大東建託グループのデジタルトランスフォーメーション促進に向けた取り組み

『社内DXプラットフォーム』の構築についてご紹介!~ 統合データ基盤・データ分析基盤編 ~

技術・サービス

近年、デジタルトランスフォーメーションの進展によってデジタル技術の導入が進み、企業が保有するデータ量が増加していることから、データの利活用が重要視されています。データの利活用は、企業の競争力を維持し、成長を促進するために不可欠な要素です。
しかしながら、多くの企業では、データ分析のスキルを持った人材の不足や、データを利活用するための基盤が整備されていないなどの課題があります。
また、総務省の業界別データ活用の調査によれば、建設業界は他の業界よりもデータ活用が進んでおらず、データ分析の頻度も低いことが明らかになっています。

大東建託グループでは、デジタルトランスフォーメーションを促進するためのデータ利活用の活性化に向けて、社内DXプラットフォームの構築を開始しました。
社内DXプラットフォームとは、様々なデータを集中管理するための『統合データ基盤』と、収集されたデータを利活用するための『データ分析基盤』 、社員の手で必要な機能開発を行うことができる『市民開発基盤』の3つで構成されています。 IT部門のみならず、ビジネス部門や支店の社員が自らデータの利活用やシステム開発ができる環境を目指しています。

今回の記事では、『統合データ基盤』と『データ分析基盤』についてご紹介いたします。

社内DXプラットフォームの概要図 社内DXプラットフォームの概要図

「統合データ基盤」「データ分析基盤」構築の背景

当社グループは、賃貸建物の建設、賃貸仲介、建物管理、生活関連サービスなど、複数の事業で構成されています。各事業領域には固有の特性やオペレーションがあり、必要に応じてシステム化やデジタル化を内製中心で進めてきました。
このような事業別の開発により、現在は基幹システムを含む100以上のシステムが運用され、それぞれがデータを保有しています。さらに、Excelで作成されたデータや社外から取得したデータなど、多様な形式のデータが各事業領域で保管されています。
これらのデータの組み合わせによる集計や分析は主に人手で行われていることが多く、データの全体像を把握することが困難であることから、データの活用範囲は限定されている状況です。

これらの課題解決を目指し、様々な形式で分散されたデータを一元管理する統合データ基盤と、限定的であったデータの活用範囲を拡大し、人手によるデータ集計・分析作業を自動化・高度化するためのデータ分析基盤の構築を行い、さらなる事業成長に繋げていきたいと考えています。

「統合データ基盤」とは

『統合データ基盤』は、多様な形式で分散しているデータを一元管理するための基盤です。
システムで保有しているデータや、各事業領域で管理しているデータを統制の取れた一つの環境に統合することで、企業で保有するデータの全体像を把握することが可能となります。これにより、組織内のデータの重複や不整合を解消し、品質の担保につながります。
他にも、データ利活用に関するガバナンスの向上や、アクセス権限の制御によるセキュリティリスクの低減も期待できます。また、会社の重要な指標や会議資料に使用するデータは、データの有無や管理している事業部の確認から始めるため、多くの時間がかかっていますが、統合データ基盤を活用することで作業時間の削減につながります。
このような課題解決を目的として、統合データ基盤を構築します。

統合データ基盤は、データレイク、データウェアハウス、およびデータマートで構成されます。
データレイクは様々な形式やソースのデータを、そのままの状態で保管することが可能です。これには拡張性の高いAWSを採用しており、当社のデータ連携基盤を使用して分散されたデータを一つの場所で統合し、保管する予定です。

データウェアハウスは、データレイクから抽出したデータを一貫した形式に変換し、すぐに利用できる状態で格納します。

データマートは、用途や目的に応じてよく使用するデータを抽出し、利用しやすく加工した状態で格納します。これには、クラウド上で動作し、AWSと同じく拡張性が高くデータ処理・管理に優れているSnowflakeを採用しています。

このように、AWSとSnowflakeを組み合わせることで、スケーラビリティ、セキュリティ、パフォーマンスの向上が期待でき、より優れた統合データ基盤の構築を目指します。

統合データ基盤の概要図 統合データ基盤の概要図

「データ分析基盤」とは

『データ分析基盤』は、データ利活用におけるデータの収集、加工、集計を効率的に行うための基盤です。
ExcelやAccessを利用した人の手で行うデータの集計業務には多くの時間がかかっていますが、データ分析基盤を活用することで、データの収集から可視化までのプロセスが効率化され、時間とコストの削減が期待できます。削減された時間は分析や企画業務へシフトしていき、組織全体の潜在的な課題の発見による既存ビジネスモデルの見直しや、新しいビジネスチャンスの創出につなげていきたいと考えています。また、事業領域毎にデータを保有していることで、分析が可能な範囲が限定的となっていますが、統合データ基盤と連携をすることで、各領域を横断したデータを迅速に収集することができるようになり、より包括的な分析が可能となります。
これにより、営業戦略の効果や不動産市場の動向など、今までよりも深い理解が可能となり、データ駆動型の意思決定を支援します。このような課題解決を目的として、データ分析基盤を構築します。

他にも、データ利活用を促進する取組みの一環として、データ分析ができる社員の育成にも力を入れています。
当社グループでは、2022年度よりDX人材育成研修を開始しており、その中のカリキュラムである『上級ワークショップ』にて、実データを活用した分析から、新たな課題を発見する研修を実施しています。今年度は昨年度よりも、さらに受講枠を拡大し、データ分析ができる社員を育成していく予定です。

データ分析基盤の概要図 データ分析基盤の概要図

今後の展望

『統合データ基盤』と『データ分析基盤』の構築後は、これまでに説明してきた既存課題の解決に加え、ビジネスプロセスを変革するような活用方法にも挑戦をしていく予定です。

1)AIの活用
統合データ基盤とデータ分析基盤を活用し、高品質なデータを必要な形式に加工して学習をさせることで、AIモデルはより正確な予測が可能となります。また、AIの学習結果を集計し、可視化を行うことで、AIモデルの開発と評価を支援します。これにより、企業はAIの予測データを活用した、データ駆動型の戦略を展開し、市場競争力を強化することができます。

当社グループでは、以下のようなAIの活用を検討しています。

  • コンサルタントセールスのAIを活用した育成
    コンサルタントセールスのロールプレイングの相手となるAIを作成予定です。これまで新人教育等で蓄積してきたデータを活用して、AIが最適なアプローチやコミュニケーション方法を学習し、ロールプレイングを通してコンサルタントを育成します。コンサルタントの質問から、お客様の回答をAIが予測し、契約に繋げる会話練習を行います。このように、新人コンサルタントが現場でより効果的な営業活動を行うために、データとAIを活用した支援を行います。

  • 賃貸シミュレーション
    当社の賃貸管理のデータと、他社の賃貸データを統合して加工し、AIに学習させることで、家賃を引き上げた場合と、据え置いた場合の空室期間を予測し、収益差を評価します。このように、AIを活用した予測分析から、最適な家賃設定を割り出し、客観的な経営判断の支援を行います。

2)社外のデータ活用
気象情報や人流データなど、社外から取得したデータを統合データ基盤で一元化し、社内のデータと組み合わせて活用することで、今までにない発見ができると考えています。
たとえば、社内の営業活動データに加えて、人流データや気象データを組み合わせることにより、これまでにない視点で営業戦略の最適化や営業手法の改善が可能ではないかと考えています。
3)他社とデータを共有した協業
他社が保有するデータを統合データ基盤で一元化し、データ共有の環境を整えることで、データを利活用した協業プロジェクトを迅速かつ効果的に展開することが可能となります。情報の幅が広がることで、新たな角度から分析や予測をすることが可能になり、市場動向や顧客ニーズに関する洞察が深まることで、より実現性の高い戦略が生まれます。
これが、新たな価値創造の機会や新サービス・新商品の開発といった協業事業に繋がると考えています。

まとめ

大東建託グループは、皆さまの「くらし」そのものを支えることのできる企業へと成長・変革することを目指しています。また、急速に変化していく社会環境や市場環境にも適応していく必要があると考えています。

今回ご紹介した『統合データ基盤』と『データ分析基盤』の構築は、このあるべき姿を実現するための重要な取り組みの一つです。私たちは、データに基づく客観的な分析を通して課題の特定と評価を行い、迅速な意思決定と実行で、ビジネス変革を進めていきたいと考えています。

建設業界全体では、データ利活用を含むデジタルトランスフォーメーションがなかなか進んでいません。今回の取り組みを成功させ、データ活用の事例を積極的に発信していくことで、業界全体のさらなる発展に貢献していきます。

大東建託グループのDX戦略について

大東建託グループでは、デジタルトランスフォーメーションの強化すべき領域と、進むべき方向性として「DX戦略」 を定めており、「DX戦略」は「3つの柱」とそれを支える「基盤」で構成しています。今回ご紹介した『統合データ基盤』と『データ分析基盤』の導入は、これらを実現するための取り組みの一環です。

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