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借地での賃貸経営メリット・デメリット -よくあるトラブル事例を交えて詳しく解説-

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.12.20

公開日:2020.07.01

借地を相続したものの、賃貸経営をするには将来的なトラブルが心配だという方も少なくないようです。本記事では、借地での賃貸経営を考えている方や、すでに賃貸経営されている方に向けて、メリットやデメリット、よくあるトラブル事例を紹介します。また実際、トラブルがあったときはどう対応していけばいいのかについても解説します。

>>関連記事:「アパート経営完全ガイド|建築プラン立てから完成後の業務まで」


この記事のポイント
  • 借地での賃貸経営は土地購入費用を抑えられるという大きなメリットがあるが、将来トラブルにならないよう契約内容をしっかり理解しておく必要がある

  • 地主の承諾や借地料の受け取り拒否等、借地に関するトラブルはある程度理解しておくことが大切

  • トラブルにならないよう借地人との関係を良好に保つことが大切
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借地とは

通常、土地は所有権を持つ方が土地の上に建物を建てるなどして活用します。

賃貸経営の場合、所有権を持つ土地の上にアパートやマンションを建てて、それぞれの部屋を入居者に貸し出すことで賃料を得ます。

なお、借地も、所有権を持つ土地と同じように、アパートやマンションを建てて賃貸に出すことができます。借地契約を結んでいれば、基本的には所有権を持つ土地と同じように扱うことが可能となるのです。

ただし、所有権を持つわけではないため、借地期間を過ぎて更新しない場合には地主に土地を返還する必要がありますし、借地期間中は地代を支払う必要があります。

また、借地権も所有権と同じように第三者に売却することができますが、売却する場合には地主の承諾が必要となるなど、所有権にはない法的な制約もあります。

借地権の種類や借地期間については、以下の記事で詳しく解説しています。

>>関連記事:借地でも賃貸経営できる?賃貸経営で広がる借地の可能性と課題とは

>>関連記事:土地や建物の所有に関わる借地権とは?権利に関わるお金や認定課税

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借地のメリット・デメリット

借地に関するトラブル事例を紹介する前に、借地を用いて賃貸経営する際のメリット・デメリットを見ていきたいと思います。

借地のメリット

借地で賃貸経営するメリットとしては以下のようなものがあります。

    • 土地を購入しないため、初期費用を安く抑えられる
    • 所有権がないため、土地の固定資産税を支払う必要がない

初期費用を安く抑えられる

賃貸経営をするにあたって、借地契約を結び土地を借りる場合、土地を購入し所有権を取得する場合と比べて初期費用(イニシャルコスト)を安く抑えることができます。ただし、毎月地代を支払う必要があるため、ランニングコストが高くなってしまう点に注意が必要です。

土地の固定資産税を支払う必要がない

借地だと地代を支払う必要があるものの、土地を所有するわけではないため、固定資産税を支払う必要がありません。

前述した「初期費用が安く抑えられる」というメリットは、土地から取得した場合のみに当てはまりますが、「固定資産税がかからない」というメリットは、相続した借地を活用する方にも当てはまります。

初期費用を安く抑えられることや土地の固定資産税が発生しないことなど、借地で賃貸経営することのメリットの多くは、費用面にあると考えるとよいでしょう。

>>関連記事:借地でも賃貸経営できる?賃貸経営で広がる借地の可能性と課題とは

借地のデメリット

一方、借地には以下のようなデメリットがあります。

    • 建物建築費のローン審査が通りにくい
    • 譲渡等の際に地主の許可が必要になる

ローンの審査が通りにくい

賃貸経営で融資を受ける場合、対象物件の担保価値の評価も含めて審査が行われますが、借地だと所有権と比べて担保価値が落ちてしまうため、ローンの審査が通りにくくなることがあります。

譲渡等の際に地主の許可が必要になる

借地も所有権と同じように第三者に譲渡することができますが、譲渡の際には地主の許可が必要になります。

また、譲渡の許可を得られたとしても、譲渡の際に地主に承諾料(名義書換料)を支払うのが一般的です。

所有権のようには自由に扱えない点に注意が必要です。

借地トラブル事例1:地主から値上げを要求される

ここからは、借地の賃貸経営で起こるトラブル事例を紹介していきたいと思います。

最初に紹介するのは、地主から値上げを要求される事例です。

借地を利用した賃貸経営では、地代を値上げされると収支が悪化してしまうことになります。

少しでも地代を安くしてほしい借地人と、少しでも地代を高くしたい地主とで、折り合いがつかないことも少なくありません。

地主からの地代の値上げ要求は借地人の同意が必要であり、借地人が合理的な理由がないと判断した場合には、拒否することもできます。

この場合、従来の地代を支払うことになりますが、地主が受け取りを拒否することもあります。

地代の受け取り拒否を回避する「地代の供託」

地主が地代の受け取りを拒否すると、借地人は債務を履行していないことになってしまいます。

こうしたときに活用できるのが地代の供託です。

地代の供託は、所管の法務局で手続きでき、地代の値上げには納得していないものの、契約を継続するという意思表示をすることが可能です。地主が従前の地代では受け取りを拒否するような場合、このような方法を取ると効果的です。

借地トラブル事例2:借地権の譲渡を地主が認めてくれない

借地を相続したものの、活用できていなかったり、地主が変わって地代の値上げ要求をされたりして、借地権を第三者に譲渡しようと考えることもあるでしょう。

借地権は所有権のように売却することが可能ですが、その際には地主の承諾が必要となります。

しかし地主からすると、借地人が変わることで、地代を支払ってくれなくなることなどを懸念して、譲渡を承諾しないことがあります。

また、譲渡の承諾にあたり、支払う名義書換料が高額で、借地人と地主との間で話し合いがまとまらないこともあります。

このような場合、どうすればよいのでしょうか。

地主との関係を良好に保つ

これは、他の借地に関するトラブルにおいても言えることなのですが、まずは地主との関係を日頃から良好に保つようにしておくことが重要です。

地代や更新料をきちんと支払うと共に、定期的にコミュニケーションを取るなどしておくと、承諾も得られやすくなるでしょう。

また、譲渡の際には、譲渡先の人となりを伝えたり、地代や更新料についてルールを定めるようにしたりすることで、地主の不安を和らげることができます。

建物買取請求権

借地権においては、一定の要件を満たすことで、地主に対して借地上の建物の買取を求める建物買取請求権が認められています。

建物買取請求権が認められるのは以下のようなケースです。

  • 存続期間が満了した場合に契約の更新がないとき
  • 借地権上の建物等が譲渡された場合に借地人が借地権の譲渡を認めないとき

借地権の譲渡でトラブルになるのは、後者の場合でしょう。

例えば、第三者に借地権付き建物を売却する場合、建物は元の借地人が建てたもので、所有権を持っているため自由に売買できますが、土地については地主の承諾を得なければ権利を移転することができません。地主が承諾しない場合には、新しい借地人は建物を活用することができず、社会的な損失となってしまいます。

これにより、上記の場合、新しい借地権者から地主に対して建物買取請求権が発生することになります。

裁判所で解決する方法もある

地主が借地権の譲渡を認めない場合には、最終的に裁判所から許可を得るということもできます。

しかし、裁判所で借地権を譲渡するケースでは、裁判所から借地権価格の10%程度の承諾料(名義書換料)の支払いを命じられることがあります。

また、裁判所から許可を得る形で手続きを進めると、新しい借地人と地主との関係性が悪くなってしまいやすいという問題があります。

場合によっては、新借地人と地主との間でも譲渡承諾に関するトラブルが発生してしまう可能性もあるでしょう。こうしたことを懸念して、借地権を購入しようとしていた相手方が取引を取りやめるリスクもあります。

借地権の譲渡において、裁判所の許可を得るのは最後の手段と考え、出来る限り話し合いの交渉で解決することがおすすめです。

トラブル事例3:借地権の相続でトラブルになった

借地権の相続の場合、地主との間でのトラブルだけでなく、相続人同士でのトラブルも考えられます。

例えば、遺言書がない場合には、遺産分割協議で、誰が借地権を相続するか決める必要があります。しかし、誰が相続するか結論が出ない場合には、法定相続人が共有名義で相続することになってしまいます。

共有名義になってしまうと、売却するか、賃貸経営するか、その判断をするのに、共有名義人全員の同意が必要となります。

共有名義人全員の意見を一致することは簡単なことではなく、その関係性にヒビが入ってしまうことにもなりかねません。

また、借地権を相続すると、その相続価値に応じて相続税を支払う必要があります。

相続税を納めるための現金を用意するにあたって、相続人間で不公平が生じ、トラブルに発展する可能性もあります。

生前から借地権の相続人を決めておく

こうした問題に発展しないためにも、生前から、誰が借地権を相続するか決めておくことが大切です。あらかじめ遺言書で相続人を決めておくとよいでしょう。

遺産分割協議で持分を決めるより、遺言書で相続人を決めておいた方が、被相続人の遺志を尊重でき、相続人間のトラブルも起こりにくくなります。

遺言書に関しては:相続を円滑に行える「遺言書」の書き方

>>関連記事:借地権の相続税と名義変更や地主の承諾などの注意点

相続による借地人の変更は地主の承諾不要

借地権を譲渡するには地主の承諾が必要ですが、相続による借地人の変更は地主の承諾が要りません。

従って、相続にあたり名義書換料を支払う必要もありませんので、覚えておきましょう。

借地の相続に関しては:借地権の相続に関する基本知識

まとめ

借地の制度やメリット・デメリット、さらに、注意点とその解決策をお伝えしました。

借地には初期費用を安く抑えられるという大きなメリットがあり、これは賃貸経営を始めるにあたって大きなポイントとなるでしょう。

借地は場合によってはトラブルに発展することもありますが、制度をよく理解しておけば、事前に対策を取ることができます。

また何よりも、借地人との関係を良好に保ち、トラブルに発展しないようにすることが大切だといえるでしょう。

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監修者プロフィール
中村裕介(宅地建物取引士、保育士)

商社、保育園、福祉施設での勤務を経た後、現在は不動産記事を中心としたライター業と、店舗・住宅を提供する不動産経営者としても活動中。