気候変動による水害被害、リアリティを感じる身近な課題として【在宅避難・水害にフォーカスした住まい】(STEP1 PROJECT NOTE 参照)をテーマに大東建託と、建築家の稲垣氏@エウレカ、防災アドバイザーの永田氏@プラス・アーツの防災配慮型賃貸(以下、ぼくラボ賃貸)プロジェクトが始動しました。
今までの経験だと1階のスイッチ高さまでの床上浸水被害が多く、次の日には水が引いて、掃除をすれば生活できるように見えるのですが‥
(STEP1 PROJECT NOTE 参照)
実際の木造の建物では、床下や壁をはがして掃除をしないと建物が傷むだけでなく、衛生的にも良くないんです。
一旦退去して、乾燥させ、改修、点検した上で、やっと生活ができるんですね。掃除や改修などで生活の場が離れるので、今までの地域とのコミュニケーションも薄れてしまいます。
掃除は、仕方ないですけど・・
改修、点検が簡易で、直ぐに生活できる住まいだと良いですね。災害時だからこそ地域の人との関わり合いも大事ですしね。
一階の浸水は避けられません。
被災リスクを考えて寝室をはじめ、家族の生活空間を2階以上として考えてみましょう。
1階を屋根付の駐車・駐輪場、趣味の部屋とすれば水害対応だけでなく、生活がより豊かになる付加価値としても感じられますね。
私たちエウレカは、このような生活を開く(住み開き)空間をアネックスと呼び、集合住宅を設計してきました。
様々な暮らし、地域とのつながりを誘発させるアネックスは防災にも配慮したフェーズフリーな賃貸住宅の鍵になると思います。
今回ご提案したコンセプトモデルは、
①水害へのレジリエンス ②賃貸事業性 ③地域コミュニティの醸成 ④公衆衛生 ⑤フェーズフリーという異なる5つのアプローチを計画にバランスよく組み込むことが大事だと考え、作成しました。
フェーズフリーな住まい=コンセプトモデルのエッセンスを盛り込み、事業として成立する"新しいカタチの住まい"。
社会課題や市場マーケティングを鑑みた持続可能な賃貸住宅を実現させたいと思います。
コンセプトモデル、フレームワークをブラッシュアップし、豊かな暮らしと防災の局面をなくすフェーズフリーな賃貸住宅を具体的なプランに落とし込みました。
より楽しく実現的な提案に対して、さまさまな意見や提案がなされました。
住宅内がより良い風環境を保てること、
換気性能に優れていることがレジリエンス住宅において重要であると考えます。
日常と災害時のフェーズ(局面)をもう少し細かくし、その局面で必要な機能とは何かを考えました。
コロナのような感染症対策や健康な住まい、災害発生時に命を守る住まい、長引く被災生活に備える住まい、それが無理なく備わっている、生活に浸みこんでいる住まいになればと思って計画しましたが、換気性能というのは正常時も被災生活においても大事ですね。
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1F~2F階段(RC造)
駐車場・駐輪場、アネックス
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外部空間・外部空間の取り込み
バルコニー
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温熱・空気環境
環境設計、環境資材
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備蓄倉庫
複数箇所収納
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2F室外機置場・1階天井電源
設備対応
コロナ禍により水害と地震が同時に起こる複合災害のリスクが叫ばれているので、在宅避難に配慮した機能は、住まいとして重要ですね。
コンセプトモデルにあったアネックスという考え方は開放感があり、良いなと思う反面、扉やガラスで開口しすぎると開口することで風や水が通り抜ける一方、建物の耐震性が劣ったり、台風などの強風に耐えられない建物になるのではないかが気になりました。
その二つのバランスはどのように解決しましたか?
過去のデータより浸水想定を地面から1.5mに設定し、1階をRCとしました。
浸水しても漂流物に対して強かったり、洗えばすぐ復旧できることを追求しています。
アネックスは床をタイル、壁は外断熱のRC打放し、電気や屋外機などは、災害時にも使えるように地盤面から1.5M以上の高さにも設置しています。耐震等級3※相当を満たすことを考慮したこともあり、
コンセプトモデルのような開放性は採用できませんでしたが、風や光が通り抜け、被災して浸入する水や泥が滞留しないよう工夫しています。
※耐震等級3
…水害だけでなく地震も配慮した防災対策
※耐震等級3
…水害だけでなく地震も配慮した防災対策
アネックスでは、日常は、趣味や在宅勤務など住まう方が自由に使えて、災害時は浸水しちゃうけど、早く生活に戻れる可能性があるということですね。
1階をアネックスと土間(屋根付き駐車場)とすることで電気自動車、キックボードなど新しく多様なモビリティーが広がる生活様式を柔軟に受け入れられる住まいともいえます。
在宅避難時や復旧工事の間も退去せず、家での暮らしを維持できるように考えたいです。
バルコニーを標準仕様よりも少し広くすることで、日常時は、キャンプグッズを広げ、アウトドアライフを楽しむこともできます。災害時は、ドローンによる支援物資の受け取りや、上空からのヘリコプター救助を想定できます。
室内環境は、コロナ禍の暮らしや、自宅で過ごす被災等の生活を想像すると、換気もより重要になってきます。風環境シミュレーションをして、開閉窓の位置や、室内の換気など検討してみましょう。
水害時の浸水を考慮し居住空間は2階以上に集約。日常時には1階をアネックス(別館・付属部屋)として
趣味の部屋などに使用、1階ピロティを地域に開かれた場所として使用することで
地域コミュニティが醸成され、災害時の共助に繋がります。
また、室内の延長としてルーフバルコニーなどの半屋外空間を設けることで
風環境シミュレーションを考慮した設計が実現しました。
現状のプランだと風が滞留してしまっています。
1階から3階のルーフバルコニーまで階段室を風の通り道として利用しましょう。1階から3階へ上昇する風の道を考慮した階段形状への変更、効率的に風を取り込む窓の位置への調整が必要です。
階段の蹴込をなくし、風が通るようにすることはできると思います。
戸建てではないので、妻側に窓を設けられない住戸も出てきます。室内窓や北側に風を抜く方法を考えてみましょう。
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- そうですね。現在の自然と触れるアウトドアへの関心の高さよりは、日常の暮らしにも変化をもたらしていると考えています。
また、外構は重要で、この防災対策住宅の可能性を地域との関係の中で発展させるポイントだと考えます。さらに皆さんと一緒に考えていきたいです。
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- この建物は、内部のような外部のような空間がとても多くあり、換気や風の通り道まで計画に盛り込まれています。“防災はアウトドア”という裏のテーマも考えていて、
地域コミュニケーションの醸成に繋がる仕組みも検討していきたいです。
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- ぼ・く・ラボでは、賃貸住宅にお住まいの方の「地域とのつながり不足による孤立」は、可視化されにくい大きな課題であるととらえています。
日常のちょっとした【挨拶】のつながりでも災害時にはとても重要になります。コミュニケーションも自然に生まれ、普段の生活を豊かにしている、楽しい【備えない防災】となる住まいや暮らしの仕掛けを考えていきたいです。
外構も合わせた空間が生み出すコミュニティや世界観は大切だと思います。その空間があることで生まれる活動や関係性もあるので外構の考え方もこれから深めていきたいですね。