断されると、たとえ家族でも銀行口座からお金を引き出したり、不動産の売却や賃貸経営などができなくなったりします。
このような事態が気になる方は、前向きに家族信託の利用を検討してみましょう。

1-1.後見制度の欠点

認知症の代表的な対策に「成年後見制度・任意後見制度」が挙げられます。

これは簡単にいえば、認知症になったら、(任意)後見人に財産管理を委ねるという制度です。
あらかじめ家族の誰かを任意後見人に定めておけば、任意後見人は引き続き銀行口座からお金を引き出せるなど、部分的に家族信託と似たような効果を得られます。

 

しかし、この後見制度の場合は、「認知症になってから」でないと効果を発揮できません

また、後見制度は「財産の保護」を優先させるため、賃貸経営などのリスクのある資産運用はできなくなります。

本人のためにならないと見なされるお金の使い方もできないため、お金の使い方に一定の制限がある点が、後見制度の一番の欠点です。

 

相続対策においては賃貸経営が有効なことが多いものの、その場合に使いにくいという点が一番の難点かもしれません。

 

なお、なんの対策も取らずに認知症になった場合は、上記の成年後見制度を使うことになります。

この場合は、後見人に弁護士などの家族以外の専門家が選ばれることが多く、またその専門家に相応の報酬も必要です。
当人や家族の意向とは違うお金の使い方になることも多いという点も、この後見制度の大きな欠点といえます。

2.家族信託の代表的なメリット・デメリット

家族信託も万能の対策ではなく、メリットもあればデメリットもあります。
このため、とにかく使えばいいというものでもありません。

事前にメリットとデメリットをしっかりと理解して、そのうえで使うかどうかを適切に判断しましょう。

2-1.家族信託の代表的なメリット


家族信託は「一種の信託契約」であり、契約を結んだ時から効力を発揮します。
つまり認知症になる前から財産を託すことができるため、実際に認知症になるまで受託者の言動を見届けることが可能です。

この点が委託者からすると、後見制度ではできない大きなメリットといえます。

 

そのうえで、他の代表的なメリットもしっかり知っておきましょう。

2-1-1.柔軟な財産管理ができる

後見制度は、文字通りの「制度」であるため、最低限の骨組みが国によって決められています。

しかし、家族信託は「契約」なので、その内容は基本的に自由に決めることが可能です。
後見制度では事実上できない・・・賃貸経営や不動産の処分なども自由に行うことができます。

 

また、後見制度を使う場合は、「家庭裁判所」が間に入ることになります。
それ自体、健全性の観点から素晴らしいことなのですが、使う消費者側から考えると敷居が高く感じられますし、相応の報告や書類の提出義務なども手間も発生します。
何より、後見制度は家庭裁判所に後見人として「選任」されて初めて効果が発揮されるので、どうしても認知症から選任されるまでの時間差が問題になりがちです。

 

実際、家族信託で必要になるのは「当事者間の契約書のみ」となります(合わせて信託用の口座や、財産に不動産がある場合は「信託登記」なども必要)。

 

契約書の作成には弁護士や司法書士などの専門家の力も必要になりますが、それでも裁判所に比べれば敷居も低く、内容も自由に決められ、しかも即効性もあるのが大きなメリットです。

2-1-2.倒産隔離機能

これは簡単にいえば、財産を託した受託者が多額の債務を負ってしまっても、託した財産は差し押さえられることはない、という機能です。

 

先ほども触れた通り、家族信託の場合、財産は契約時点では「託しただけ」で、相続が発生するまでは委託者のものという扱いになります。

 

ただし、託した財産は受益者の「信託受益権」という形に変わっていますが、受益者(≠委託者)が強制執行などを受けてしまうと差し押さえの対象になります。
家族信託は差し押さえ回避などには使えませんので、注意しましょう。

2-1-3.認知症の配偶者や障害のある子供、二次相続への対策もできる

ある意味で後見制度や遺言書などを上回る、家族信託の最大のメリットと言えるかもしれません。

 

例えば、ご自身(委託者)が認知症を気にする頃には、すでに配偶者が認知症になっていても不思議はありません。
そして認知症になれば、財産が凍結される可能性があります
そうなると、ご自身の没後に財産を残しても、遺言書(や遺産分割協議書)などによる財産移転には時間もかかるため、資金繰りに窮する可能性が生じます。


しかし、例えば、家族信託で自分の没後には受益者を変更する内容を定めたり、最初から受益者に配偶者も含めたりしておけば、少なくとも資金繰りで困る可能性はかなり低くなります。

 

なお、「相続人である子供に障害がある場合」も理屈は同じです。
子供を受益者に、信頼できる親族の誰かを受託者にしておけば、同じくお金で困る可能性は低くなります。

 

また、遺言書で定められるのは「一次相続分のみ」です。
このため、たとえば配偶者への相続は良いが、例えば、(御自身には縁が遠い)配偶者の親類には相続させたくない...などといった場合には、法定相続であれば対応できません。
しかし、家族信託なら配偶者の没後は財産を渡したい方に受益者を変更するなどで対処することが可能です(ただし、遺留分侵害額請求の対象になりうる点には注意が必要です)。

2-2.家族信託の代表的なデメリット


後見制度にも言えますが、「家族の誰も後見をやりたがらない」という可能性があります。また、子供の立場からすると、「親に言い出しにくい」ということもありがちです。

 

このようなデメリットも理解し、なるべく日頃から家族とお金のことを話し合える良好な人間関係を構築しておくことをおすすめします。

 

合わせて、他の代表的なデメリットをしっかり知っておきましょう。

2-2-1.後見制度に劣る部分もある

後見制度なら、財産管理に加えても対象です。
身上監護とは、対象者の生活や療養・介護などの法律行為をすること。簡単にいえば、何らかの契約行為も含めた生活全般のお世話をすることです。

そして、こちらは法律で定められた制度なので、法律に基づいて、本人に代わって契約行為をすることができます。

 

しかし、家族信託は財産管理のみです。基本的には家族なら代わりに手続きができるものの、後見制度(後見人)ほど十分ではありません。
このため、家族信託は場合によっては後見制度とセットで考えていくことも必要といえます。

2-2-2.税務申告の手間がかかる

家族信託を利用すると、受託者は託された財産に係る帳簿を作成し、税務申告をする必要があります。
また、その帳簿を保管することも必要です。


これらの業務については税理士に依頼することもできますが、代わりに報酬が必要になります。

2-2-3.損失の繰越などができなくなる

例えば、賃貸経営をしている場合、事業において損益通算や損失の繰越控除などをしている方も少なくありません。

しかし、家族信託で不動産を託した場合、託していない不動産との損益通算ができなくなります。


また、託した不動産が赤字になったとしても、損失の繰越控除もできなくなる点がデメリットです。

 

なお、不動産の中でも「田畑」については、そもそも信託できない扱いになっています。
大規模な事業を展開している方や、田畑を持っている方は、これらの点に注意しましょう。

3.賃貸経営における家族信託の上手な使い方

そもそも家族信託は認知症への対策であるとともに、相続対策としても使われます。

そして、相続対策においては、賃貸経営が行われることも多いのが実情です。
このため、賃貸経営における家族信託の使い方を知っておくことも大切といえます。

 

基本的には「賃貸物件(とともに管理や経営)を家族に託す」わけですが、合わせて賃貸経営における上手な家族信託の使い方についても、しっかり知っておきましょう。

3-1.賃貸経営の予行練習をさせられる


相続人が賃貸経営未経験で、相続などによってイキナリ賃貸物件を管理・経営する立場になると、困ってしまうことも少なくありません。

たとえ優秀な管理会社が付いていたとしても、その管理会社との付き合い方などに困惑することも多いです。
その頃には、先代に(委託者に)聞くこともできないので尚更といえます。

 

しかし、家族信託なら当人の意識がハッキリしているうちから財産を託すことが可能です。
これは賃貸物件を管理も含めて託すことが可能なので、生前の予行練習に繋げることができます。存命中は委託者を受益者としておけば、早期に隠居することも可能です。

3-2.共有不動産の単独管理に使える


賃貸物件が共有不動産の場合、共有者の一人が認知症などになってしまうと、契約の全部が凍結したり滞ってしまったりする恐れがあります。
共有者の全員が高齢などの場合は、特に危険です。

 

しかし、このような場合、家族信託なら自分の持ち分を他の共有者に託すことで、共有者一人で賃貸経営を続けていくことができるようになります。
この場合でも、受益者を自分にしておくことで、今までと変わらず家賃収入を得ることも可能です。

 

以上のような賃貸経営における家族信託の使い方は、お付き合いのある管理会社などに相談してみるのも手段の一つといえます。

一部の大手の賃貸管理会社では、すでに家族信託の相談を受け付けている状況です。


むしろ、家族信託の相談ができるかどうかで管理会社を選ぶのも一つの考えといえます。

最新の情報収集先になるかどうかも含めて、しっかり管理会社を選ぶよう心がけましょう。

4.まとめ

認知症になる可能性が極めて高い現代において、家族信託は有力な対策になりうる可能性があります。
特に、配偶者や子供が通常の相続が厳しかったり、相続財産に賃貸不動産を含んだりする場合は尚更です。

ただし、身上監護の不十分や賃貸経営上のリスクについては注意も必要になります。


そのあたりも含めて家族信託を考え、日頃から家族や親族と仲良くしておき、そして家族信託のことを相談できる管理会社を味方に付けておきましょう。

■執筆者プロフィール

株式会社優益FPオフィス・代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

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