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農地を相続放棄することはできる?手続きの流れと相続した際の使い道

公開日: 2023.03.06

最終更新日: 2023.03.06

遺産相続において問題となりやすいのが、田んぼなどの使う予定のない不動産を相続する場合です。農地等は農業従事者以外は利用しづらく、相続税や固定資産税の納税が負担になりがちです。

 

今回は、農地を例に使う予定のない不動産の処分方法として、相続放棄を詳しく説明します。処分の流れや手続き方法について、ポイントを絞って解説しますので、最後までチェックしてみてください。

1.農地を相続放棄することはできるのか

原則として、被相続人が死亡した場合、相続人は遺産を全て受け継ぐこととなります。
不要な遺産があったとしても、えり好みすることはできません。もちろん相続人が複数いる場合は、法定相続人全員の同意を遺産分割協議書に残すことで他の相続人に農地を相続してもらうことが可能です。

しかし、相続人が自分1人しかいない場合や、誰も農地を欲しがらない場合はどのようにすればよいのでしょうか。選択肢を紹介します。

1-1.農地を含めた全ての財産をまとめて相続放棄することはできる

一つ目の選択肢が、相続放棄です。相続放棄とは、相続人としての権利を放棄し、財産の全てを引き継がない手続き方法です。
相続放棄を行うと元から相続人ではなかったという扱いになるため、農地以外の財産も全て手放すことになります。そのため、相続放棄はプラスの遺産より借金などのマイナスの遺産がはるかに大きいことが予想されるケースに選択されるのが一般的です。

1-2.相続放棄しても管理責任は残る

農地や山林などの不動産はメンテンナンスが必要です。
建物の老朽化対策や土地の雑草処理を行わずに放置が続くと、周囲とのトラブルに発展してしまう可能性があります。そのため民法では、不動産を相続放棄した場合でも、次に管理する人が見つかるまでは相続人に管理義務が残ることとしています。

 

もし他に相続人がいる場合は、次の順位の相続人が遺産を相続することになるため問題ありません。しかし他に相続人がいない場合は、相続放棄をするとともに家庭裁判所に申し出て、相続財産管理人を選任してもらう必要があります。

 

相続財産管理人とは、相続人がいない場合に相続財産を管理・清算する人です。清算できない財産の場合は国庫に帰属させます。相続人は、相続財産管理人に遺産を引き渡すことで、その後の管理をしなくてもよいことになります。

 

1-3.相続土地国庫帰属制度の開始で所有したい財産だけ残せるようになる

二つ目の選択肢が20234月に開始予定の「相続土地国庫帰属制度」です。
この制度を利用することで、 相続後に不要な土地を国に引き渡すことができます。ただし、この制度を利用するためには条件があります。まず、管理・処分をするに当たり過分の費用・労力を要する土地は対象外となります。

 

例えば建物がある土地や、担保権などの権利が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、特定有害物質により汚染されている土地、境界が明らかでない土地や所有権の範囲等について争いがある土地などは引き取ってもらえません。
また、審査に通った後でも、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。田畑の場合、負担金は面積にかかわらず20万円とされています(ただし、一部の市街地や農用地区域等の田畑は面積に応じて算定)。費用も発生することからこの制度を利用するか否かは慎重に判断しましょう。

2.農地を相続放棄する手順

ここからは実際に相続放棄をする上で必要となる手続きを、ステップごとに紹介していきます。

 

Step.1手続きに必要な書類を用意する

相続放棄には、主に3つの書類が必要になります。

 

・相続放棄の申述書

申述書は、相続放棄を行うことを裁判所へ申請するための書類です。申述書には申述人と被相続人との関係や、相続放棄をする理由、相続財産の概略などを記載する欄があり、申述人1人につき収入印紙800円の納付が必要です。

ひな形は、裁判所のホームページからダウンロードできます。成人か未成年かで様式が異なるので注意しましょう。

 

・被相続人の住民票除票または戸籍附票

被相続人が亡くなったことを証明するために、住民票除票または戸籍附票が必要です。どちらも被相続人が最後に居住していた自治体の役所で取り寄せることが可能です。

 

申述人の戸籍謄本

続いて必要となるのが、相続放棄を行う申述人の戸籍謄本です。戸籍謄本は本籍地のある自治体の役所で取り寄せることが可能です。遠隔の場合は、請求書と手数料、切手を貼った返信用封筒、本人確認できる書類を送付することで取り寄せることができます。

 

これらの書類の他にも、申述人と被相続人との関係に応じて別の書類も必要となります。例えば申述人が被相続人の配偶者の場合は、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)が必要です。詳しくは裁判所のHPをご確認ください。

 

Step.2家庭裁判所に相続放棄を申し立てる

必要書類を、家庭裁判所に対してまとめて郵送します。
申述先は、被相続人が亡くなる前に在籍していた住所地を管轄する家庭裁判所です。家庭裁判所によっては、連絡用の郵便切手も必要になる場合があります。

申告期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内と法律で定められています。この期限を越えてしまうことのないよう、早めの相続手続きを心がけましょう。

 

Step.3相続放棄に関する照会書を送る

相続放棄を申し立てると、家庭裁判所から照会書が届きます。
これは家庭裁判所から申述者に対して行う最終確認で、手続きが行われることに対して問題がないか、その気持ちに変わりがないかが問われます。問題がなければ、必要事項を記入して照会書を送り返しましょう。
照会書を送った後、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。これが正式に相続放棄が認められた証です。

 

Step4.農業委員会に届け出をする

相続放棄を行い、他の相続人が農地を相続することになった場合、その相続人は農業委員会へ名義変更の手続きを行わなければなりません。
届け出は相続開始から10カ月以内に行う必要があり、怠ると10万円以下の過料が課せられる可能性があります。農業委員会は市町村ごとに設置されていることが多く、届け出は、農地法の規定による届出書と、相続登記後の登記事項証明書が必要となります。登記事項証明書は法務局やオンラインで取り寄せることが可能です。

3.農地を相続した際の使い道

相続放棄は全ての財産を手放すというデメリットがあることから、できれば相続した農地を有効活用するのが望ましいといえます。そこでここでは、農地転用を含む使い道を解説します。

3-1.農家に売却する

使い道の一つ目は、近くで農業を営んでいる人への売却です。

農地は食料自給率維持の観点から、農地以外の用途への転用が制限されています。
また農地を購入できるのは、農業委員会に許可を受けた農家や農業従事者に制限されています。そのことから、既に近隣で農業を営んでいる農家が有力な売却先の候補となるでしょう。

ただし、農地は需要が少ないことから簡単に売買が成立しません。買い手が見つかるまで時間がかかることは認識しておきましょう。

 

3-2.農地以外に転用して土地活用する

農地の場所や種類によっては、農地から宅地へ用途変更できる可能性があります。農地から宅地へ地目を変更するには、農業委員会の許可が必要となります。
許可が下り宅地に変えられれば土地の上に建物を建てられるようになるため、活用の幅はぐっと広まります。

土地活用には様々な手法があります。
賃貸住宅や駐車場、トランクルーム、コインランドリー、太陽光発電など・・・。

まずは土地活用を専門に行っている会社へ相談し、自分の土地がどのような用途に向いているのか意見を聞いてみるのがよいでしょう。

土地活用の方法16選については、以下のコラムで詳しく説明しています。

4.農地の相続放棄を行う前に、まずは土地活用を検討しよう

今回は、農地の相続放棄について説明しました。
相続放棄は一度行ってしまうと全ての財産を受け継ぐ権利を失ってしまいます。弁護士や司法書士などの専門家に相談した上で、慎重に検討しましょう。

農業をする予定はなくても、農地を使って土地活用する選択肢は豊富にあります。手放す前に一度、土地活用を行っている会社に相談してみるのがよいでしょう。

大東建託では、土地活用に関するご相談を無料で受け付けています。土地に合わせた活用方法をご提案しますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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最新の市場環境を把握し、将来の適切な活用方法についてご家族内で検討しておくことは、結果的に円満・円滑な資産承継につながります。ぜひこの機会に、弊社の無料土地診断をお試しください!

■監修者プロフィール

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表
宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。

現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。

また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。

【保有資格】 税理士、CFP®