借地でも賃貸経営できる?賃貸経営で広がる借地の可能性と課題とは
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2023.12.20
公開日:2019.06.27
借地の土地を保有または新たに取得した方の中には、借地を所有し続けても地主に支払う借地料が生じるだけで、資産として有効活用することができないか気になっている方も多いと思います。
借地は所有している地主がいるため、自らが所有する土地との違いを理解した上で賃貸経営などの有効活用を検討することが重要です。
そこで今回は、借地(借りている土地)と所有している土地にどのような違いがあるのか、借地で賃貸経営を始める際の注意点などについて解説します。
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この記事のポイント
- 借地は利用目的が契約上の制限の対象となっていないか確認することが大事
- 借地での賃貸経営は銀行からの融資を受けにくい場合がある
- 良好な関係を築くためには地主との交渉前の準備が重要
借地とはどんなものなのか
通常、土地を購入した場合には、所有権を有する土地を取得することになります。所有権を有するということは、自由に土地の上に居住用の建物を建てたり、事業用の建物を建てたりできますが、借地はどうなのでしょうか?
借地とは、その名の通り、土地を借りることを意味します。土地を購入する場合には所有権が移転しますが、土地を借りる場合には土地の所有権は移転せずに、土地を利用する権利だけを取得します。借りた土地を利用する権利を「借地権」と呼び、地主との間で交わす土地の賃貸借契約書に記載されている利用方法の範囲で土地を自由に利用できます。
「土地の所有者はあくまでも地主なので、借地権者は立場が弱いのでは?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか?しかし、借地は「正当事由」が認められない限りは、更新を拒絶できないことが原則とするなど、土地の所有者より借地権者である借地人を強く守る仕組みになっています。
そのため、借地権者は土地賃貸借契約の内容に反しない限り、安心して居住用の建物を建て、生活の基盤を整えたり、事業用の建物を建て、事業を営むことができます。
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「借地法」「借家法」と「借地借家法」
借地に関する法律は、大正時代に制定された「借地法」「借家法」と平成4年に制定された「借地借家法」の2つに分けられます。よく見聞きする「旧借地権」とは、「借地借家法」が設定される前の借地法が適用される権利のことです。一方、「新借地権」とは、借地借家法が設定された後の借地の権利のことです。
旧借地権では、コンクリート造などの堅固な建物は30年以上、木造などの非堅固な建物は20年以上が権利の存続期間となっていました。また、更新後も同様の期間の権利が存続期間となっており、更新を拒絶する場合には正当な事由がない限り借地権者の権利が守られるなど、借地権者寄りの法律でした。
借地借家法の借地権には、「普通借地権」と「定期借地権」があります。普通借地権は建物の構造に関係なく、存続期間は30年と一定です。1回目の更新は20年、2回目以降の更新は10年となっています。更新を拒絶する場合は正当な事由が必要でしたが、基準が以前より緩くなっており、旧借地権よりも地主寄りの法律へと変化しました。
旧法 | 新法 | ||
---|---|---|---|
当初の存続期間 | 期間の定めがある場合 |
堅固建物:30年以上 非堅固建物:20年以上 |
30年以上 |
期間の定めがない場合 |
堅固建物:60年 非堅固建物:30年 |
30年 | |
再築に対する地主の意義あり | 本来の期間で満了 | 承諾があった日、または築造されたいずれか早い日から20年 | |
再築に対する地主の意義なし |
堅固建物:滅失時からの延長30年以上 非堅固建物:滅失時からの延長20年以上 |
本来の期間で満了 | |
更新後の存続期間 | 期間の定めがある場合 |
堅固建物:30年以上 非堅固建物:20年以上 |
1回目の更新20年以上 それ以降の更新10年以上 |
期間の定めがない場合 |
堅固建物:30年 非堅固建物:20年 |
1回目の更新20年 それ以降の更新10年 |
|
再築に対する地主の意義あり | 本来の期間で満了 | 承諾があった日、または築造されたいずれか早い日から20年 | |
再築に対する地主の意義なし |
堅固建物:滅失時からの延長30年 非堅固建物:滅失時からの延長20年 |
本来の期間で満了 |
そして、定期借地権には、更新のない定期借地制度も盛り込まれました。定期借地制度は、一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権の3つに大きく分けられます。一般定期借地権とは、50年以上も土地を利用できる借地権ですが、特約がない限り契約の更新や延長、建物の買取請求権が原則ありません。
事業用定期借地権とは、事業用に限定されている借地権です。10年以上30年未満の契約の場合は契約の更新や建物の買取請求権がありません。しかし、30年以上50年未満の契約の場合は建物譲渡特約付借地権を併用することもでき、契約満了時に借地人の建物を地主が買い取ることで借地権を消滅させることができます。
建物譲渡特約付借地権とは、30年以上土地を利用できる借地権ですが、契約終了の際には土地の所有者に建物を売却するという特約が付いているのが特徴です。
一般定期借地権は公正証書などの書面、事業用定期借地権は必ず公正証書による契約が必要です。また、普通借地権と建物譲渡特約付借地権は口頭でも問題ありませんが、トラブルに発展する可能性もあるため、なるべく書面による契約の方が良いでしょう。
このように、借地権と一口に言っても様々な種類や違いがあるため、違いを把握することが重要と言えるでしょう。
建て替えの場合、新耐震基準の賃貸住宅になるため、耐震性能も高く、今の時代の入居者ニーズに合わせた建物、間取りとすることができ、その分賃料も引き上げることが可能です。少子化の影響によって人口が減少傾向にあるため、空室リスクや家賃下落リスクといった影響が出ないか気になっている方も多いと思いますが、世帯数は年々増えているため、内訳に変化はあるものの賃貸需要は高い水準を維持していると言えるでしょう。
借地で賃貸経営を始める際の注意点
借地では、土地賃貸借契約に定められている土地の使用目的に反しない限りは、アパートやマンションなどの共同住宅を建てて賃貸経営を始めることが可能です。しかし、借地で賃貸経営を始める際には以下のような注意点があります。
- 条件(制限)があればその範囲の利用に限られる
- 増改築や再築は借地権設定者の承諾が必要な場合がある
- 銀行の融資を受けにくい場合がある
土地賃貸借契約に「共同住宅の建築不可」「増改築や再築不可」などの条件が付されている場合は、条件内の利用に限られてしまいます。そのため、契約書をよく読まずに契約するともめごとになるので注意が必要です。
条件を変えてもらうこともできますが、借地権設定者(土地の所有者)の承諾が必要です。契約条件とは異なる土地の利用方法を認める代わりに承諾料(借地権価格の10%程度)の支払いを要求される場合もあります。
また、共同住宅を建てる際には銀行の融資を受けながら建てるのが一般的ですが、借地では安定した担保を確保できないといった理由から融資を受けにくい場合があります。地主と共同住宅を建てることの同意を得るなどの借地での賃貸経営の基盤を固めていても、金融機関の融資を受けられなければ話が先に進みません。
そのため、借地での賃貸経営では、金融機関から融資を受けられるかどうか事前に確認しておくことが重要です。借地で賃貸経営を始める際には、これらの注意点をよく理解しておく必要があるでしょう。
借地で賃貸経営を始める前に必要な準備とは
借地での賃貸経営は、他人が所有する土地上に自らが建物を建てて賃貸経営を始めます。所有地で始める賃貸経営とは異なるため、借地権の契約内容に対する勘違いなどでトラブルに発展する可能性があります。そこで重要になるのが事前準備です。借地で賃貸経営を始める前に地主と確認しておくべき必要な準備には以下のようなものがあります。
- 賃貸経営を始める許可を得ておく
- 更新の約束を取り付けておく(定期借地権でないか確認)
- 借地料の急な上昇がないように約束を取り付けておく
土地賃貸借契約に書かれている内容が「建物所有の目的」と記載されている場合には、土地上に建物を建てて所有するのが目的であるため、共同住宅を建てても目的の範囲内と言えます。しかし、地主からすれば借地権者が自己居住用の建物を建てることを想定している可能性があるため、トラブルを防ぐためにも賃貸経営の許可を事前に得ておくことが重要となります。
借地権の残存期間が短い場合には、共同住宅を建てて賃貸経営を始めても期間満了+正当事由によって契約を解除される可能性があります。そうなると、安定した賃貸経営が困難になるため、賃貸経営を始める際には契約更新の約束を書面などで取り交わすことを勧めます。
賃貸経営を始めたものの、地主が「儲かっているのであれば借地料を上げても支払える」と、契約途中で借地料を上げる可能性があります。契約途中で借地料を引き上げられると、安定した賃貸経営に支障が生じます。立場が弱い借主を保護する約束は有効であるため、契約中には地代を上げないなどの条件を書面でもらうようにしましょう。
さらに、平成4年8月1日以降に契約された新借地権の場合には、更新がない定期借地権の可能性もあります。「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、事前に契約内容をしっかり確認し、地主とコミュニケーションを交わしておくことが、これから長く続く賃貸経営を安定したものとさせる大切な第一歩となるでしょう。
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