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賃貸住宅の環境の未来を考える vol.2 今、出来る環境への取組

vol.1で述べてきたとおり、エネルギー消費量やCO2排出量の削減は住宅・建築物分野での重要な使命となっています。今回は、住宅・建築部門の施策や、環境に配慮した建物デザイン、そして未来研究所が考える新しい環境配慮型の賃貸住宅について、お届けします。

変わる省エネ基準

国土交通省では、住宅の省エネ化をさらに促進していくため、2020年までに建築物の新しい省エネ基準への「適合」を義務化する見通しとなっています。いままでは主に断熱性能のみを評価していましたが、これからは省エネ効果の大きい冷暖房、給湯、照明等による取組みなど、設備性能を含めた総合的な省エネ性能を評価する基準となります。
また、省エネ基準の改正とあわせて、低炭素循環型で持続可能なまちづくりを推進するため、「低炭素建築物認定基準」が新たに定められています。

建物環境デザイン

環境に配慮した建物の作り方=「建物環境デザイン」は大きく二つにわけられます。

設備機器を利用するアクティブデザイン

機械により自然の力からエネルギーを生み出したり、住環境をコントロールする手法 例)●蓄電池 ●太陽光発電 ●エアコン ●床暖房	●HEMS ●エネファーム ●機械換気 など

自然の力を上手に利用するパッシブデザイン

特別な機械を使わずに自然の力を利用して心地よい住環境を作り上げる手法 例)●通風の工夫 ●日射遮蔽 ●緑化による涼感	●保水の気化熱による涼感 など

太陽光発電やHEMSといった設備機器を利用するアクティブデザインは、光熱費の削減を見える化でき、分かりやすい反面、メンテナンスに手間や経費がかかることも。
一方、パッシブデザインは設備機器に頼らず、自然の力を利用するため、維持管理の手間や修繕費を抑えながら、省エネに取り組むことができます。

今回、賃貸住宅未来研究所では、自然の力を上手に利用するパッシブデザインに着目し、建物づくりの基本コンセプトとして設計に取り入れました。

自然の力を活用する賃貸住宅SOYOCA(ソヨカ)

光や風、緑によって住む人の暮らしや街が豊かになることをめざした賃貸住宅「SOYOCA」。“パッシブデザイン”を軸に、心地良い暮らしをデザインしました。「風と、緑と、笑顔と暮らす」住まいをご覧ください。

パッシブ手法を中心とした環境デザイン

風や日差し、緑など自然の力を利用して、エコで快適な住まいを創り出す

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省エネでありつつも暮らしやすい住まいを作るため、さまざまなエコ技術が使われています。例えば、夏至の南中高度78°(東京)に最適化して夏の日差しを大幅にカットし、太陽高度の低い冬の日差しは取り込む「ルーバー」、「ひさし」を採用。入居者に緑化をうながす為、「インナーバルコニー」や「グリーンフック」などを設置するとともにバルコニーには「マルチシンク」も用意しています。夏は涼しく、冬は暖かく、室温を快適に保ちます。また、自然風をより効率的に採り入れるため、不在時でも換気ができる「通風スリット窓」や、重力換気を促す「エコシャフト」や「ハイサイドライト」などを採用しています。

●グリーンフェンス
風を通しつつ、目隠しにもなる緑のフェンス。エクステリアの彩りとして、癒し効果も。
●遮熱性舗装
優れた遮熱性でヒートアイランド現象を抑制することにより、敷地全体を涼しく快適に。
●緑化ブロック
アプローチに敷き詰めたブロックにもアクセントとして緑を施し、目に優しい癒しの空間を実現。
●保水性ブロック
水分を蓄える性質のブロックが、涼しさを呼ぶ打ち水効果を発揮。
●グリーンライン
駐車スペースは雨水浸透効果のある緑化ラインを採用。
●こんもり緑化/スツール(ベンチ)
植栽を立体化し、密度の高い緑の景観を演出。ベンチはちょっとした荷物置き場や待ち合わせ場所に。
屋内だけでなく、屋外にもさまざまな工夫を

の数字をクリックすると、説明文が表示されます。

建物だけでなく、敷地全体にパッシブ手法を一体的に用いています。ヒートアイランド対策として、熱を蓄えにくい「遮熱性アスファルト」や、打ち水効果を発揮する「保水性ブロック」等を敷地内に舗装。また、多くの植栽を施し、そこに住む人だけでなく、街にも優しいデザインを心がけています。

基本性能にも省エネ効果がたくさん

住まいの基本性能として、住宅性能表示制度の最上位等級の断熱等性能と二酸化炭素排出の抑制に寄与する低炭素建築物認定基準を満たすことで、環境負荷の低減を図っています。

高断熱・高気密

高耐久な外壁サイディングや通気層、構造用面材、グラスウール等の「多層構造」の外壁により、高い気密性・断熱性を実現。
また、開口部やガラスには、遮熱性の高い「アルミ樹脂複合サッシ」、「Low-E複層ガラス」を採用し、断熱性をさらに高めています。

ソヨカ性能イメージ(当社木造低層基幹商品との部位別実質熱貫流率U値による比較)

廃材の削減・CO2吸着

在来工法と2×4を融合させたオリジナルの「エコプレカット工法」を採用。工場でプレカットした集成材を現場で組み立てるため、廃材を従来の10分の1に削減。
また、そもそも木造は、大量の二酸化炭素を吸収した木材を建築用材で使用しているため、住宅の低炭素化に貢献しています。