【アセトラ】30年間で実施する標準的な修繕項目と金額、リフォーム工事の傾向と留意点
最終更新日: 2023.12.22
賃貸経営は長期に渡るのが基本のため、先々を見据えて動くことが重要になります。
先々を見据えることは難しいものの、幸いにも賃貸経営の場合は、おおよその先々で必要な時期や金額を予測することが可能です。
特に修繕については必要性を感じてからでは、資金不足などにより対応しきれない可能性が出てきますから、長期安定経営のため早くから先々を予測しておきましょう。
今回は、賃貸経営30年間で実施する標準的な修繕について、そしてリフォーム工事の基本についてお伝えします。
ぜひ最後までお読み頂き、皆さんの参考にして頂けますと幸いです。
■この記事のポイント
・安定した賃貸経営を継続するためには、修繕とリフォームが必須
・修繕とリフォームなどメンテナンスを意識して、常に費用を準備し続けることが大事
・必要性も資金面もまとめて相談できる、頼れる不動産業者を探そう
1. 安定した賃貸経営を継続するための押さえるべきポイント
賃貸経営は何10年もの長期に渡るのが基本です。このため「建物や設備などの経年劣化」が避けられませんから、「修繕(取替えなども)」が欠かせなくなります。
直接的&偶発的な破損や故障がなくても、見た目が老朽化しているだけでも入居者が集まりにくくなることから、内装・外装問わず対応に迫られることも多くなります。
また、何10年もの長期に渡るからこそ、その間の「需要の変化」にも注意が必要になります。
たとえば、世帯割合から考えると1980年頃は夫婦と子供というファミリー世帯がもっとも多かったものの、今や単身世帯が一番多い状況です。
また、昔と違ってエアコンやウォシュレットなど健康や衛生面を考慮した設備がほぼ標準設備となっています。また、防犯カメラや宅配ボックス、無料インターネットなどを備えている物件も増えています。
さらに、賃貸物件数も膨大になり、それらを自宅にいながらインターネットで簡単に比較検討できる時代です。そのため、周辺物件と比べて少しでも条件が劣っていると感じられるだけで、選択肢から簡単に外されてしまいます。
ですから、近隣の物件との競争力維持という観点からもメンテナンスが重要になります。
安定した賃貸経営を継続するためには、「安定した入居」が必須です。
そして、そのためには劣化した箇所の修繕を基本としつつ、需要の変化や近隣物件との差別化を意識した改良が常に欠かせないといえます。
簡単なことではありませんが、安定した賃貸経営を継続するためには必要不可欠です。
30年間で実施する標準的な修繕項目と金額をご紹介
安定した賃貸経営を継続するための、もっとも基本的な要素は修繕です。この修繕については、国土交通省において、一つの指標となる「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」が作成されています。
これによると、10戸の木造アパートの場合、今後30年間で実施する標準的な修繕項目と金額は以下の通りです(詳細はガイドブックをご確認ください)。
ただし、このガイドブックは平成30年頃に作成されており、当時と比べると現在では、コストの高騰や工事の効率化など、相応の違いも出てきています。あくまで一つのイメージとしてご覧ください。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(事例編)」
一戸あたり30年で216万円であれば、おおよそ一年あたりなら216万円÷30年で7.2万円、1ヶ月あたりなら6,000円を貯金などで準備し続ければ十分に賄えることになります。
また、同じく国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(事例編)」には一例として、以下のような長期修繕計画の見本も掲載されています。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(事例編)」
このように今後のことを金額とともに一覧表にしておけば、先ほどと同じく毎月の必要貯金額も把握でき、安心して賃貸経営ができるようになります。
仮に先々でお金が足りない可能性が出てきても、早期に把握すれば、それだけ他の手段での準備も簡単になるはずです。
あくまで計画は予測に基づくものであり、実際にこのようになるとは限りません。しかし、経年劣化は確実に起こりますし、一定周期毎に修繕が必要になるのは確かです。少なくとも、何も準備をしていない状態と比べれば、はるかにスムーズに修繕を行えるようになります。
近年でも数年前まで想像もできなかったような急激な物価上昇が起こっています。未来は常に変化します。ですから、修繕計画も一度作れば大丈夫ではなく、常に作り直し続けることが大切です。
そして、余力が大きくなる場合はともかく、不足が大きくなりそうな場合は、分かった段階から対策を練り、行動していきましょう。
計画修繕の重要性について
先ほどの民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブックには、修繕をしない場合のイメージを以下のように示しています。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
修繕をしなければ、経年劣化によって外観や設備などが劣化してきます。
それを放置すれば、自然と入居希望者に避けられ、空室が発生しやすくなるでしょう。そうなれば、それだけ家賃が入ってこなくなり、修繕費の確保が困難になります。
すると一層、劣化部分を放置することになり、一層の老朽化を招き、さらに入居希望者に避けられることに繋がります。
この循環の先に待ち受けている未来は...残念ですが「賃貸経営からの撤退」でしょう。
逆に修繕をすれば、以下のような好循環が生まれるとも示されています。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
安定した賃貸経営を継続するためには修繕などメンテナンスは欠かせないものです。
賃貸経営を始める際には、しっかり修繕のことも織り込んだ経営計画を立てましょう。
2. リフォーム工事の傾向と留意点をご紹介
経年劣化に対応するのが修繕ですが、需要の変化や近隣同種物件との競争力確保には「リフォーム」が必要になります(大規模修繕の一環でリフォームすることもあります)。
どのようなリフォームが必要かは立地や事情によりますが、一例として、近年は以下のようなリフォームが好まれる傾向です。
在宅勤務対応
新型コロナウィルスで急速に広がった「テレワーク」に対応するためのリフォームです。主に、部屋の一部をテレワークに特化したスペース&設備にします。コロナ全盛期と比べれば実施率は大きく下がりましたが、2~3割の企業にはテレワークが根付いている状況です。
耐震補強
近年は毎年のように大規模な自然災害が起こっていますが、中でも関心が高いのが、特に被害が大きくなりやすい「地震」です。また備蓄倉庫や蓄電池などを備えた「防災賃貸住宅」も人気が高くなっています。
高耐久資材の活用(ランニングコスト抑制)
一般的な塗装の耐久性は20年程度とされていますが、最近では30年程度も長持ちする資材が登場しています。
長持ちしやすい資材を使えば、それだけ修繕の頻度を下げられ、ひいてはランニングコストの抑制に繋げることが可能です。
その他
株式会社リクルートの2022年度「賃貸契約者動向調査(首都圏)」によると、最近では他に「ZEH賃貸住宅(省エネ賃貸住宅)」や「ペットオーナー向け賃貸住宅」も注目度が高まってきています。十分に周辺を市場調査して、最適と思えるリフォームをしていきましょう。
2.リフォーム工事の留意点について
修繕に付随するものを除いて、リフォームは修繕と比べて必要な時期や金額(内容)が不明瞭です。基本的に「集客率が悪くなってきたら」必要であり、それは一定周期毎に訪れますが、それがいつ頃かは修繕と比べると読みにくいといえます。
しかし、将来的には確実に必要になってくるでしょう。ですから、修繕と同じく、先々のリフォームについても、相応の金額を準備し続けることが大切になります。
足りない分についてはリフォームローンなども使えますが、ローンは使う分だけ金利が必要です。また、世の中の流れに順応できれば、補助金の対象になる可能性もあります。
実際には、リフォームが必要なのか、リフォームしたほうが良いのかが分からない場合もよくあります。
実績豊富な不動産業者なら、都度リフォームの必要性について診断しつつ、資金面の相談にも乗ってくれますから、ぜひ頼りにしましょう。
3. まとめ
安定した賃貸経営を継続するためには、定期的な修繕とともに、実需に沿った供給と近隣同種物件との競争力が欠かせません。
そしてそのためには先々を予測して、修繕やリフォームに必要なお金を常に準備し続けることが大切です。
修繕もリフォームも、資金のことも含めて不動産業者に相談することができます。まずは信頼できて頼れる不動産業者を探し出し、一緒になって末永く賃貸経営を続けていきましょう。
<執筆者プロフィール>
マイアドバイザー®
商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て、2008年8月8日に開業。
現在は日本初の「婚活FP」として、恋愛・婚活・結婚・離婚×お金をメインテーマに活動中。婚活中の方や新婚夫婦、または独身を貫きたい方など、比較的若い方向けのご相談や執筆、講演を行っています。趣味は漫画(約6,000冊所有)。
【保有資格】
・CFP®(婚活FP)
<監修者プロフィール>
株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘
マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®/マイアドバイザー®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】
・CFP®・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)
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