アパートローンの審査基準とは?必要な書類、審査の流れと大切なポイント
公開日: 2025.08.04
最終更新日: 2025.08.26
土地活用や相続税対策としてアパート経営を検討する際、多くの方が「アパートローン」を利用します。
アパートローンとは不動産投資ローンの一つで、収益物件として事業のためにアパートやマンションなどを建築・購入するための資金を確保するために用いられます。自宅の購入を対象とする住宅ローンと違い、金融機関による融資審査では物件の収益性が重視されています。
この記事では、アパートローンの審査基準や審査の流れ、必要書類を紹介します。また審査に通りやすくなるためのポイントを詳しく解説するため、これから賃貸経営を始めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. アパートローンの主な審査基準
アパートローンの融資審査では、事業としての安定性や将来性など、さまざまな面が評価されます。
金融機関は、融資した資金が滞りなく返済されるかどうかを慎重に判断するため、主に5つの項目を重視します。
それぞれの審査基準を理解し、事前に対策を立てていきましょう。
1-1. アパートの収益性
アパートローンの審査では、物件の収益性が特に重要視される項目の一つです。
金融機関は長期間にわたり、安定した家賃収入を見込めるかどうかを慎重に評価します。
具体的には、高い家賃設定が可能で、空室リスクが低く、家賃下落が起きにくい収益性の高い物件かどうかを判断します。
このような収益性が高いと判断される物件には、以下のような特徴があります。
● 新築または築年数の浅い物件
・ 最新のニーズに合った住宅設備や美観が備わっていることが多く、入居者に選ばれやすい
● 駅などの交通機関が近く立地条件が良い
・ 通勤・通学の利便性が高く入居希望者が多く、空室リスクが低い
● 商業施設や公共施設に近く利便性が高い
・ 日常生活の利便性が高く入居者の満足度向上に寄与し、長期入居につながりやすい
● オートロックや宅配ボックスなど入居者ニーズの高い設備が充実
・ セキュリティや利便性を重視する入居者層を獲得できる
・ 周辺物件との差別化で家賃下落が起きにくい
これらの要素を満たすことで、収益性の高い物件として扱われる可能性が高まります。参考項目として抑えておきましょう。
1-2. アパートの資産価値
金融機関はアパートの資産価値を厳格に評価し、回収可能性を見極めます。
これは、もしアパートローンの返済が滞った場合、金融機関は融資したアパートを売却してローンを回収するためです。
資産価値の主な評価対象は、以下のとおりです。
● 土地の価値
● 建物の構造
● 法定耐用年数
● 築年数 など
また、中古物件の場合は上記に加え、修繕履歴などが評価対象に入ってきます。
資産価値が高く評価されれば、金融機関にとって回収リスクを抑えられるため、融資審査で有利に働くでしょう。
1-3. アパート経営の実績の有無
アパート経営の実績も重要な審査基準であり、実績の有無による評価は以下のとおりです。
|
実績がある場合 |
実績がない初心者の場合 |
評価点 |
市場変動や空室リスクへの対応経験 |
サポート実績が豊富な 建築会社や管理会社を選んでいる |
信頼性 |
高い |
建築会社や管理会社 のサポート実績次第 |
建築会社や管理会社ではアパート経営初心者のオーナーに対し、リスク管理のアドバイスや事業計画の立案、資金繰りのサポートなどを実施しています。
また、金融機関が提携している建築会社や管理会社を選ぶと、ローン審査がスムーズに進む可能性があります。
1-4. 自己資産の状況
アパートローンは事業主本人の資産状況も審査対象です。
アパート経営がうまくいかない場合、事業主の資産で回収可能かどうかを判断するためです。
主な評価対象は、預貯金や有価証券などの金融資産、他に所有している不動産、借入金の有無などがあります。
またアパートローンでは、一般的に必要資金のすべてを借り入れするフルローンが難しいため、一定額の自己資金を用意しておくことが現実的です。
1-5. 事業主の収入や勤務先など
事業主の年収や勤務先、勤続年数といった「経済状況や信用情報」も審査項目の一つです。
家賃収入から返済資金を捻出できなかった場合、事業主の収入からカバーする必要があります。
個人属性の主な評価基準は、
● 年収の安定性
● 勤務先の規模や業績
● 勤続年数
● 他の借入状況 など
が総合的に判断されます。
公務員や大企業勤務、医師、弁護士などの安定した職業は高く評価される傾向です。
住宅ローンほど個人の属性は重要視されませんが、一定の収入があると審査で有利になる可能性があります。
また、多くの金融機関では年齢制限を設けており、一定の年齢を超えると融資が困難になります。
もし高齢で申し込みする場合は、連帯保証人の設定を求められるでしょう。
法人属性の主な評価基準は、
● 財務状況
● 事業実績
● 代表者の個人保証 など
が評価対象となり、決算書や事業計画書の提出が必要です。
2. アパートローン審査に必要な書類
アパートローンの審査に申し込む際には、さまざまな書類の提出が求められます。
必要書類は金融機関ごとに異なりますが、一般的に以下の資料などが必要です。
● 事業計画書
・ アパート経営の全体像を示す最も重要な書類
・ 投資物件の概要や収支計画、事業の実現性などを詳細に記載
● 返済計画書
・ 毎月どのくらいの金額を返済していくのかシミュレーションした無理のない資金計画を示す
● 設計図面等の物件概要書
・ 物件の基本的な情報や構造、仕様を示す書類で物件の資産評価に利用
● レントロール(賃貸借条件一覧・家賃明細
・ 部屋の家賃設定、想定入居率、賃貸条件などの一覧表で収益性の算定に不可欠
● 属性にかかわる資料
・ 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)、住民票、勤務先などの個人情報書類
● 源泉徴収票や課税証明書などの収入にかかわる資料
・ 直近2~3年分の収入で個人として安定した返済能力があるか判断する資料
● 所有不動産などの所有資産にかかわる資料
・ 既存の不動産登記簿謄本や固定資産税評価証明書、預金残高証明書などの資産を証明する書類
● 印鑑登録証明書・実印
・ 申込時や契約手続き時に必要
・ 実印がない場合は契約までに準備
上記の書類提出と同時に、団体信用生命保険(団信)への加入申込書を提出するケースもあります。
3. アパートローン審査の流れと審査期間
アパートローンの審査は、申し込みから融資決定まで一定の期間を要します。
一般的な流れを理解し、計画的な手続きを把握しておきましょう。
STEP1.融資先の決定
複数の金融機関から自身の条件に適した融資先の選定が必要です。
都市銀行や地方銀行、信用金庫、ノンバンク、ネット銀行などの金融機関は、それぞれ異なる融資条件を持っているため、比較検討することが重要です。
建築会社や管理会社と提携している金融機関もあるため、不動産会社の担当者に確認すれば、条件が有利な金融機関を紹介してもらえる可能性があります。
STEP2.融資審査の申し込み
融資審査には事前審査(仮審査)と融資審査(本審査)の2段階があります。 仮審査と本審査の違いについて、以下に表でまとめました。
審査段階 |
必要書類(例) |
判明事項 |
事前審査(仮審査) |
・事業計画書 ・属性が分かる基本的な書類 |
・融資の可否 ・大まかな融資額 |
融資審査(本審査) |
・事業計画書 ・設計図面 ・売買契約書 ・収入証明 など |
・最終的な融資の決定 |
本審査では、提出書類が増え、内容についての詳細な質問が金融機関から行われます。速やかに対応して審査を円滑に進めましょう。
STEP3.担当者との面談
本審査の過程で、金融機関の融資担当者との面談が行われます。
面談では、さまざまな質疑応答が行われるため、的確な説明によって信頼性を高められるでしょう。
融資担当者はアパート経営の実現性や収益性の見込みについての説明から、事業主の事業に対する熱意や理解度を把握します。
STEP4.融資審査の開始
必要な書類提出と面談の結果により、金融機関内で本格的な審査を開始します。
書類内容と面談時の内容をもって、物件評価や収益性の分析、事業者の信用調査などが総合的に検討されるでしょう。
STEP5.融資の決定
融資審査が通過すると、金利や返済期間、担保設定などの具体的な契約内容が提示されます。
契約内容の十分な理解が必要です。契約日に向け、契約書などの必要書類へ署名と捺印を不備なく手続きが完了すると、正式な融資契約が成立します。
4. アパートローン審査に通りやすくするためのポイント
アパートローンの融資審査を成功させるためには、事前にポイントを押さえた準備が重要です。
ここでは、審査通過の可能性を高めるためのポイントを紹介します。
4-1. 金融機関の特徴とそれぞれの審査基準を調べる
金融機関によってアパートローンの審査で重視するポイントや融資基準が異なります。
複数の金融機関へ問い合わせ、それぞれの特徴や審査で求められる内容を比較してみてください。
その上で、自分の事業計画に最も合った金融機関を選びます。審査を申し込む金融機関が重視するポイントを押さえた事業計画書を作成しましょう。
4-2. しっかりとした事業計画書を提出する
事業計画書は、金融機関が融資の可否や融資額を判断するための最も重要な資料です。
実現性の高い計画書を作成できているかどうかは、審査判断に大きく影響を与えます。
事業計画書を作成する際の重要なポイントは、以下のとおりです。
● 立地に合った土地活用であるか?
・ 事業計画地の概要:土地の所在地や面積、用途地域、周辺環境などを明確にする
・ 建物の概要:構造や規模、部屋数、設備仕様などを具体的に示す
・ 物件のコンセプト:ターゲットが単身者層かファミリー層かなどを明確に示し、ニーズに合ったコンセプトを提案
・ 想定される家賃:周辺の家賃相場と比較し、現実的な家賃設定の根拠となるデータを示す
● 借入金に無理はないか?
・ 総事業費: 建築費用や諸経費、登記費用及び各種税金などの初期費用をすべて洗い出す。
・ 資金計画: 自己資金と借入金の内訳を明記する。
・ 収支計画: 家賃収入から、ローンの返済額や固定費などの経費を差し引いた年間のキャッシュフローを算出して収支シミュレーションを行う。満室のシミュレーションだけではなく、空室リスクや家賃下落リスクも考慮に入れたシミュレーションで検証しておくと信頼性が高まる。
審査に向けた事業計画書の作成は、個人で進めようとすると難しい部分も多いです。
建築会社や土地活用会社に相談しながら進めると、金融機関も納得できるしっかりとした事業計画書が完成するでしょう。
また、その他にも、自己資金を増やす、複数の銀行に相談する、既存の借り入れを見直すなどの方法も検討するとよいでしょう。
いずれにしても、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。
5. アパートローン審査を通過し、アパート経営の第一歩を踏み出そう
アパートローンの審査は物件の収益性や資産価値、事業主本人の返済能力や資産状況など多角的な面から厳しく行われます。
審査を通過するためには、金融機関ごとの特徴を理解し、実現性の高い事業計画書の作成が欠かせません。
大東建託では、賃貸事業のご提案や引き渡し後の管理はもちろんのこと、提案段階での事業計画の策定から、融資先のご紹介など、一気通貫でフォローを行っております。
アパート経営や土地活用を検討されている方はぜひご相談ください。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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