老後破産の主な原因とは?陥りやすい人の特徴とできる対策の例
公開日: 2023.10.13
最終更新日: 2023.10.17
定年後の老後生活に不安を感じている人は多いでしょう。老後は収入が減少しがちなうえ、医療費や介護費が増加するリスクがあるので、お金のやりくりに苦労する人も少なくありません。
実際、年金収入だけでは生活できず、老後破産に陥る人も目立つようになりました。
しかし、事前にリスクを把握し対処法を考えておけば、老後の資金不足は十分に防ぐことが可能です。
そこで本記事では老後破産の主な原因と陥りやすい人の特徴、有効な対策について解説します。
目次
1.老後破産とは
老後破産とはどのような状態であり、どのような原因によって起こるのか、以下に具体的なポイントを解説します。
1-1.高齢者が経済的に困窮している状態のこと
破産と聞くと、借金返済が困難になった人が裁判所に申し立てしたうえで債務整理を行う「自己破産」を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、一般的に使われる「老後破産」という言葉は、老後生活において日々の生活費や医療費が賄えなくなった状態を指して使われます。
すなわち「老後破産に陥った人」とは、実際に自己破産はしていませんが、老後生活に入り経済的な負担が増え、このままでは破産せざるを得ない状況に置かれた人やその家庭などが該当します。
1-2.なぜ老後破産が起こるのか
老後破産が起きる大きな原因は、老後になると多くの人が仕事を引退して、収入が減少するためです。
定年退職後は年金が主な収入源となりますが、会社員として勤務していた頃と比べて収入が減少する人が多い傾向にあります。
また、フリーランスや個人事業主、自営業として働いていた方は、会社員と違い厚生年金が支給されないため、公的年金として支給されるのは国民年金のみになります。
国民年金の月々の年金額は、保険料を納付した月数にもよりますが、大体5~6万円程度なので、これだけで老後生活を送るのは難しいでしょう。
実際、厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均年金月額が14万6千円であったのに対し、国民年金受給者の平均年金月額は5万6千円であり、大きな格差が出ています。(令和3年度末現在)
支給される年金が国民年金のみで、他に収入源がない方は老後破産のリスクが高まり、場合によっては生活保護の申請も考えなければならないので、しっかりとした対策が必要です。
【出典】令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省)
2.老後破産を引き起こす主な原因
なぜ老後破産は起こるのか、疑問に思う方も多いでしょう。
そこで老後破産が起こる主な原因を4つ紹介します。
2-1.収支バランスの悪化
年金のみでは老後生活が困難な場合が多いので、これまでの貯蓄を取り崩しながら生活する方も少なくありません。
そのため、十分な貯蓄額がないと生活に必要な資金が底をつき、老後破産に陥ります。
無職になるのではなく、アルバイトやパートなどで給与収入を得ることで生活費を賄う選択肢もありますが、高齢になれば体力も低下するので、現役世代並みに働ける方は少ないでしょう。
2-2.住宅ローンの返済負担
マイホームを購入して住宅ローンを組んでいると、退職後も返済が続くことがあります。
この場合、退職して収入が減った後も同じ額の返済をしなければなりません。
生活費に充てる予定の定年退職金や老後資金を、住宅ローンの返済に回さざるを得なくなるので、老後破産のリスクが高まります。
もちろん、返済負担額や完済までの年数、収入における割合にもよりますが、家計を圧迫する大きな要因になることは多いでしょう。
2-3.医療費や介護費の増加
病気の治療が家計を圧迫するケースもあります。
年齢を重ねるにつれて予期せぬケガや病気は起こりやすくなり、医療費が増加する可能性が高まるためです。
健康に配慮すればある程度リスクは減らせますが、自分の努力だけでリスクをゼロにはできないので、高齢になれば誰にでも起こりうるものと考えておきましょう
また、配偶者や自分の介護が必要になった場合は、介護施設や老人ホーム、高齢者向け住宅への入居費用などの介護費もかかるようになります。
2-4.熟年離婚
近年、50代以降の高齢夫婦による離婚(いわゆる熟年離婚)が増加傾向にありますが、離婚も老後破産を引き起こす原因になり得ます。
結婚生活を通して築いた財産が減るうえ、受給できる年金も1人分になってしまうためです。
元々、夫婦2人分の年金や資産により生活していた夫婦が熟年離婚すると、収入が大きく減少し、お互いの生活が立ち行かなくなるケースが考えられます。
さらに子供の教育費用や親の介護費用などがかかる場合は、より生活が厳しくなるでしょう。
3.老後破産に陥りやすい人の特徴
老後破産の原因を解説してきましたが、もちろん原因に当てはまっていれば必ず老後破産するとは限らず、個人の性格や周辺環境などが大きく影響します。
実際に老後破産に陥りやすい人の特徴を解説します。
3-1.生活水準や日々の支出にあまり関心がない
老後破産を起こさないためには、家計管理を怠らないことが重要です。
そのため、生活水準や日々の支出にあまり関心がない人は、家計状況の変化に対して鈍感なので、老後破産に陥りやすいといえるでしょう。
たとえば退職を期に収入が減少したにもかかわらず、現役時と生活レベルを変えず、支出の見直しを行わなかった場合、家計収支が赤字になる可能性があります。
また、退職して自由な時間が確保でき、以前と比べて趣味や旅行などにお金を費やすようになった方も注意が必要です。
貯金をせず散財していたり、年金受給額を把握していなかったり、将来の生活に無関心な方は早めに興味を持ち、対策することをおすすめします。
3-2.病気やケガのリスクを重要視していない
昔は健康だったとしても年齢を重ねて同じように健康を維持できるとは限りません。
高齢になれば病気やケガのリスクが高まることを意識していない方は、いざ大病を患ったとき、医療費の支払いに苦労するでしょう。
昔の不摂生や悪い健康習慣が大きな病気を引き起こすこともあります。
「自分は大丈夫だ」という思いから予定外の医療費を考慮せず、後悔する人も多いのが現実です。
3-3.いざというときに頼れる人が少ない
社会的孤立が要因となって老後破産を引き起こすケースもあります。
外出する機会が減少したり、食事が疎かになったりすると体調を崩しやすくなるため、より多くの医療費がかかる場合もあります。
また、高齢者をターゲットにした詐欺や怪しい業者の勧誘が原因で資産を失うこともあります。
こういったとき、周りに相談できる人や心配してくれる人がいれば大半は防止できますが、頼れる人がいない独居高齢者の場合、騙されてしまうケースが多いのが実態です。
4.老後破産にならないための対策
では、老後破産にならないためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。
以下に有効な対策を3つ紹介します。
4-1.支出を見直す
日々の生活でどれくらいの支出が発生するのか可視化して、改善できる部分をピックアップしましょう。
年金生活では無駄と感じる支出を削り、コンパクトな家計を目指すことが大切です。
特に毎月かかる固定費の削減が効果的なので、食費、光熱費、通信費、利用中のサブスクサービスなど生活の中で見直せるものがないか考えてみてください。
ただし、漠然と見直すのではなく、老後はどのような暮らしをしたいか、年収はどのくらいほしいのか、月額どの程度の支出があれば良いのかなど、自分が希望する生活を念頭に入れることも重要です。
4-2.病気やケガのリスクに備える
予期せぬ出費によって老後破産のリスクが高まるケースも見受けられます。
大きな病気にならないよう、生活習慣を見直すことも対策の1つです。
健康に配慮した食生活や適度な運動を心がけるようにしましょう。
また、生命保険や医療保険、介護保険などの加入内容をチェックして、必要なもの不要なものを再検討することも重要です。
4-3.資産形成をする
老後に備えて資産を増やすことは重要です。
働いてお金を増やすのと同時に、お金を働かせることも考えておきましょう。
資産形成の方法として、預貯金だけでなく、投資信託や不動産投資なども選択肢としてあげられます。
投資信託は少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)といった制度を活用し、若いうちから60歳、65歳以降の生活を見据えて、長期的な資産運用をすることをおすすめします。
また、不動産投資も老後資金の有効な対策になります。
マンション経営やアパート経営を行えば、家賃収入により安定した収入が得られ、さらに所得税や住民税の節税もできるメリットがあるためです。
なお、不動産投資の詳しい解説を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>>関連記事:不動産投資は老後資金の対策になる?おすすめの理由、失敗しないコツ
5.老後破産は対策可能
老後生活に不安を感じる人は多くいらっしゃいますが、前もって将来の年金受給額も計算して、老後生活の収支をシミュレーションしておけば十分に対策できます。
しかし、何も準備しないまま定年を迎え老後生活に入ると、想像以上に収支が厳しくなる場合もあります。
さらに病気やケガ、家族の介護などが重なり想定外の支出が増加した結果、年金を中心にした老後収入では対応できなくなり、老後破産に陥ってしまう方もいるでしょう。
もし専門家に具体的なアドバイスをもらいたい場合はファイナンシャルプランナー(FP)へ相談すると安心できます。
ファイナンシャルプランナーへ相談すれば、お金の悩みに対して中立的な視点からアドバイスし、ライフプラン作成、保険商品の見直しなどもしてもらえます。
平均寿命が向上し、人生100年時代といわれる昨今、将来の資金計画はできるだけ若いうちから考えておくことが望ましいといえるでしょう。
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■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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