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サ高住を経営するメリットは?利用できる補助制度と税の優遇制度

公開日: 2023.12.28

最終更新日: 2023.12.28

少子高齢化社会の日本では、高齢者の居住地を安定して確保するということが問題になっています。こういったことから、国は2011年、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)を法改正し、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)制度が創設されました。

この記事では、今後土地活用を検討する方に向けて、サ高住を詳しく説明します。

サ高住の基礎知識やメリット・デメリット・失敗しないためのポイントも紹介します。

>>関連記事:「土地活用の方法16選|運用を行うメリットや実際の進め方

目次

1. サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の基礎知識

1-1.サ高住とはどのような施設か

1-2.サ高住の現状

1-3.サ高住の経営形態

1-4.経営の観点から見るサ高住とグループホームの共通点と違い

2. サ高住経営のメリット

2-1.経営の難易度が立地条件に左右されづらい

2-2.国の補助金制度がある

2-3.税制の優遇制度がある

3. サ高住経営のデメリット

3-1.建物の転用性が低い

3-2.入居率が高くなるまで一定の時間がかかる

4. サ高住の経営で失敗しないためには

4-1.リスクに備えて保険に加入する

4-2.信頼できる事業者を選ぶ

5. サ高住も土地活用の選択肢の一つとして知っておきましょう

1.サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の基礎知識

まずは、サ高住の施設概要や経営形態、増えつつある現状を見ていきましょう。

 

1-1.サ高住とはどのような施設か

サ高住は、単身の高齢者又は高齢者夫婦をターゲットにした賃貸住宅です。
建物賃貸借契約により、居室部分を入居者に賃貸するのが一般的です。

 

サ高住として登録を受けるためには、主に施設・設備面とサービス面の基準をクリアする必要があります。

施設・設備面においては、高齢者が安心して生活するためのバリアフリー構造としなくてはなりません

具体的には、共用部分・専有部分ともバリアフリー構造であること、各専有部分(部屋)の床面積は一戸当たり25平方メートル以上を確保すること、各専有部分(部屋)内に入浴室・水洗便所・洗面設備・台所・収納を備えることなどが挙げられます。

サービス面においては、ケアの専門家を少なくとも日中常駐させ、安否確認サービスと生活相談サービスを提供する必要があります

 

主な有料老人ホームとの違いは、介護サービスなどの有無です。食事の提供や生活支援、夜間見守りなどのサービスは、提供が任意とされているため、扱っていないサ高住もあります。

その他、サ高住は、建物内に診療所やヘルパーステーション、デイサービスセンターなどを併設することもあります。

 

1-2.サ高住の現状


サ高住は、制度として創設された2013年から年々増加の傾向にあります。
国土交通省によると、2020年末時点でのサ高住の数は7,735棟存在しています。
これは、認知症高齢者グループホーム()より多い数です。

サ高住に一定の需要があるといえるでしょう。

sakouju_tourokujokyo.png

※グループホームとは、高齢者や重度障害者などを対象とし、それらの方が少人数で支援を受けながら生活する共同住宅のこと。

【出典】サービス付き高齢者向け住宅の現状等(国土交通省)

1-3.サ高住の経営形態


土地オーナーから見て、サ高住の経営方式は、大きく3つのタイプに分けることができます。

 

自主方式

土地の所有者がすべての業務を担当する方式。建物の建築から運営まですべて担い、入居者からの賃料収入から人件費などの販管費を引いた残りが利益となる。介護事業者に運営業務を委託する委託方式の場合もこれに含む。

借地方式

土地の所有者がサ高住の事業者に土地(更地)を貸与する方式。物件の建築から運営業務はすべて事業者が行う。借主である事業者からは、地代家賃という賃料収入が振り込まれる。

サブリース方式

土地の所有者がサ高住の建物を建築し、テナントである運営事業者に一括貸与する方式。サ高住の建築までは土地の所有者が行う。

 

不動産投資におけるサブリース方式については、以下の記事でも詳しく説明しています。

>>関連記事:不動産投資でサブリース契約を活用するメリット・デメリットは?

1-4.経営の観点から見るサ高住とグループホームの共通点と違い


グループホームとの違いは、ビジネスモデルです。

どちらも、国の補助制度が用意されていて資金確保に活用できる点は共通しています。
しかし、グループホームの収益は利用者から収受する利用料と国からの給付金です。

一方、サ高住の収益は利用者から集める家賃収入と併設する施設の賃料が収益源となります。

 

2.サ高住経営のメリット

サ高住のメリットは、駅チカなどの優良立地でなくても営業ができること、補助金や税金の優遇措置があることです。
それぞれ見ていきましょう。

 

2-1.経営の難易度が立地条件に左右されづらい


サ高住は、賃貸マンション経営やアパート経営などの一般的な賃貸物件ほど、優良立地でなくとも入居のニーズを得ることができます。

入居者となる高齢者は、頻繁に公共交通機関を利用しません。

そのことから、入居者が重視するのは安心して暮らせる場所であり、公共交通機関のアクセスなどは重視されにくい傾向にあります。

一般的な賃貸住宅と比較し、郊外でも十分営業できるため、周囲が静かで落ち着いている土地を持っている人はサ高住の検討がおすすめです。

 

2-2.国の補助金制度がある


サ高住の拡充は国が取り組んでいる事業ということもあり、建設費等の補助制度が用意されています。

例えば、国土交通省の「令和5年度 サービス付き高齢者向け住宅整備事業」では、要件を満たすことで以下の補助金を支援してもらうことができます。

 

新築

1/10(上限 70120135万円/戸 等)

※住戸面積や設備等により上限額が異なる

改修 

  

1/3 (上限 195万円/戸 等)

既設改修

1/3 (上限 10万円/戸 等)

※既設改修のメニューにより上限額が異なる

 

投資額のうち、自分が負担する初期費用を軽減させることができます。チェックしてみるとよいでしょう。

 

【出典】サービス付き高齢者向け住宅を整備する事業者を支援します!(国土交通省)

 

2-3.税制の優遇制度がある

サ高住の魅力の一つが、税制優遇です。
サ高住には以下の通り、2025331日までを適用期限として固定資産税不動産取得税の軽減措置が設けられています。

 

 

<固定資産税>

一戸当たり120㎡相当部分につき、5年間税額について2/3を参酌して1/2以上5/6以下の範囲内において市町村が条例で定める割合を軽減

 

 

<不動産取得税>

家屋:課税標準から1200万円/戸を控除

土地:次のいずれか大きい方の金額を税額から控除

  ・45,000円(150万円×3%

  ・土地の評価額/×1/2(特例負担調整措置)×家屋の床面積の2倍(200㎡を限度)×3%

 

 

なお、いずれも以下の要件を満たす必要があります。

① 床面積:30㎡以上160㎡以下/戸(共用部分含む。一般新築特例は40㎡以上280㎡以下/戸)

② 戸数: 10戸以上

③ 補助: 国からサービス付き高齢者向け住宅に対する建築費補助を受けていること

④ 構造: 主要構造部が耐火構造又は準耐火構造であること等

 

【出典】サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制の概要(国土交通省)

3.サ高住経営のデメリット

サ高住経営は、その運営方式によってはデメリットも存在します。
注意点を把握するために、デメリットを確認しましょう。

 

3-1.建物の転用性が低い


建物を土地オーナーが用意する自主方式とサブリース方式では、建物の転用性が低いというデメリットを理解しておく必要があります。
この理由は、サ高住に求められる施設・設備が特殊なためです。

前述した通り、サ高住は求められるバリアフリー構造などの登録基準や、スタッフルームなどの運営事業者用のスペースが必要となるため、通常の賃貸物件とは異なる構造をしています。
通常の賃貸物件にするためには、改修費が多額に発生する恐れがあるため、将来的に別の建物用途を検討している方には向かないかもしれません。

 

3-2.入居率が高くなるまで一定の時間がかかる


サ高住は、高い入居率になるまで開設から2年程度はかかります。

国土交通省が20201224日に公表した「サービス付き高齢者向け住宅の現状等」によると、2019年の平均入居率は、以下の通りとなっています。

 

 開設後1年未満 :71%

 開設後1年~2年:83%

 開設後2年~3年:89%

 開設後3年~4年:91%

 開設後4年以上 :92%

 

開設後しばらく空室率が高いのは、入居者が入居するにあたり、事前に付帯するサービスを確認したり、家族やケアマネージャーとの調整が必要であったり、入居者に応じた受入体制を確保したりするのに時間がかかるためと考えられます。

運営事業者から賃料を収受するサブリース方式・借地方式の場合は関係ありませんが、自主方式の場合は、上記の空室率をあらかじめ見込んでおくようにしましょう。

 

4.サ高住の経営で失敗しないためには

サ高住の経営で失敗しないためには、事前に対策しておくことが重要です。
ここでは、そのポイントを解説します。

 

4-1.リスクに備えて保険に加入する


サブリース方式の場合は、建物はオーナー所有となるため、建物に関する火災保険・地震保険への加入が必要です。

自主方式で事業を行う場合は、これに加えて、サ高住向けの住宅賠償責任保険に加入しなくてはなりません。
サ高住には、運営事業者として抱えるさまざまなリスクがあります。例えば、施設の欠陥による入居者の怪我や、介護中の賠償事故、その他、予想し得ない事故や怪我が起こる可能性が挙げられます。
入居者に加えてサ高住で働くスタッフを守るためにも、事業者向けの損害保険に加入しましょう。

 

4-2.信頼できる事業者を選ぶ


安定した経営を実現するために、事業者選びは重要です。

サ高住は登録基準を満たす建物を建てる必要があることから、一般的な地域の建築会社だと対応が不十分になってしまうケースがあります。

サ高住事業は専門会社だけでなく、ハウスメーカーや不動産管理会社なども展開しています。
なるべく、ノウハウやサポート体制が整っており、実績のある企業に相談しましょう。また、その際はなるべく複数の事業者に相談し、提案を受けることをおすすめします。

また、運営を委託する場合は、トラブルに対応できる常駐の職員が確保できているか等、自身で実態を確認することが大切です。

 

5.サ高住も土地活用の選択肢の一つとして知っておきましょう

今回は、土地活用方法としてのサ高住についてお伝えしました。

土地オーナーが賃貸経営を成功させるためには、その土地の条件や適性に合った事業計画を立てることが重要です。

サ高住は登録を受ける要件を満たすために特殊な建物を建設する必要があり、その分工事費も高くなりますが、その分補助金などの特例を使うことが可能で、社会貢献と収入増加を両立できます。

大東建託グループでは、建物の設計・施工から入居者様へのサービス、管理・運営など賃貸経営まで、グループ会社の強みを活かし、サービス付き高齢者向け住宅を提供しています。ぜひチェックしてみてください。

■監修者プロフィール

有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者