賃貸住宅のスペシャリストとして、居住空間のクオリティ向上、ライフスタイルに応える間取りや居住スタイルの提案を展開してきた大東建託と、常識にとらわれず住宅の本質へと迫る作品を生み続ける建築家・藤本壮介氏。お互いのノウハウと感性のコラボから生まれた新しいアプローチが、いまどんどん磨かれています。
今回は、コラボレーションのパートナー藤本壮介氏からのメッセージをご紹介。合わせて藤本氏の主要作品をご案内します。
今回の HOUSE VISION 2016では、大東建託さんとコラボレーションすることで、「新しい賃貸住宅のあり方」をみなさまにご提案いたします。
「集まって住む」ということを最大限に活かしながら、さまざまな世代や状況の人たちがお互いを支え合って暮らしていく「小さなまちのような賃貸住宅」です。
核家族化や少子高齢化が進み、ライフスタイルも多様化する中で、LDKで構成される既存の形式にとらわれるのではなく、新しい快適さを求めて、賃貸住宅の再構築を試みました。
会場では、そんな暮らしの一部を実際の大きさで体験いただくことができます。是非、これまでにない新しい暮らしの可能性をご覧になってください。
たくさんの方々のご来場を、心よりお待ちしております。
1971年北海道生まれ。
東京⼤学⼯学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。
2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞、2015年パリ・サクレー・エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター国際設計競技最優秀賞につぎ、本年Réinventer Paris国際設計競技ポルトマイヨ・パーシング地区最優秀賞を受賞。
主な作品に、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013(2013年)、House NA(2011年)、武蔵野美術⼤学図書館(2010年)、House N(2008年)等がある。
東京都心の住宅街にひときわ目をひく、全面ガラス張りの住宅。鉄骨無垢柱によるラーメン構造で構成され、構造上は3階建てながら部屋が少しずつ高さを変えながら立体的に連続する。
枝から枝へ飛び移る原初的な生活をイメージしたというように、それぞれの「部屋」は壁がなく、床のみで構成。幹から伸びる枝のように何層にも立体的につながる。壁という常識をなくすことで、立体的に暮らすという新しい価値が生まれる。
箱の中に3つの箱があって、それぞれが入れ子状になっているという住宅。街の中に住むときの、守られている感じと開放的な感じをどう両立させるのか、がコンセプトになっている。中と外とをはっきり分けず、3つの箱で内と外の関係にグラデーションをつくり、天気が良ければ外の方に移動し、プライバシーが欲しい時は奥の方に入っていくというように、グラデーションの上を生活の中で動いていく。
図書館の究極の姿は、本、本棚、光、場所である。そんな単純化から生まれた武蔵野美術大学美術館・図書館。すべての壁が本棚であり、天井まで延びる本棚が螺旋状に連続し、図書館全体をつくりあげていく。全面開架方式により、数十万冊の図書に自由にアプローチできるようになっており、螺旋状の構造に図書を放射線状に規則的に配置することで検索性を高めている。図書館の外壁も本棚になっている。
サーペンタイン・ギャラリー・パビリオンは、ロンドンの美術館サーペンタイン・ギャラリーが夏季限定で設けるカフェ兼休憩所で、毎年、当代一流の建築家に依頼して設営。イギリス建築業界でも最も栄誉のある期間限定建築といわれている。藤本氏は2013年、最年少で担当。パビリオンは何百本もの白いスチールの棒を格子状に組み合わせた建築物で、スチールの格子はシャープでインダストリアルだが、建物全体から受ける印象は、緑の芝の中に湧きあがった雲のようだと高い評価を得た。
地中海に臨む南仏・モンペリエに建設中の、ラルブル・ブラン。オフィススペース、アートギャラリー、 レストラン、 展望バー、そして110戸の住宅ユニットを備える、延べ1万㎡におよぶ多目的タワーで、新しいランドマークとして大きな期待が寄せられている。ラルブル・ブランは日本語で「白い木」という意味だが、なるほど住居部のバルコニーが、樹木が日光を十分に浴びられるよう枝葉を伸ばすがごとく外に向けて張り出し、まさに樹木のような究極の集合住宅を具現化している。
藤本氏がパリの建築家Manal Rachdi氏と共同で参加したパリ市都市再開発コンペで選ばれた、複合施設ミル・アルブル。今年2月に採用が決まったばかりの、最新のプロジェクトだ。日本語で「1000本の樹」という名のこの提案は、パリの環状道路の上空に1000本の樹を植えた森と居住区を浮かべるという革新的なもので、街と自然と建築が3次元的に融合する、パリの新しい都市環境として高く評価された。森には127の家、オフィスビル、4つ星ホテル等が建設される予定だ。