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<大東建託×NewsPicks>【柳澤大輔】未来の賃貸住宅は、もっと「面白く」なれる

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2022.11.10

持ち家信仰が根強いと言われた日本だが、近年、シェアハウス、デュアルライフ、アドレスホッピング、不動産のサブスクリプションモデルの登場など、「住まい」に対する価値観は劇的に変化し、多様化している。
そんな時代にあって、常に楽しく、幸せに生きるための「面白い」方法を世の中に提示し、実践してきたのが面白法人カヤックだ。カヤックは、15年以上前から鎌倉に拠点を置き、2017年からは地域の特性を活かして経済を活性化し、人を幸せにする「地域資本主義」を提唱している。今回は、カヤック・柳澤大輔氏と、もっと私たちが幸せに暮らせる、「面白い」住まいの未来について考えた。

提供:NewsPicks

幸せに生きるために、カヤックで考えたこと

僕たちカヤックは「面白法人」と名乗り、人が楽しく、幸せに生きるための方法を模索してきました。そこには当然、人生の中に占める時間が長い、「暮らし方」や「働き方」も含まれます。

長い時間を過ごすなら、一緒にいて楽しい仲間と、好きな場所で働いたほうが幸せだろう。そう思って、神奈川県鎌倉市に拠点を置いたのが15年以上前。

それから、好きな場所で働くだけじゃなく、住んでしまえばもっと楽しいよね、ということで鎌倉市周辺に住む社員への家賃補助制度を作ったり、住居兼オフィスを期間限定で地方(※海外の場合も)に借りる「旅する支社」という制度を実施したりしてきました。

カヤックの社員だけでなく、鎌倉の街で暮らす人、働く人が幸せになる方法を考えて開いた「まちの社員食堂」も元気に営業中です。雨の日は、わざわざそこまで歩いて行くのが面倒だったりもするんですけどね(笑)。

「まちの社員食堂」は、鎌倉にオフィスを持つ企業と鎌倉市などの行政から会費をいただいてカヤックが運営する社員食堂。メニューは、地域のレストランが週替わりで提供している。

楽しいほうが生産性が上がるとか、効率がいいとか、そういうことではなくて、純粋に幸せに生きたいから、そうしてきたんです。

といっても、カヤックは「株式会社」なので、既存の資本主義を否定しないことが前提で、経済活動を行っています。それは、頑張ってお金を稼いで増やすことも幸せの大きなファクターだと思っているからです。

だけど、実感値として、幸せとGDPとが単純には比例しない。つまり、資本主義のものさしだけで測ると、抜け落ちてしまうものがある。これは、いろんな人が感じていることではないでしょうか。

そこで、自分たちの「楽しかった」活動を紐解いてみたら、「地域資本主義」という考え方にたどりつきました。

簡単に説明すれば、地域の企業や行政が一体となって、物質的な豊かさ=経済資本に加えて、社会資本(=人のつながり)と環境資本(=自然や景観の美しさ)を伸ばすことで、人を幸せにするという考え方です。

「プロジェクトベース」の賃貸住宅とは

鎌倉じゃなくてもいい。好きな場所で、価値観を共にする仲間と、楽しい仕事をして生きていく。これが幸せに直結するということは、自分たちが長く実践してきたので自信を持って言えます。

では、経済的な豊かさという資本主義のものさしだけでは幸せが測れなくなった今、どんな「暮らし方」が幸せなのか。

価値観が多様化した時代なので、「幸せ」も人によって違うことは前提ですが、今、僕が面白いんじゃないかと思っているのが、「プロジェクトベースの家族」。

iStock.com/Hakase_

ただ生産性が高いだけじゃなく、価値観の合う仲間と働くことが楽しいなら、私生活でも価値観が合って結婚した相手との生活に、仕事と同じように「プロジェクト」という考え方を持ち込んだら楽しいんじゃないかという逆の発想です。

プロジェクトのひとつと捉えれば、子育ても家族が成長するための「戦略」という位置づけになり、戦略ならどういう方針でいくのか、足並みを揃えるためにもちゃんと議論する。

「子どもの自由にさせる」と言っても、指針になるような家訓を作ったり、生産性を上げさせるような仕組みを考えますよね。そこまですると、ちょっとやりすぎな気もしますけど(苦笑)。

でも、家族だからこそ「(お互いに)気持ちは同じだよね?」と思い込んで、きちんとした話し合いがないまま進んでしまうケースもあるので、その不一致を未然に防ぐ役目も果たすと思います。


それをもう一段階発展させて、「プロジェクトベースの賃貸住宅(マンション)」を作ったらどうでしょう。

特に都会では、同じ賃貸住宅に住む他の入居者の名前も素性も知らない状態が普通で、自分たちの家族と違って価値観すら合っていない。

それが悪いわけではないんだけど、たとえば「世界一キレイな賃貸住宅にする」というプロジェクトを掲げて、それに賛同する人を集めて掃除を戦略的に考えたりすれば、きっとそこは「ただ寝る場所」じゃなくなります。

賃貸住宅の中に「つながり」が生まれて、家族の延長のような関係を育むことができる。これは貴重な経験だし、どんな間取りで、駅から何分で......という測りやすいスペックとは違う、プラスの住まいの「価値」になる。

ある程度(プロジェクトを)やりきったなと思ったら、また別のプロジェクトを掲げる賃貸住宅に引っ越してもいいし、プロジェクトが楽しければずっとそこにいてもいい。その自由さもいいですよね。

プロジェクトというキーワードで考えると、僕たちは地域に行きたい人と地域で活動する人とをマッチングする「SMOUT(スマウト)」というサービスも提供しています。

SMOUTは、新しい暮らしをしたい人、地域と関わりたい人、地域の関係人口を増やしたい人に、おすすめの地域からスカウトが届く移住スカウトサービスだ

地域に移住したり、2拠点生活(=デュアルライフ)、多拠点生活をしたい人が、自分の興味や得意分野といったプロフィールを登録しておくことで、地域からスカウトメールが届くのですが、逆に、地方自治体が登録しているプロジェクトから、自分が活躍できそうな場所を探すこともできるんです。

登録者を見てみると、やはり20?30代の人が多いものの、海外から戻ったばかりの身軽な立場の人から、子どもにもっといい環境をと考えるシングルマザー、週末だけのデュアルライフを計画する家族など、属性はさまざまです。

おかげさまで、登録者数もサービス開始から1年半で約8000人、自治体(地域)の数も増えています。

少し前までは、移住や多拠点生活をしようとしても、会社員はそもそも「会社に行く」という前提があって無理だった。それが今、大企業でもリモートワークの流れが進んでいます。

さすがに今でも、実際に多拠点で働ける人は専門性が高いスキルのある人に限られますが、プロジェクト単位という考え方は、いろいろな人にとっての活路になるのではないかと思っています。



未来の賃貸住宅は、社会課題を解決するか

「プロジェクト」をさらに進化させて、「社会課題から逆算する賃貸住宅」というアイデアもあります。たとえば高齢化が進む日本では、親の介護を課題として抱える人が大勢います。これからはもっと増えるでしょう。それをひとつの賃貸住宅のテーマに設定するんです。

そうすると、介護の必要な親を抱えた人が集まり、介護を学んでいる学生さんも、勉強のために集まるでしょう。「子どもがいて、長時間外に働きに出ることは避けたいけど、同じマンション内なら働ける」と考えるシングルマザーにとっては、住居兼職場になる。

介護をテーマに取材したいジャーナリストが、「介護の現実を知るために一定期間だけ住んでみたい」ということもあるかもしれない。

また、テーマによっては建物の設計からして変わるでしょう。介護なら、バリアフリーが徹底されて、生活の場としてのプライバシーは守られつつも、いざというときに出入りが簡単な、これまでにない賃貸住宅が生まれるはずです。

iStock.com/byryo

かつては多くの人に共通する夢だった車や家などの「所有」に興味がない人が増えていることは、僕も肌で感じています。ですが、自分で考えて、何かを「創る」喜びは普遍的なものだとも思っている。

僕自身、鎌倉を拠点に働き、暮らしていきたいと思ってこれまで活動してきたので、やはり住む場所=地域だけじゃなく、住まいや建物自体にもこだわりがあるんです。そんな僕から言えるのは、家づくりは失敗する、ということ(苦笑)。

リフォームやリノベーションレベルでも、家を建てる話でも同じで、家をつくったことがある人なら共感してもらえると思います。家一軒建てるということは本当に大変なことです。

家をつくるのは、時間もお金もかかるし、ハードルも高い。でも、その面倒くささのぶんだけ熱中できるし、何よりすごく楽しい。

この楽しさを、「所有に興味がない」という理由で諦めてしまうのは、すごくもったいないと思うんですよね。

だから、未来の賃貸住宅には「つくる」「変える」喜びがあってほしい。たとえば賃貸契約をした段階ではスケルトンになっていて、そこから自由に作り変えられる賃貸住宅があったら、家を「買う」ほどの資金がない人でも、「つくる」「変える」経験ができる。

僕はこれまで、幸せな生き方を追求して、いろいろな活動をしてきました。まったく新しいアイデアもあったけど、大切にしてきたのは「面白くなかったものを、アップデートすることで面白くする」という視点です。

そういった意味で、賃貸住宅にはもっともっと面白くなる余地がある。これからどう進化していくのか、すごく楽しみですね。

(執筆:唐仁原俊博 編集:大高志帆 撮影:木村雅章 デザイン:岩城ユリエ)

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