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アパート建築は木造と鉄骨造どちらを選ぶ?悩んだときの判断基準

公開日: 2023.06.12

最終更新日: 2023.12.20

アパートを建築する際、木造(W造)とするべきか、鉄骨造(S造)とするべきかで迷う方は多いのではないでしょうか。

 

コストや設計、性能面など、木造と鉄骨造にはさまざまなメリット・デメリットがあります。本記事では、木造と鉄骨造のそれぞれの特徴を比較し、生活する上で重要な間取りや調湿性、耐火性などへの影響について解説します。

 

最後まで読むことで、木造と鉄骨造の基礎知識が深まり、その違いを理解できます。相続対策や、家賃収入を得る目的などで賃貸物件の新築を検討している方は、理想とするアパート経営の実現にぜひお役立てください。

>>関連記事:「アパート経営完全ガイド|建築プラン立てから完成後の業務まで」

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1.木造アパートのメリット

 

まず主要構造体に木材を使う木造アパートのメリットを解説します。
建築コストを抑えやすいだけでなく、間取りやデザインの自由度の高さ、性能面などで利点が多くあります。

 

1-1.建築コストを抑えやすい

 

木造アパートのメリットの一つは、建築コストを抑えやすいことです。
木材は鉄骨や鋼材と比較すると材料費が安く、建築費を抑えることが可能です。

 

国土交通省が公表した建築物着工統計2022年調査によると、貸家共同住宅のうち、木造の工事費予定額は、1坪当たり約56万円、鉄骨造は約86万円でした。

 

素材の特性上、木造アパートは2階建てが一般的なため、エレベーターなど高額な設備機器が必要なく、コストも抑えやすくなります。

 

重量がある鉄骨造と比べると地盤への影響度合いが低く、地盤強化を目的とした地盤改良工事を行うコストも抑えられる可能性もあります。
出ていくお金を抑えられる分、投資費用の回収が早い点が木造の特徴です。

 

このほか、木造住宅の減価償却費の計算で基礎となる法定耐用年数は、鉄骨造と比較しておおむね短く設定されています。
短期的にみると減価償却費を多めに計上できるので、納める税金の額が低くなる効果も期待できます。

 

木造住宅と鉄骨住宅の法定耐用年数

木造住宅

22年

鉄骨住宅

厚さ4ミリ超

34年

厚さ3ミリ超4ミリ以下

27年

厚さ3ミリ以下

19年

出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表

 

1-2.建築プランの自由度が高い

 

ある程度規格が決まった材料を工場で生産する鉄骨造と比べると、木材は加工に優れた素材のため、柔軟な設計が可能です。建築プランやデザインの自由度が高いことが木造のメリットといえます。

 

家族連れや一人暮らしなど、地域の需要に応じて魅力的に感じる建築プランやデザインにすることで、入居者募集にも好影響となる可能性があります。

 

木造住宅で一般的に採用されているのは、在来工法(木造軸組工法)と呼ばれる手法です。
柱と梁などの骨組みで建物を支えるため、比較的自由な間取りにできます。リフォームしやすいのも特徴です。

 

木造では、柱や梁ではなく、壁などで建物を支えるツーバイフォー(2×4)と呼ばれる工法も知られています。

 

ツーバイフォー工法は床や壁、天井のパネルで建物を支え、大手ハウスメーカーも採用している工法です。
工期短縮が図れるほか、地震の揺れに強く、気密性が高いのがメリットですが、間取りの自由さは在来工法より劣ります。

 

1-3.調湿効果がある

 

木造アパートのメリットとして、湿度を調整できる調湿性能の良さも挙げられます。木材は空気中の水分を吸収し、湿気を減らす性質があるためです。通気性も良く、室内の空気がこもりにくいため、結露を防止し、カビの発生を減らす効果が期待できます。

 

梅雨の時期もあり、高温多湿な気候が特徴である日本の住宅で快適に暮らすには、室内の湿気をいかに減らせるかが重要です。調湿効果がある木造は日本に適した工法だといえるでしょう。

 

1-4.     音が響きにくい

 

木造アパートの材料となる木材は、鉄などの金属に比べて音が響きにくい点がメリットとなります。鉄骨造に比べると反響音が気になりません。

 

木造住宅で一般的に採用される在来工法は、気密性が低いことから鉄骨造に比べて遮音性が低いとされます。隣人の生活音が気になったり、自分の生活音で隣人に迷惑がかかったりしないか心配な方もいるかもしれませんが、壁に遮音材を入れたり、石膏ボードを重ねたりすることで強化することが可能です。

 

1-5.耐火性

 

木造住宅は、鉄骨造に比べると火が燃え広がるリスクは高くなりますが、木材は燃えてから炭化するまでの時間が長いという特徴があります。

 

木の表面は燃えるものの、中心まで燃えるのに時間がかかり、倒壊まで時間を稼げる可能性もあるのです。鉄骨造は素材自体は燃えないものの、高熱で鉄の強度を保てなくなると、変形して一気に倒壊する恐れがあります。

 

安心できる住まいにおいて、耐火性は重要な要素です。
万が一、火災が発生した際、いかに状況の悪化を避けられるかがポイントです。木造住宅の場合、火災発生時すみやかに火に気付き、避難や通報といった対応をとる時間を確保しやすいといえます。

 

2.木造アパートのデメリット


木造住宅には多くの魅力がありますが、デメリットも存在します。アパートの建材に木材を選ぶことによる注意点を確認していきます。

 

木材は天然の素材であるため鉄骨造より耐久性が劣ります。
このため固定資産税評価額が低めになり納税額が抑えられる半面、経年による劣化が早い傾向にある点がデメリットです。
時間が経つと強度が低下して劣化が進み、腐食やシロアリなどの害虫被害で修繕が必要になる場合もあります。

 

これらの問題に対処するためには、事前の防腐処理や防蟻処理、定期的なメンテナンスが不可欠です。

 

また、木造は防音性能が低いとされることがあります。生活音などの音漏れが気になる場合は壁や床、天井に遮音性の高い素材を使うなど、適切な対策が必要になります。
壁と壁の間の柱を工夫して配置することで音を伝わりにくくするなど、構造上の工夫も可能です。

 

通気性が良いという在来工法による木造住宅の特徴の半面で、エアコンが効きづらいというデメリットも指摘されます。扇風機でエアコンの冷気を循環させる工夫なども重要になるでしょう。

 

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3.鉄骨造アパートのメリット


ここでは、鉄骨造住宅のメリットについて解説します。

 

鉄骨造は、柱や梁などに木材ではなく鉄を使う工法です。鉄骨は、厚みが6ミリ以上ある重量鉄骨と、6ミリ未満の軽量鉄骨の2種類に分けられます。

 

一般的には、3階建て以上のマンションやビルに重量鉄骨が、2階建てまでのアパートや一戸建て住宅などに軽量鉄骨が使用されます。

 

軽量鉄骨造は、建築に必要な材料を事前に工場で生産するプレハブ工法が主に採用されるのが特徴です。規格が決まっているため現場でスムーズに組み立てられることから在来工法による木造住宅に比べて職人の熟練度に左右されにくく、品質が安定するメリットがあります。

 

減価償却費を計算する際の法定耐用年数が木造より長いことも、鉄骨造のメリットになることがあります。
木造の22年に対し、厚さ3ミリ以下19年と短くなりますが、厚さ3ミリ超4ミリ以下なら27年、4ミリ超なら34年です。木造より長く減価償却費を計上することで、利益を平準化しやすくなるでしょう。

 

間口を広く取れることも鉄骨造の利点です。主要構造部に木材より強度がある鉄骨を用いるため、木造住宅と比較して柱や壁の量が少なく済むからです。広めのリビングや吹き抜けなどで、空間の開放感を演出しやすくなるでしょう。

 

建物としての強度は、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)には劣りますが、木造より鉄骨造に強みがあります。

 

4.鉄骨造アパートのデメリット


次に、アパートの建材に鉄骨を選ぶデメリットを2点解説します。
入居者の快適な暮らしにもかかわりますので、ぜひ確認してください。

 

4-1.断熱性が低い

 

鉄骨造住宅は、木造住宅と比較して熱伝導率が高いため、外気の影響を受けやすく、断熱性が劣るという課題があります。夏は外の暑さが伝わりやすく、冬は外の寒さが伝わりやすいため、鉄骨造住宅では木造以上に断熱対策に気を配る必要があるのです。

 

断熱性が劣ると冷暖房費が膨らみ、電気代やガス代といったランニングコストが木造よりも増えやすくなる可能性もあります。

 

鉄骨造住宅の断熱性能を向上させるため、室内外の温度差を減らす断熱材の選定が重要です。快適な室内環境確保には、高品質の断熱材を選ぶ必要があります。

 

4-2.部屋に結露が発生しやすい


結露は、室内外の温度差が大きいときに起きやすい現象です。具体的には、温かく湿気を含む室内の空気が外気により冷えた窓ガラスなどに触れると発生します。

鉄骨は金属のため木材より熱を伝えやすいデメリットがあります。特に梅雨の時期や冬場に結露が発生しやすいので注意が必要です。

 

結露を放置すると、カビやダニが発生しやすくなります。サビによる腐食で鉄骨の劣化が進むリスクも無視できません。

 

結露対策として、防カビ壁紙の使用や換気システムの導入が有効です。防カビ壁紙は、壁にカビが発生しにくくなる特性があり、換気システムは空気を循環させることでお部屋の湿度を適切に保つことができます。

 

5.アパートの構造を木造と鉄骨造のどちらにするかで悩んだら


アパート建築を計画する際には、どんな目的でアパートを建てたいかを踏まえて複合的に建材を判断することが重要になります。

 

短期的な利回りや節税を意識するなら木造が、より長期的にアパート運営を行う場合は鉄骨造が適している可能性があるでしょう。

 

たとえば建築コストについて、木造アパートは建築費を比較的安価に抑えられます。相続発生時の建物評価額を抑えたり、初期費用を低くして短期的な利回りを高めたりしたい場合は、木造の方が適しているといえるでしょう。固定資産税も鉄骨造に比べて低めです。また、法定耐用年数が短く、年間の減価償却費を多めに計上できるため、一定期間はアパート経営の収入にかかる所得税などの税金を抑えやすいという面もあります。

 

一方、より長期間のアパート経営を想定する場合は、木造に比べて耐久性がある鉄骨造の方が、メンテナンス費用などを抑えられることから適していると考えられます。

6.木造と鉄骨造の特徴を理解して納得できるアパートプランを


アパート建築を計画する際、木造と鉄骨造の選択に悩むことがあります。重要なのは、両方の特徴を十分に理解して、建築プランや収益性などを総合的に判断して納得できる選択をすることです。

 

木造にも鉄骨造にもそれぞれの良さがあり、デメリットもあります。建材を選ぶ際には、工務店、施工会社やハウスメーカーなどと相談しながら、希望の間取りや収益性、予算を考慮して最適な選択を行うことが重要です。

 

賃貸経営の専門家は、長年のサポート経験で磨かれた土地利用の企画・提案にはじまり、建物の設計・施工、入居者募集や管理に至るまで、賃貸経営を支援できます。アパート建築を検討する際には、実績に基づく賃貸経営の知識や技術の活用をおすすめします。

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■監修者プロフィール

宅地建物取引士/FP2級
伊野 文明

宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。

【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP2級
・建築物環境衛生管理技術者