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一棟アパートを売却する前に知りたいこと|全体の流れやかかる支出の例

公開日: 2024.03.19

最終更新日: 2024.03.21

不動産投資で賃貸経営を行うオーナーにとって、出口戦略のひとつである売却方法を理解しておくことは大切です。

この記事では、賃貸アパートのオーナーがチェックしておきたい、不動産売却の基礎知識を説明します。一棟アパートを売却する際の流れや、売却時にかかる支出の例、売却価格に影響する要素、よくある質問をQ&A方式で回答しています。

売却する際のポイントが分かるようになるので、ぜひチェックしてください。

 

目次

1. 一棟アパートを売却する際の流れ

Step1.不動産会社に相談する

Step2. アパートの査定を行う

Step3.媒介契約を締結する

Step4.不動産会社が売却先を探す

Step5.不動産会社が売買契約を締結する

2. 一棟アパート売却時にかかる支出の例

2-1.仲介手数料

2-2.譲渡所得税・住民税

2-3.抵当権抹消登記にかかる費用

2-4.印紙税

2-5.消費税

 

3. 一棟アパートの売却価格に影響する要素

3-1.アパートの立地

3-2.アパートの収益性

3-3.アパートの状態

3-4.入居者の状況

 

4. 一棟アパート売却に関するQ&A

Q.アパートに入居者がいる状態でも売却できますか?

Q.アパートの売却価格の相場を調べる方法はありますか?

Q.アパートをより高く売却できるタイミングはいつですか?

5. 賃貸アパートの売却も良いが、管理業務委託も検討しよう。

 

1.一棟アパートを売却する際の流れ

まずは一棟アパートを売却する際の手順や注意点を説明します。なお、この流れは戸建てやマンション売却でもほぼ同じとなります。

Step1.不動産会社に相談する


売却を仲介し、買い手を探してくれる不動産屋を探します。

不動産の売却相談は、無料で行うことができるのが一般的です。物件が分かる情報を用意し、売りたい希望の価格や期日を伝えましょう。

不動産会社の選び方は重要です。
会社や担当者次第で、買い手が見つかるまでのスピードや売却価格は変わります。

販売活動に積極的で効果的な戦略を実施してくれる会社を味方につけるべく、なるべく自らの所有する物件に近しい売却実績がある会社や、買い手になり得る資産家とのつながりが多い会社に声をかけるようにしましょう。
その際、なるべく複数の会社に相談するようにします。
インターネット上の一括査定サービスを活用しても良いでしょう。

 

Step2. アパートの査定を行う


相談を受けた不動産会社はアパートを査定し、どの程度の価格で売り出すべきか、見積もってくれます。
この不動産査定は、大きく分けて2種類あります。

1つは、物件資料からおおよその価格を見積もる机上査定です。

机上査定には、不動産の再調達原価をもとに対象不動産の試算価格を求める「原価法」や、賃料利回りから物件価格を算出する「収益還元法」、過去の同様の物件の取引を参考にする「取引事例比較法」などがあります。相場が分かる一方、いずれも物件を訪問せずに価格を算出する手法のため、特殊な事情を取りこぼす可能性がある点には注意が必要です。

査定方法のもう1つは、現地で物件を見てより正確な価格を見積もる訪問査定です。
調査員が実際に現場を訪れ、机上査定の結果に現場で得られた情報を踏まえて総合的に不動産価格を判断します。

査定が終了した後、不動産会社から査定価格報告書が提出されます。

 

Step3.媒介契約を締結する


査定を受け、信頼できる不動産会社が見つかれば、不動産会社との間で媒介契約を締結します。
媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」3種類があります。

それぞれの違いは以下の通りです。

 

 

一般媒介

専任媒介

専属専任媒介

自己発見取引

(売主が自分で買主を見つけること)

できる

できる

できない

仲介を依頼できる会社の数

複数社に依頼することができる

1社のみ

1社のみ

依頼主への活動報告頻度

なし

2週間に1回以上は必ず報告

1週間に1回以上は必ず報告

指定流通機構(レインズ)への登録義務

なし

あり

あり

 

 

指定流通機構(レインズ)とは、全国の不動産会社が取引情報を見ることができる情報システムのことです。
レインズに物件情報が登録されることで、物件情報が広範囲に公開されるようになるため、成約に至る可能性が高まります。

 

一般媒介契約では複数社との契約が可能なので、他の不動産会社に仲介報酬を取られる可能性があり、専任・専属専任に比べると不動産会社の営業活動への熱量が下がる可能性がある点に注意が必要です。しかし、物件自体に魅力がある場合には、一般媒介契約でも十分な営業活動を期待することができます。

物件や自らの希望に応じて、適切な契約形態を選ぶようにしましょう。

 

Step4.不動産会社が売却先を探す


不動産会社は、物件を認知してもらうために販売活動を実施します。
販売活動では、物件情報が多数登録されている不動産ポータルサイトへの掲載や折込チラシの配布、内覧対応などを行ってくれます。不

動産売却は長期間に及ぶケースもあるため、買い手が見つからないときは、売主に相談の上、売値を見直すケースも少なくありません
また、内覧した購入希望者から値下げ交渉が入る場合もあります。

 

Step5.不動産会社が売買契約を締結する


アパートの買い手が見つかり、売却額に合意すれば、買主と契約を締結します。
売主と買主、そして双方の仲介業者の4者が一堂に会し、契約締結や手付金の支払いなどを行います。
不動産売買契約書の作成や細かな手続きは不動産会社が担当するため、売主がすることは特にありません。

 

後は、売買契約書で定める日時に、不動産売却金額の決済と物件の引き渡しを行います。
売主・買主・双方の仲介業者・金融機関の担当者を交えて決済を行い、同日中に所有権移転登記手続きを行い、引き渡しは完了です。

 

2.一棟アパート売却時にかかる支出の例


アパート売却時にはさまざまな費用が発生します。ここではポイントごとにまとめて説明します。

 

2-1.仲介手数料


売却が成功した場合、仲介業者に対して成功報酬が発生します。額は成約した不動産の物件価格に応じて決まります。
物件の所有者が不利益を被らないよう、手数料は法律で上限が決められています。

上限額の計算方法は以下の通りです。

 

売買価格

仲介手数料の上限

(消費税別途)

200万円以下

売却価格×5

200万円超~400万円以下

売却価格×4+2万円

400万円超~    

売却価格×3+6万円

 

例えば、1億円の物件を売却した場合、仲介手数料の上限金額は以下の通りとなります。

 

 

仲介手数料=1億円×3%+6万=税抜306万円・税込336.6万円(消費税10%)

 

 

2-2.譲渡所得税・住民税


不動産売却で出た利益(譲渡所得)は、確定申告を行い、所得税・住民税を支払わなければなりません。

まず、譲渡所得は以下の計算式で算出します。

 

譲渡所得= 不動産の売却価格 - 取得費用 - 譲渡費用

 

※取得費用:不動産を取得したときに直接かかった費用(土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料、設備費、改良費など)

※譲渡費用:不動産を譲渡したときに直接かかった費用(売るために支払った仲介手数料、印紙税、測量費用など)

 

譲渡所得に対してかかる税率は、所有期間に応じて変わります。
所有期間が短いと課税額は高くなります。

 

 

所有期間

税率

長期譲渡所得

5年超

20.315%

うち、所得税:15.315%・住民税:5

 

短期譲渡所得

5年以下

39.63%

うち、所得税:30.63%・住民税:9

 

 

2-3.抵当権抹消登記にかかる費用


不動産を購入する際に自己資金でなく住宅ローンなどの融資を金融機関から借りており、かつ返済すべき残債がある場合、その不動産には金融機関の抵当権が設定されたままになっています。

その抵当権を抹消する手続きに費用が発生します。

具体的には、当期にかかる登録免許税、司法書士に依頼する場合は、その報酬も発生するのです。

なお、不動産の所有権を買主に移転する登記については買主が費用負担するため、売主の負担はありません。

 

2-4.印紙税


不動産売買契約書を作成することについて、印紙税が発生します。

一般的には、売主と買主用に2通作成された売買契約書に、売主・買主が収入印紙をそれぞれ1通ずつ貼り付ける形で負担します。

その税額は、契約書に記載された契約金額に応じて異なります。

印紙税額は以下の通りです。

 

契約金額

印紙税額

(1通または1冊につき)

契約金額の記載がないもの

200円

10万円以下      

200円

10万円を超え 50万円以下のもの

400円

50万円を超え 100万円以下のもの

1,000円

100万円を超え 500万円以下のもの

2,000円

500万円を超え1,000万円以下のもの

1万円

1,000万円を超え5,000万円以下のもの

2万円

5,000万円を超え 1億円以下のもの

6万円

1億円を超え 5億円以下のもの

10万円

 

 

2-5.消費税


個人のマイホーム売却は事業に当たらないため消費税はかかりません。
同じく土地の売却も消費税はかかりません。

しかし、事業用の賃貸アパートを売却する場合には、個人でも事業として対価を得ることから、建物の売却価格に対して消費税が発生します。

確定申告で不動産譲渡所得を申告し、消費税を納税します。



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3.一棟アパートの売却価格に影響する要素


投資用の一棟アパートを売りに出す場合、賃貸物件としてどれくらいの資産価値があるかが価格に影響します。
ここでは、影響する要素を見ていきましょう。

 

3-1.アパートの立地


駅近や人が集まる施設の近くなど、賃貸需要が高い立地にあるほうが、高めの売却価格になる傾向にあります。

これは、購入した後も一定の入居希望者が見込めると判断されるためです。将来的に賃貸需要が高まると予想される立地にあるアパートも高い価値がつく可能性があります。

 

3-2.アパートの収益性


収益不動産の場合は、投資物件としての還元利回りが重要な要素となってきます。

入居率が満室に近いと、安定して収益を得られる物件と判断されるため、高い売却価格で査定されやすい傾向にあります。

また、周辺物件の相場と比較して家賃がいくらに設定されているかも判断材料の1つとなります。
家賃が極端に低いと利回りが悪いと判断されるためです。

なるべく賃料が高く、稼働率が100%の状態で売却に出すと、スムーズに売却しやすくなるでしょう。

 

3-3.アパートの状態


アパートの見た目も重要です。
修繕が必要な箇所を放置されていると、内覧時に購入した後に修繕するコストがかかる印象を与え、買い手が見つかりにくくなります。

そのため、売却金で費用が回収できるかどうかも念頭に置きながら、売却に影響しそうな修繕については、事前に簡単なリフォームをしておくと良いでしょう。

 

3-4.入居者の状況


入居者トラブルが起きるリスクが潜んでいるかどうかも影響します。

家賃滞納が相次いでいると、家賃収入の回収が困難で収益が不安定になると判断されるため、査定額が低くなるケースがあります。

4.一棟アパート売却に関するQ&A

最後に、一棟アパート売却に失敗しないよう、よくある質問を見ていきましょう。

 

Q.アパートに入居者がいる状態でも売却できますか?


A.可能です。
アパートに入居者がいる場合は、入居者との賃貸借契約を新しいオーナーに引き継ぐ形で売却することができます。
こういった物件は「オーナーチェンジ物件」と呼ばれ、入居者を退去させる必要はありません。

購入する人にとっては入居者がいる状態でアパート経営が始められるため、新たに募集をかけなくて良いメリットがあります。

 

Q.アパートの売却価格の相場を調べる方法はありますか?


A.国土交通省の土地総合情報システムで、過去に取り引きされた宅地建物の成約価格の大まかな相場を調べることができます。

エリアごとに、取引時期と取引価格、最寄駅、駅からの距離、間取り、面積、築年数などを確認することができるため、所有しているアパートの周辺で同じような築年数で近い規模の物件があれば参考にできるでしょう。

ただし、これはあくまで目安のため、正確に把握したいなら査定を依頼するのが良いでしょう。

【出典】土地総合情報システム(国土交通省)

 

Q.アパートをより高く売却できるタイミングはいつですか?


A.アパートを売却するタイミングは予測が困難ですが、一般的には、高い収益が今後も望めると判断されたときとなります。

例えば、新駅や学校の開発計画など、将来的にアパートの需要が増える可能性があると判断できるでしょう。
また、物件の満室状態が長く続いているときは高値がつきやすい傾向にあります。

周辺環境の変化やアパートの状態などが判断基準になるため、その2点を定点観測しておきましょう。

 

5.賃貸アパートの売却も良いが、管理業務委託も検討しよう。

今回は、賃貸アパートの売却についてご紹介しました。

アパートを売却するとまとまった現金が手に入りますが、その後の家賃収入を得られなくなるデメリットがあります。

手放したアパートに入居者が複数いる場合、継続的に収益を得られるかもしれません。

もしアパートの管理に不安を感じているのなら、売却を検討する前に賃貸アパートやマンションの管理を専門としている会社に管理業務を委託する方法もあります。
賃貸物件を管理してきた経験とノウハウを活かして、入居者が長く住みたいと思える状態を維持してくれることでしょう。

 

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サイトURLhttps://assetra.kentaku.co.jp/

■監修者プロフィール

有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者