戦略インタビュー

戦略インタビュー

1.2019年3月期の総括 2.当社グループを取りまく市場環境 3.大東建託グループの強み 4.新5ヵ年計画策定に至った思い 5.生活総合支援企業を目指す 6.次世代育成について 7.2020年3月期の展望 8.今後の意気込み

1.2019年3月期の実績

2019年3月期の、グループ全体の総括をお願いします。

まず、当社を取り巻く経済環境・事業環境について振り返ります。国内経済は、引き続き企業収益や雇用環境の改善が続く中、個人消費の持ち直しや設備投資の増加により、景気が緩やかな回復基調で推移しました。一方で国際経済を見ると、米中通商問題の動向や中国経済の成長鈍化、欧州経済の減速など、海外の政治および経済動向に関する不確実性の高まりから、依然として先行き不透明な状況が続いています。
住宅業界においては、2018年4月~2019年3月の累計住宅着工戸数が95万2,936戸(前期比0.7%増)となったのに対し、当社グループが主力とする賃貸住宅分野に関しては、貸家着工戸数が前期比4.9%減の39万93戸となりました。貸家着工戸数は2018年9月~2019年3月にかけて7ヵ月連続の減少となり、賃貸住宅市場全体は一時的な好況から、適正化に向けた安定成長期に移行していると考えています。
次に、当社グループの2019年3月期について振り返りたいと思います。全体としては、売上高1兆5,911億78百万円(前期比2.2%増)、営業利益1,270億47百万円(前期比0.5%増)、経常利益1,322億40百万円(前期比0.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益899億30百万円(前期比2.4%増)と、連結で11期連続の増収増益を達成することができました。しかしながら、事業ごとの結果を見てみますと、この結果を手放しで喜べる状況ではありません。
まず建設事業ですが、完成工事高6,097億78百万円( 前期比2.8%減)、営業利益957億23百万円( 前期比12.3%減)と、売上・利益ともに前年割れをしています。当社グループの事業構造を見た時、建設事業の売上高は全体の約38.3%、営業利益に至っては全体の約75.3%を占めており、当社グループ成長の要といっても過言ではありません。そのような事業構造の中、建設事業の売上・利益低下は、当社グループの成長力の鈍化であると言われても致し方無いと言わざるを得ません。昨年の統合報告書において、前社長の熊切が説明しました「建築事業の立て直し」という課題はさらに重要性を増し、2020年3月期まで持ち越されたということになります。
一方で不動産事業に関しては、家賃ベースでの居住用入居率が97.4%と、空いている部屋が極めて少ないと言える効率の良い入居者斡旋ができました。2019年3月期においては、事業評価の新たな基準として「RevPAR※1」の概念を取り入れたことで、入居率確保のために家賃を下げるのではなく、稼働率を上げつつ平均家賃を上げることにも成功し、前期の増収増益に大きく貢献したと考えています。これを継続することができれば、仮に築年数や周辺環境が変化し、地域の家賃相場が下落しても、「大東建託は家賃を上げる努力をしてくれる。大東建託にお願いして良かった」と、オーナー様から信頼していただける結果にもつながると確信していますので、入居者様の視点も考慮しながら、引き続き注力していきます。
その他事業に関しては、ガスパルグループのLPガス供給戸数の増加や、ケアパートナーが提供する高齢者向けデイサービス施設の利用者数増加などにより、概ね計画通り推移しました。しかしながら、その他事業については、建設・不動産事業とのシナジーを活かしたサービスが多いため、現状の事業構造下では、建設事業の立て直しがない限り、その他事業も大きく成長はできないと認識しています。
※1 Revenue Per Available Roomの略。募集家賃×日数稼働率で算出する指標。

10期連続の増収・増益、9期連続の増配を達成

2.当社グループを取りまく市場環境

大東建託グループを取り巻く市場環境について、株主・投資家のみなさまが特に気にされているトピックスとは何だとお考えですか。

昨今、特に株主様、投資家様、アナリストのみなさまより、アパートローンにおける融資基準の厳格化ついてご質問を多くいただいています。当社グループ事業で取り扱っている商品は大変高額ですので、国の金融政策に左右される部分も大きいですし、無視できない変化であると認識しています。
これまでも、バブル期の総量規制や金融機関再編の際など、融資環境が厳しくなったことは度々ありました。ただし今回に関しては、すべての不動産融資、アパートローンについて融資基準が厳しくなっているというよりは、特に土地購入からアパート事業を始めるサラリーマンオーナー様向けの融資が厳しくなっていると思います。加えてここ数年、賃貸住宅市場全体の好況やゼロ金利政策を背景として、アパートローンを積極的に取り扱う金融機関が増えていましたので、市場自体の落ち着きと監督官庁による働きかけをきっかけとして、再び融資に対する適正化が始まったのだと考えています。
融資基準の変更を理由としたキャンセルもありましたので、事業に対する影響は小さくはありませんが、今後もある程度の期間はこの厳しい状況が続くものと考えています。しかしながら、金融機関がアパートローンを全く取り扱わないという話ではありませんし、融資基準が変更になったのであれば、その条件に合わせた事業内容に適切に対応していくことが大切であると考えています。当社グループとしては、引き続き金融機関との情報交換やグリップ強化に注力し、当社グループの事業内容や事業の安定性を理解していただいた上で、安心して融資をしていただけるよう、変化する融資環境に対応していきたいと考えています。

3.大東建託グループの強み

サブリース業界へのネガティブ報道によって、オーナー様、入居者様をはじめとしたステークホルダーのみなさまは不安を感じていることかと思います。みなさまが安心できる、大東建託グループの強みとは何でしょうか。

まず、オーナー様に対しては、当社グループの入居率の高さが、安心・安全・安定経営を示すひとつ大きな指標であると考えています。先にもお話しした通り、2019年3月期の家賃ベースでの居住用入居率は97.4%( 前期比0.2p増)と高水準で推移しており、今後もこの水準を堅持していきたいと考えています。また、建築請負契約におけるリピート率の高さも強みとして挙げられると思います。このような事業環境にあっても、年間建築請負契約の内67.5%が当社グループと既にご契約をいただいているオーナー様からの再契約というのは、当社グループにとって一番の信頼の証だと考えています。ただし、新規のお客様からどれだけご契約をいただいているかが、営業活動を行う当社グループの継続した成長・活性度合いを測るひとつの指標でもありますので、引き続き新規のお客様との契約獲得にも注力していきます。
また入居者様に対しては、他の賃貸住宅にはない設備仕様やサービスの提供についてお伝えしたいと思います。例えば、建物に関して、賃貸でありながら壁や間取りをご自身のライフスタイルに合わせてアレンジできる仕様にしたり、またサービスで言えば、退去時に必要なクリーニング費を前もって定額でいただく「定額クリーニング費」プランを提供したりと、賃貸住宅専業で培ってきたからこその商品・サービスを提供できていると考えています。今後は高齢の方や外国の方など、入居される方の多様化が進んでいきますので、サービスの間口を積極的に広げていこうと考えています。

4.新5ヵ年計画策定に至った思い

新5ヵ年計画を策定するに至った、小林社長の思いをお聞かせください。

新しく社長に就任したということ、また、就任のタイミングで元号が新しくなるということがありましたので、今までの中期経営計画の数字をそのまま置き換えて伸ばす、ということではなく、自分なりに社長として、これからの5ヵ年で取り組んでいくべき方向性を示したいと思い、新5ヵ年計画の策定に至りました。
世の中にはさまざまな経営スタイルがあると思います。当社グループも現業を変わらず継続することで、確固たる利益を確保し、横ばい、あるいは数%の成長を継続するという計画を描くこともできます。しかし当社グループでは、オーナー様に対し35年の長期にわたる安定経営をお約束しています。人口・世帯が中長期的な減少トレンドにある中で、現在の規模での新規供給ができなくなれば、建築の受注が減り、管理戸数も減りと、これまで各事業でバランス良く行ってきた事業モデルが崩れてしまい、企業としての成長はもとより、維持すら難しくなってしまうのではないかと考えました。ですから、社長に就任するにあたり、まず抱いたのは「ステークホルダーのみなさまが夢や将来を託すことができて、その中で継続した成長ができる企業を目指したい」という強い思いでした。新5ヵ年計画も数値目標が先にあったわけではなく、継続して成長したいという思いが先にあり、現在の賃貸事業だけでどこまで成長ができるだろうかと考え続けた結果として、「総合賃貸業を核とした地域密着型生活総合支援企業」を目指す今の計画になりました。

5.生活総合支援企業を目指す

「生活総合支援企業を目指す」と宣言するに至った経緯を教えてください。

生活総合支援企業というのは、当社グループが目指すべき、広げていくべき事業領域を表していて、新5ヵ年計画とは、そこへ向かう道筋を示したものだと考えています。これまでの事業と切り離して、突拍子もなく出てきた考え方ということではありません。先にご説明した通り、当社グループの事業構造は、現コア事業である賃貸住宅事業(建設・不動産事業)を核にしています。生活総合支援企業を目指すプロセスについても、やはりまず、現コア事業を強化し、健全に運営していくことが不可欠であると考えています。
また、当社グループはこれまでも、エネルギー、介護・保育、国内外不動産投資を「新コア事業」と位置づけ強化してきました。賃貸住宅市場自体の大きな拡大が見込めないという考えがある中で、成長戦略を描くとなると、新規分野も含め、どの分野にどのようにトライをして、どの分野をどれくらい伸ばすのかという目標をきちんと明示し、成長プロセスを表現しなければという思いがあり、それが新5ヵ年計画の骨子となりました。
そのように順を追って戦略を組み立てていく中で、当社グループの持つ資産やノウハウを、賃貸の「住宅」だけではなく、商業施設、ホテル、病院など、住宅ではない賃貸の分野や当社グループがまだ進出できていない領域に活かすことができれば、当社グループはまだまだ成長できるだろうという考えに至りました。多角的な賃貸事業への進出は、当社グループの成長だけではなく、当社グループの管理建物に住まう入居者様への地域サービスの拡充にもつながります。加えて、当社の入居者斡旋件数は32万3,124件(2019年3月期)、賃貸住宅管理戸数は108万6,927戸(2019年3月末時点)に上ります。その入居者様に向けて提供している、あるいは、これから提供するサービス・支援を、地域の方々へも広げることができれば、自然と地域密着型の生活総合支援企業へと事業領域を拡大できると考えています。

6.次世代育成について

従業員に対しての思い、また次世代育成についての考えをお聞かせください。

事業を拡大していくだけでは「ステークホルダーのみなさまから夢や将来を託される」企業になることはできないと考えています。新5ヵ年計画では、財務以外の数値についても定量目標を設定・開示し、ステークホルダーのみなさまにお約束をすることで、確実な目標達成を目指しています。そのためには、まず、従業員自身が当社グループを誇れるようになれなければ、社外の皆さまから託される企業にはなれないと考えています。2019年3月期も、男性従業員の育児休暇取得義務化や配偶者転勤休業制度など、従業員サポート体制を拡充させました。引き続き女性活躍や障がい者雇用にとどまらないダイバーシティの促進や、働き方改革、ワーク・ライフ・バランス支援などに積極的に取り組み、従業員が活力にあふれ、いきいきと働くことができる企業を目指します。
また、経営幹部の次世代育成についてですが、これは当社グループの継続した課題であると認識しています。育成はもちろん、候補者をどう選び、どう経験を積ませるかという点を、仕組みとして組み立てる必要があると考えています。当社グループには1万7,646人(2019年3月末時点)の従業員がおり、経営幹部としてこれからの経営を担っていく素晴らしい人材を見出し、育成していくということを、管理職候補者研修や支店長・マネジメント候補者研修、経営幹部候補者研修など、座学と現場実践を織り交ぜた研修を通して実施しています。例えばそうした研修機会に、役員面談や役員を交えたディスカッションを組み込み、経営層が候補者の人となりや考え方を確認し、経営の思いを伝える事も大切な育成であると考えています。特に当社グループは、昔から派閥や学閥がないことが特長の会社です。だからこそ1万7,000人を超える従業員の中から次世代経営幹部候補者を見つけることは、現経営層の重大な責務です。
また、新たに役員を選出するとなると、ガバナンス委員会での社外取締役や社外監査役のみなさんに、候補者のバックグラウンドを理解していただくことが必要になります。ほとんど情報がない状況で判断するというのは、正しい選任ができないことはもとより、ガバナンス委員会が機能していないということになりますので、社外取締役と役員候補者がコミュニケーションを取れる機会を今以上に設ける、あるいは候補者を取締役会に積極的に参加させるなど、人物像をある程度掴めた上でガバナンス委員会での審議・判断が行えるような仕組みを整備していきたいと考えています。

7.2020年3月期の展望

新5ヵ年達成に向けた2020年3月期のコア事業における取組みをお聞かせください。

当社グループの賃貸住宅の国内ストックシェアは現在6%程度です。例えば、毎年6万戸の新規供給を続けたとしても、国内の賃貸住宅着工戸数が年間39万戸だとすると、ストックシェアは毎年0.3%程度しかアップしません。ですから、現在のビジネスモデルを続け、ストックシェアを10%まで引き上げるには、十数年かかるという計算になります。裏を返せば、賃貸住宅業界には当社グループ以外で構成された市場が94%も残っており、この市場を当社グループのシェアに変えていくことが、今後の拡大につながると考えています。
そこで、ストックシェアアップへの施策として2019年4月より、他社で建設・管理をされている建物の建替需要への対応を主力とする「企画営業課」、および、商業施設や事業用建物の提案を主力とする「特建営業課」を建築営業組織に新設しました。また、賃貸住宅に特化をしたリフォーム事業の試行も始めました。新5ヵ年計画達成の第一歩としても重要な方策であると大いに期待をしています。また前年度に引き続き、コア事業拡大のための首都圏強化が継続課題となっていますので、企画・設計・施工力の強化を図るための他事業者との業務提携やM&Aの検討も進めていきます。
不動産事業に関しましては、当社グループが管理している建物だけではなく、他社で建設・管理している建物の入居者斡旋や管理にも注力することで、収益向上と賃貸市場シェアの拡大を目指します。また、2017年5月に3社体制に移行してから、リーシングコストを年々削減することに成功していますので、IT技術の活用や広告宣伝の効率化により、引き続きコストの削減と利益率向上を図っていきます。

8.今後の意気込み

最後に、今後の意気込みについてお聞かせください。

社長への就任が決まって以来、社内外のみなさまから、昨今の賃貸業界や周辺業界の動向から「大変な時期に社長に就任しますね」と言われますが、本当に心強いエールをいただいていると思っています。また、決して順風とは言えない事業環境・社会変化の中での新5ヵ年計画は、ハードルの高い挑戦的な計画とのお言葉も多くいただいています。昨今の短期的な大変さはもとより、今後越えなければいけない社会の変化は、とても厚く高い壁であると考えていますが、当社グループにとって、こうした状況は『ピンチこそが変化のための機会であり、成長のためのチャンスである』と強く認識しています。私自身は、平成から令和へと時代が変わり、新しい時代の足音が聞こえてくるこの時期、この時代に当社の社長を拝命したことは、この上ない幸運であると捉えています。
守るべきは守り、変えるべきは変える。情熱を持って挑戦し、勇気を持って変革していく。平成の30年で大きく成長した当社のこれからの新しい30年に、是非ご期待ください。(2019年5月16日インタビュー実施)

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