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土地活用に保育園を選ぶには?主な運営方式やメリットとデメリット

公開日: 2024.01.18

最終更新日: 2024.01.29

土地活用の選択肢は多岐にわたりますが、社会的なニーズの高まりを背景に、保育園事業への関心が高まっています。待機児童の増加が社会的課題としてクローズアップされる中、保育園建設は注目される土地活用法の一つとなっています。

 

しかし、保育園事業に興味を持つ土地オーナーの中には、保育士資格の有無による参入障壁を感じる方も多いでしょう。実際には、保育士資格がなくとも、保育園事業を展開する道は開かれています。

 

本記事では、保育士資格がない土地オーナーでも着手可能な保育園事業に絞り、保育園設立に適した土地の特性や条件を解説します。さらに、土地を活用して保育園を運営することのメリットとデメリットまで、網羅的に解説を進めていきます。

 

これから保育園事業を土地活用の選択肢として検討されている方々にとって、参考となれば幸いです。

>>関連記事:「土地活用の方法19選|運用を行うメリットや実際の進め方

 

1.保育園の主な種類と土地活用としての運営方式

土地活用の選択肢として保育園経営を考える際、その種類と運営方式を理解することが重要です。
なぜなら、保育園の種類によっては施設に必要な広さや許可が下りる基準が異なるためです。
保育園経営の特徴を知ることで土地活用の判断材料にできます。

1-1.保育園の主な種類

まずは、保育園の主な種類から見ていきましょう。
保育園には主に認可保育園、認証保育園、認可外保育園、企業内保育所4つの種類があります。

以下表は、土地活用を考える土地オーナーや不動産経営者が、保育園の種類ごとの特徴と経営上のメリット・デメリットを一覧できるように整理したものです。

 

 

種類

特徴

基準

メリット

デメリット

認可保育園

国の定めた基準を満たし、補償制度が充実

国が定めた施設・人員基準を満たす必要がある

安定した補助金がある

運営基準が厳格

認証保育園

東京都独自の制度

東京都が定めた基準を満たす必要がある

運営費の補助がある

 

小規模保育園の場合、受け入れられるのは02歳まで

認可外保育園

国の定めた基準外の保育園

認可を受けていない

独自のサービス提供が可能

補助金がなく、保育料が高め

企業内保育所

従業員の福利厚生として設置

企業が設定する基準

従業員の満足度向上、働きやすい環境

利用者が限られる

 

認可保育園は国の定めた厳しい基準を満たした保育園です。
厳しい基準が定められていますが、認可を受けることで、国や自治体からの補助金や助成金を受けることができ、経営の安定に寄与します。
施設の広さ、保育士の配置基準、安全管理など、運営に関する基準が厳しく設定されており、高品質な保育サービスの提供が求められます。

 

認証保育園は、東京都独自の基準を満たす施設です。認可保育園ほどの厳格さはないので、設立のハードルは高くありません。
しかし、認可保育園ほどの補助を得られないため、独自性を打ち出すことや運営の効率化が必要でしょう。

 

認可外保育園は、国の基準を満たしていないため補助はありませんが、柔軟な運営が可能です。
保育料の自由な設定ができること、延長保育・土日保育など認可保育園では提供しにくいサービスを展開できます。
これにより、特定のニーズを持つ保護者層をターゲットにしたサービスを展開しやすくなります。

 

企業内保育所は、企業が従業員の福利厚生の一環として設置する保育施設です。
従業員のワークライフバランスの向上や、女性の職場復帰を促進することで、企業の生産性向上に寄与します。

 

これらの保育園の種類を理解することは、土地活用の際の運営方式を選ぶ上での重要な基盤となります。

 

1-2.土地活用として保育園を運用する主な方法


土地活用として保育園を運用する主な方法は、大きく3つに分けられます。

 

  • リースバック方式

  • 事業用定期借地権方式

  • オーナーが建物を建てて賃貸する方式

 

それぞれ見ていきましょう。

 

・リースバック方式


リースバック方式は、所有している土地に保育園を建てて、賃料を得る方法です。
土地所有者が保育園運営業者からの建設協力金を利用して保育園を建設し、その後、運営業者に施設を貸し出すことで賃料収入を確保できるというメリットがあります。

 

この方式は、特に初期費用の負担を軽減し、国や自治体からの補助金を活用することで、返済の負担を軽くすることが可能です。
さらに、土地所有者は保育園の日々の運営からは距離を置き、運営業者に全てを委ねることができるため、運営に関する専門知識がなくても土地活用が可能です。

 

しかし、デメリットとしては、建設協力金の返済義務が発生するため、返済が終わるまでは利益が少ないケースも考えられます。

 

 

・事業用定期借地方式


事業用定期借地方式は、建物の建設や保育園の運営は事業者に任せて、土地だけを貸して収入を得る方法です。
所有者は土地を貸し出すことにより、建設や運営の煩雑さから解放され、長期にわたって土地を有効活用することが可能です。

 

契約期間が終了した際には、土地を更地で返還か、建物を残置するかの選択肢があり、土地の将来的な利用計画に柔軟に対応できます。

 

一方で、デメリットとしては、収益が地代に限定されるため、リースバック方式と比較して収益が低くなる可能性があることです。
また、契約期間が終了すると、新たなテナントを探す必要が生じる場合があり、その際には市場状況や土地の条件によっては再契約が難しいことも考えられます。

 

さらに、契約終了時に建物を残置する選択をした場合、その建物の維持管理や老朽化に伴う追加コストが発生するリスクもあります。
それぞれの方式にはメリットとデメリットがあり、土地所有者の目的や資金状況、リスク許容度に応じて選択することが有効でしょう。

 

・オーナーが建物を建てて貸す方式


土地活用で保育園を運営する際の一つの方法として、土地のオーナーが自らの土地に保育園の建物を建設し、その建物を保育園運営者に賃貸する方式があります。

 

この方式では、オーナーは建物を建てて保育園運営者に貸し出し、定期的な賃料収入を得ることができます。
一方、運営者は建物の建設費用を負担することなく保育園を運営できます。

 

この方法は、オーナーにとっては安定した収益源を確保し、運営者にとっては初期投資を抑えることができるというメリットがありますが、オーナーにとっては初期費用の負担が大きいことと建物の維持管理や賃貸契約の詳細には注意が必要です。

 

2.土地活用で保育園を選ぶメリット

この章では、土地活用で保育園を選ぶメリットについて解説します。

 

2-1.土地活用で保育園を選ぶメリット


・収益の安定性が高い


保育園を土地活用の選択肢として考える際、その魅力は収益の安定性にあります。
保育園は利用者数の変動が少なく、特に待機児童問題が顕著な地域では、継続的な需要が見込めます。

また、事業用定期借地方式やリースバック方式を通じて長期にわたり安定した賃料収入が確保でき、長期的な資産運用として、将来の安定した収益源となり得るでしょう。

 

2-2.補助金制度が充実している


保育園経営における土地活用は、補助金制度の恩恵を受ける点で特に魅力的です。
認可保育園の場合、建設費や運営費に対する補助が国や自治体から提供されることが一般的で、これには保育所等整備交付金や保育所等改修費等支援事業が含まれます。

 

これらの補助金は、新設や増設、賃貸物件の改修時に交付されるもので、初期投資の負担を大幅に軽減することが可能です。保育園の種類や土地がある場所の自治体によって補助金の詳細は異なりますが、一般的なアパート経営・駐車場経営と比べて補助金がある分、土地の有効活用が低リスクで行える可能性が高まります。

 

2-3.税金対策としての効果が期待できる


保育園を設置することで、更地の状態と比較して固定資産税や都市計画税の負担が軽減される可能性があります。
待機児童の問題を解消しようとする自治体では、税の免除措置を設けている場合があり、これにより土地の所有者は税金対策としてのメリットを享受できることが期待されます。

 

ただし、免除の条件や期間は自治体によって異なるため、具体的な制度内容を確認することが重要です。

 

2-4.社会貢献につながる


土地を活用して保育園を経営することは、単に収益を上げるだけでなく、社会的な貢献を実現する手段としても注目されています。
日本における待機児童の問題は深刻であり、保育園建設はこの問題に対する実質的な解決策の一つとなり得ます。

 

土地所有者がこのような公共性の高い施設を提供することで、地域社会のニーズに応え、育児支援の充実に貢献することが可能です。

 

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3.土地活用で保育園を選ぶデメリット

先に保育園運営のメリットを掘り下げましたが、逆にそのデメリットには何が含まれるのか、具体的に見ていきましょう。

 

3-1.参入のハードルが高い


保育園が開園されるまで多くの調査や審査が行われるため、参入のハードルが高い点がデメリットとして挙げられます。
特に認可保育園の場合、公募の件数や開園時期が限定されていることが多く、早期に土地活用したい場合は認可保育園の運営は不向きな可能性もあります。

 

さらに、適切な立地を見つけることや地域住民の同意を得ることも、開園に向けた大きなハードルになるケースも。周辺環境への影響や騒音問題への配慮も欠かせず、これらの課題をクリアするためには、十分な時間と資源の投資が不可欠です。

 

3-2.建物の転用が難しい


保育園の建物は、子どもたちの安全と快適性を考慮した特殊な設計がなされているため、他のビジネスへの転用には大規模な改修が必要となります。
閉園後の建物の再利用を考えた場合、その特性から他業種への転換は一筋縄ではいかず、新たなテナントを見つける際にも制約が多いことが予想されます。

 

このため、保育園を土地活用の選択肢として考える際には、長期的な視野でその後の建物の活用計画も練る必要があり、将来的なリスクを含めた総合的な判断が求められるでしょう。

 

4.保育園の運営に向いている土地

保有する土地の立地や周辺環境、アクセスの良さなどによって、保育園の運営に向いているかどうかが大きく変わります。
子どもたちの安全を守り、親御さんからの信頼を得るためにも、保育園運営に適した立地条件で始めることが重要です。

 

4-1.子どもを安心して預けられる場所


保育園の立地として選ばれる土地は、何よりも園児の安全を優先した場所であるべきです。
交通量の少ない閑静な地域や、見通しの良い場所が望ましいとされています。

 

自治体によっては、保育園の立地に関して具体的なガイドラインを設けており、子どもたちが交通事故などのリスクにさらされないよう、細心の注意を払って選定されます。安全性を確保するためには、交通の便利さと安全性を両立させた土地選びが重要です。

 

4-2.十分な敷地面積がある場所


保育園を運営するにあたり、広々とした敷地は必須条件の一つです。
これは、園児一人一人に十分な遊びの空間を提供し、安全かつ快適な保育環境を整えるために不可欠です。

 

各自治体が定める基準により、園の形態や園児の年齢層、収容人数に応じて必要とされる敷地面積は変わりますが、一般的にはゆとりのあるスペースが求められます。このような広さがある土地は、子どもたちの健全な成長に寄与するだけでなく、保育園としての魅力を高める要素ともなり得るでしょう。

 

5.保育園の経営は社会貢献性の高い土地活用方法

土地活用の選択肢として保育園を選ぶことは、社会的貢献と経済的利益の両面で魅力的です。
主な運営方式には、事業用定期借地方式やリースバック方式があり、安定した収益性、税制面での優遇、補助金制度の利用などがメリットとして挙げられます。

 

一方で、参入ハードルの高さ、建物の転用の難しさ、開園までの時間とコストがデメリットとなり得ます。
これらを総合的に考慮し、地域のニーズや自身の資産状況に合わせた運営計画を立てることが、成功への鍵と言えるでしょう。

 

土地を活用する際は、その土地の特徴や市場の需要、さらには土地所有者の将来設計によって異なります。
自身の土地にふさわしい活用法を見極めるには、専門業者に相談し保育事業に関する提案を受けることや他の保育施設で成功したケーススタディを参考にすることが有効です。

■監修者プロフィール

有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者