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【アセトラ】争族の相談事例と準備のポイント

最終更新日: 2023.12.21

「争族」とは「相続」の当て字であり、遺産相続をめぐる親族間の争いを表す言葉です。

親族全員が争わずに資産承継したいと思っていても、いざというときに不満が生じてしまうことはあり得ます。

しかし、相続において争族対策が必要なのか疑問に感じる方もいることでしょう。そこで争族事例と対処例、そして対処時に押さえるべきポイントを紹介します。

 

■この記事のポイント

・争族事例を知ることで、争族の芽となる事象を把握する

・争族(相続)対策があることを知る

・争族の芽を摘むために重要な、事前の準備について理解する

 

1.相続時の悩みとは?争族の相談事例

争族対策の必要性を感じて専門家に相談に来るのは、どのような状況なのでしょう。

相続にはさまざまなケースがあり、個々の事情はご家族ごとに違いますが、争族が起こりやすい傾向はあります。ここでは、4つの代表的な事例を紹介します。

なお、本記事の事例では被相続人はリタイア世代。相続人は被相続人と同年代の配偶者と現役世代の子ども複数人であることを前提としています。

 

(1)自宅に同居・非同居の子どもがいる


主な相続財産が自宅しかないケースは、よくあることでしょう。しかし、不動産は現金と違い、公平に分配にしくいという課題があります。

 

さらに子どもが複数人いると、同居の有無で子どもの立場が変わってしまう点にも注意が必要です。例えば長男(もしくは長男家族)のみが同居していると、兄弟間で次のような行き違いが生じやすくなります。

 

●同居している長男の考え・・・

同居家族である自分は親の面倒を見ていくのだから、自宅をもらうのが当然である・・・と考えるでしょう。

 

●非同居の子どもの考え・・・

自宅にいるということは、家賃がかかっていないということ。親から経済的恩恵を受けているのだから、親亡き後は資産(自宅)を公平に分配すべき・・・と考えるでしょう。

 

配偶者や同居の子どもからすれば自宅は重要な生活基盤です。ただ、非同居の子どもと相続財産を分け合うには、自宅の売却を検討しなければならないかもしれません。

(2)収益物件の今後の扱い


アパート・マンションの建っている土地は、借地権割合・借家権割合に応じて土地の評価が小さくなります。そのため相続対策として賃貸物件を建てる方も少なくありません。

賃貸物件は、収益性があるため争族にはなりにくいとの考えもあります。

しかし、収益性がよい物件ばかりではありません。空室が多く、メンテナンスが行われていない賃貸物件は売却しにくくなる可能性があります。仮に売却できず、建て替えや解体となると大きな費用がかかります。

賃貸物件を保有し続けるか、売却するかといった基本的な方針すら意見の相違が生じやすいです。特に配偶者と子ども世代では、収益物件への認識がずれがちです。

 

●被相続人の配偶者から視ると・・・

長期的な視点を持ちにくく、経年劣化が進んでいたとしても、現時点で収益性があればよいと考えがちです。

 

●相続人の子世代から視ると・・・

外壁塗装や屋根塗装といったメンテナンス費、将来的な建て替え等も考慮すると、親世代で建て替えもしくは大規模修繕してもらうか、納税や遺産分割対策として親の生前に売却=現金化するかを親世代が元気なうちに検討しておくことが必要になります。

 

(3)遺留分侵害額請求権が懸念材料


遺留分とは一定の範囲の相続人が相続財産の一定割合を請求できる権利のことです。請求権を持つのは「配偶者」「子ども・孫」「親・祖父母」などで、兄弟姉妹や甥・姪にはありません。

 

ご自身の財産を配偶者や子どもたちに公平に譲り渡したいと考え、生前の話し合いや遺言によって意思を示したとしても、納得しない相続人が遺留分侵害額請求権を行使すれば、争族に発展してしまう可能性が高まります。

特に相続財産が自宅しかない場合は、20197月の民法改正により、遺留分の精算はすべて金銭で行うことが原則とされたため、遺留分を精算するために自宅を泣く泣く売却せざるをえないという状況も起こりうるので悩みが大きくなります。

 

(4)認知症への不安


争族への懸念と同時に、認知症リスクへの不安からの相談もあります。ご自身が認知症になってしまうと、財産管理や運用などの意思決定ができなくなります。
承継すべき財産に対して、ご自身や家族が効果的な管理・売却・運用等のプランを持っても手が打てません。

有効な手が打てないことが、ご自身の生活を脅かすかもしれませんし、子ども世帯の負担に繋がる可能性もあります。



2.   相続時精算課税制度の活用事例

争族を回避するための手段はいくつかあります。そのなかでここでは、相続時精算課税制度の活用事例を紹介します。

相続時精算課税制度とは


まずは相続時精算課税制度の概要を確認しましょう。

相続時精算課税制度とは、生前贈与のひとつの方法です。60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与において利用できる制度で、生前の贈与によって相続時の争いを回避しやすくなります。

次のような特徴があります。

 

【相続時精算課税制度の特徴】

  • 2,500万円の特別控除がある

同一の父母または祖父母からの贈与において、限度額(2,500万円)に達するまで何回でも控除可能です。2,500万円を超えた財産に対しては、一律20%の贈与税がかかります。

 

  • 相続時に贈与財産を含めて清算

相続時には贈与財産とその他の相続財産を合わせて相続税額を算出。贈与時に納付した贈与税より多額になった場合は、差額を納税します。贈与額より少額になった場合は、還付が受けることが可能です。

 

  • 110万円の基礎控除も可能

2024年1月より、年110万円の基礎控除も適用可能となりました。

参考 No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

 

相続時精算課税制度の活用事例


相続時精算課税制度の不動産への活用事例を2つご紹介します。

どちらも子どもの1人に不動産を贈与する事例です。ほかの兄弟姉妹がいる場合は配慮が必要ですが、不動産の所有者を明確化したい場合には有効な選択肢です。


●自宅を同居の子どもに贈与するケース

兄弟がいる場合に、同居の子どもに自宅を生前贈与します。

小規模宅地等の特例(※)は使えなくなりますが、相続税が基礎控除の範囲内に収まる見込みであれば、検討の余地があります。

※宅地等の相続税評価額を最大80%削減できる制度

 

●賃貸物件の収益性を回復させるケース

被相続人が賃貸物件をリフォームして競争力を回復したうえで、建物を子どもに生前贈与します。

保有資産を減らすことで相続税の負担を軽減しつつ、競争力のある収益物件を特定の子ども(受贈者)に譲り渡すことが可能になります。
また兄弟がいる場合にもメリットがあります。というのも受贈者である相続人はその後、家賃収入を受け取ることができるので、相続時の代償分割(※)費用を積み立てる(≒準備する)こともできるだからです。

 

1人の相続人が現物財産を取得し、ほかの相続人には代償金を支払うことによって清算する遺産分割の方法



3.争族回避の準備 円満の5ヶ条

争族回避とは、相続税を節税することや、相続税対策ができていることではなく、家族の全員が資産の行く末に納得することです。そのためには、「どのような対策を行うか」の前に考えておくべき、「円満の5ヶ条」を紹介します。

 

1.    譲る側の家族の未来を見据えた計画


譲る側、つまりご自身と配偶者の未来をしっかりと考えます。相続というと、子や孫に引き継ぐことを重視しがちですが、ご自身と配偶者が安心して老後を過ごせることが相続の大前提です。

 

将来的にはご自身の体力・判断力が低下するリスクもあります。そういった場合に備えて身上監護の対策も視野に入れて、今後も自立した生活が送れるようにするといいでしょう。

 

2.    生前の同意こそ もめない基本


被相続人本がどうしたいのかを明確にしたうえで、家族間で方向性の合意を得ます。元気なうちから相続の話を出すのは憚られるかもしれませんが、元気だからこそ客観的かつ建設的に相続のことを話し合えることでしょう。

同意を得るためには公平性が重要ですが、特に不満の種になりやすいのが「介護の負担」です。老後のフォローを任せる家族には、心配りが必要です。
「感謝」の気持ちを遺産配分で表すのがフェアといえます。被相続人が積極的に意思表明し、合意の道筋をつくっていきましょう。

 

3.    共有は「争族」のもと、回避すべし


保有資産が分割しにくい不動産の場合、共有名義とすることも可能です。共有は、一見すると平等と感じるかもしれません。しかし、不動産を共有名義とすると、その後の不動産活用に支障が出る可能性が高まります。
建て替え・住み替え・売却...などの活用法があったとしても、共有者間で意見が割れると実行に着手できないからです。

共有名義のまま相続人が亡くなれば、その子どもたちへと共有分が引き継がれるため、共有名義人がさらに増える懸念があります。共有以外の方法を模索していきましょう。

 

4.    「点」から「線」の資産承継

現時点ではベストの争族対策や合意も、今後の変化によって有効な手だてではなくなる可能性があります。例えばご自身の健康状態の悪化や、相続人の家庭環境の変化などが考えられます。

 

そのため、現時点でベストの選択肢を探すのではなく、将来に向かう「線」をイメージした対策をおすすめします。具体的には、変化に対応できるように複数の選択肢を想定しながら対策と合意を実行していくといいでしょう。

確定していない未来を考える際の指針となるのは、資産を誰のために使うのか(遺すのか)の優先順位です。

次のように、ご自身の生活から順に優先順位を考えるといいでしょう。

 

1.被相続人ご夫婦の生活
2.被相続人の配偶者の生活
3.次世代の生活

 

5. 「できること」からすぐ始めよう


最後のポイントは、行動することです。
どんなに素晴らしい理念や計画があっても、行動しなければ意味がありません。最初から上述したポイントを押さえて争族対策をしていくのは難しいでしょうが、何かひとつはできることがあるはずです。

できることからコツコツと積み重ねて、円満な相続に近づいていきましょう。

4.まとめ

相続開始後に対策を行うことはできません。

争族を回避するためには、生前に話し合い対策を施すことが必要です。

その際の軸となるのはご本人と相続人双方の未来を見通すこと。そして公平性と家族間の合意です。しかし、実務的には相続に関する知識が必要です。民法の改正、贈与税、相続税など改正事項も多いですので、最新情報に基づいた意思決定が求められます。専門家に頼ることも視野に入れて、争族対策を行ってください。

最も正確な情報を有しているのは税理士でしょう。土地・不動産をお持ちの方は、争族対策として不動産会社への相談を検討している方が多いと思います。
その際は、不動産会社が税理士と提携しているか、改正情報を定期的に取得できるかを確認しておくことをおすすめします。

 

次回は、本テーマ「争族の相談事例と準備のポイント」を踏まえてテーマ2「争族回避の対策例とポイント」をお届けします。



<執筆者プロフィール>

【ライフプラン応援事務所 代表 横山晴美】

マイアドバイザー®

FP資格や持ち前の好奇心を生かし、マネー・IT関連に強いライターとして2013年からWEB記事の執筆・編集に携わる。「分かりやすく」「誰のための記事なのか」を見極めることで、精度の高い記事を作成。需要に応じた記事を短期間で書く技術で、年間100本以上の記事に関わる。数々の失敗をもとに「稼げるライター業」のサポートも提供

 

【保有資格】

AFP


<監修者プロフィール>

株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®/マイアドバイザー®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。


【保有資格】
・CFP®・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)