民泊がアパート経営を救う?~空室リスク対策に対する民泊の可能性~
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2023.12.20
公開日:2018.05.24
健全な民泊サービスの普及を図るため、平成29年6月に住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)が成立(平成30年6月施行)しました。そもそも民泊とは何か。そして民泊がアパート経営における空室対策に有効な手段となり得るのか。そのためには、どのような注意点があるのかについて、考えてみたいと思います。
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この記事のポイント
- 民泊を行うには建物の種類や設備について一定の条件を満たす必要がある
- トラブル防止のためには利用者へのルール作りが不可欠
- 民泊を空き室対策として活用するには、入居者への十分な配慮が必要
民泊とはなにか?
民泊という言葉に明確な定義はありませんが、一般的には、住宅の全部または一部を旅行者などが宿泊する施設のことを指します。近年、インターネットを介して、宿泊したい人と空き家などを短期で貸したい人をマッチングさせるビジネスが展開されていることもあり、急速に民泊を見聞きする事が増えてきました。
平成30年6月の住宅宿泊事業法の施行以降は、日本国内でいわゆる民泊を行う場合には、以下の根拠法(法律)の内、どれか一つに適合させる必要があります。
根拠法 | 窓口 | 概要 |
---|---|---|
旅館業法 (昭和23年法律第138号) |
民泊を行う予定の施設(住宅)の所在する都道府県等の保健所にて申請し、許可を得る ※都道府県等の旅館業法担当窓口に要事前相談 |
・実際に許可申請を行う前に、事前相談を求めている自治体が多い ・建物の構造等に細かな制約が多い |
国家戦略特区報 (平成25年法律第107号)(特区民泊) |
特区民泊が行える自治体である場合には、その行政から認定を受ける | 特区民泊とは、国から国家戦略特区と指定され、かつ民泊条例を制定した地域のみで行うことができる民泊 |
住宅宿泊事業法 | 住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に届け出る ※住宅宿泊事業の届出は、原則として民泊制度運営システムを利用 |
・年間営業日数の上限が180日 ・家主居住型(家主が宿泊者と一緒に宿泊するタイプ)と家主不在型(家主は宿泊しないタイプ)に分類される |
賃貸住宅における民泊の活用
民泊は住宅だけでなく、賃貸住宅の居室も対象となります。民泊を行うことができる建物は、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」、「入居者の募集が行われている家屋」、「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」の3種類です。
また、「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」が設けられているなど一定の条件を満たす必要があり、民泊の営業を行える地域であることも必須条件になります。
「旅館業法」に基づく民泊を行う場合、都市計画法や建築基準法により、営業ができる地域が限定されています。「国家戦略特区法」に基づく民泊を行う場合は、そもそも「国から国家戦略特区と指定され、かつ民泊条例を制定した地域」に限定されています。最後に「住宅宿泊事業法」に基づく民泊を行う場合でも、条例で制限されている可能性もあります。 賃貸住宅を民泊に活用することを検討する際には、まずは物件が所在する自治体の都市計画課に民泊営業が可能なエリアかどうか、確認してみるとよいでしょう。
また、実際に賃貸住宅で民泊営業を行うなら、管理を行ってくれる代行業者や仲介会社を選ぶ必要もあります。その際には、料金はもちろんのことですが、基本料金の中でどこまでのサービスを行ってくれるのか、またインターネットなどによる利用者の評価はどうかなど、いくつかの業者を比較検討することも必要です。
法整備が民泊のハードルを下げていく
利用人口が増加する中、空き家の有効活用の方法としても期待が高まっている民泊。
民泊がスタートした頃は、感染症まん延防止等の公衆衛生の確保や、地域住民等とのトラブル防止に留意したルール作りは出来ていませんでした。また、旅館業法の許可が必要な旅館業に該当するにもかかわらず、無許可で民泊を実施されている建物もありました。そのため、民泊利用におけるトラブルが発生することが度々あったことも事実です。
そうした背景を踏まえ、徐々に法律が整えられてきました。今後は、さらに民泊を活性化する体制づくりが求められることになるでしょう。
住宅宿泊事業者に課されていること
- 1.宿泊者の安全の確保・・・避難経路の表示、防火の区画などを設けます
- 2.外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保・・・外国語を用いて、届出住宅の設備の使用方法に関する案内などを行います
- 3.宿泊者名簿・・・宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日等を記載した宿泊名簿を一定の場所に備え、3年間保存し、都道府県知事から要求があったときは、提出する義務などがあります
- 4.周辺地域への悪影響の防止・・・騒音の防止のために配慮すべき事項などの説明を行います
- 5.苦情等の対応・・・深夜早朝を問わず、常時、応答又は電話により対応する義務などがあります
- 6.住宅宿泊仲介業者への委託・・・宿泊者との予約受付や契約の締結などを第三者に委託する場合は、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託する義務などがあります
民泊をアパート経営に活用する際の注意点
住宅宿泊事業法の成立により、アパート経営におけるにおける空室リスク対策として活用することもできる民泊事業。しかし、外国人観光客が民泊を利用するケースも多く、日本人であれば当然と考えるマナー(ゴミ、騒音など)を守ってもらえず、トラブルが生じてしまうことも考えられます。その影響で、既存の入居者が退去してしまっては、空室リスク対策としての民泊が本末転倒になってしまいます
メリット | デメリット |
---|---|
・空室の有効活用ができる ・宿泊者との交流が図れる |
・民泊施設への被害(宿泊者による器物破損・紛失など) ・入居者や近隣住民とのトラブル発生(騒音・喫煙など) ・管轄法や条例などの規制や改正に伴う事業への影響 (ルール改変・再申請など) |
そうならないために、細かく利用者のルール作りを行い、そのルールを掲示物などでわかりやすく利用者へ注意喚起をしたり、トラブルが生じた場合にはオーナー様自らが出向いて対応をしたり、ということも必要でしょう。その際、日本語以外での対応をすることも必要になる場合もあります。管理会社の対応についてはまだまだ整っていないのが現状となります。まずは民泊事業を始める前に情報収集をしっかりと行い、どのようなルールが必要かを、実際にいくつかの民泊に宿泊して体験してみたり、住宅宿泊管理業者等に問い合わせてみたりすることも考えてみましょう。また、民泊制度ポータルサイトの他、各自治体で独自に条例を制定している場合もあるので参考にしてみるとよいでしょう。
まとめ
このように、アパート経営における空室リスク対策として民泊を活用するためには、考えておかなければならないことが沢山あります。また、おもてなしの心構えをもつことも民泊事業には大切なことです。今すぐに動き出す必要性は低いかもしれませんが、民泊について情報収集はしておいてもよいのではないでしょうか。民泊活用が空室リスク対策のひとつの選択肢ととらえながら、今後の民泊の動向についてアンテナを張っておくのも悪くありません。
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