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アパートの減価償却費まとめ|シミュレーションから見る計算の仕方

公開日: 2024.02.09

最終更新日: 2024.02.14

アパート経営を始めるうえで知っておくべき知識の一つに、減価償却があります。

減価償却とは建物などの固定資産の購入費を、使用期間に応じて分割計上する会計処理のことで、上手く活用すれば所得税などの税金負担を軽減できます。

したがって、これから土地活用や不動産投資を始める方は、事前に理解を深めておくことをおすすめします。

そこで本記事ではアパートの減価償却費の計算について、実際のシミュレーションを用いながら詳しく解説します。

 

 

1.アパート経営と減価償却

はじめにアパート経営における減価償却の基本的な考え方を解説します。

1-1.減価償却とは


減価償却とは不動産など固定資産の購入費用全額を一括で経費計上せず、何年かに分けて計上する方法です。

購入した資産が生み出す収支をより正確に、実態に合った形で算出するために用いられます。

建物などの資産は時間の経過に伴って価値が目減りしていくという考え方に基づいており、目減りした分を減価償却費として扱います。

アパート経営、マンション経営のような建物の賃貸経営を行う場合においては、必ず理解しておくべき考え方といえます。

1-2.なぜアパート経営で減価償却が重要なのか


アパート経営で減価償却が重要な理由は、減価償却を上手く活用すれば税金対策で大きな効果を発揮するためです。

減価償却費は不動産の取得費を法定耐用年数に応じて配分し、その年に相当する分の金額であり、必要経費として計上できます。

減価償却額を計上することによって、不動産経営の会計上の収支が赤字になった場合、マイナス分をオーナーの所得などから相殺できるため、課税所得金額の合計を圧縮でき、所得税額や住民税額の軽減につながります。

あくまで会計上の数値であり、経費として費用計上するものの、キャッシュフローがマイナスになったわけではないので、収益を上げつつ税金負担を抑えられるメリットがあります。

 

1-3.アパート経営で減価償却できる資産とできない資産


減価償却の対象になるのは、建物と建物附属設備や構築物、器具備品です。

したがって、建物本体以外の電気やガス、空調、給排水設備など設備部分についても、減価償却費として計上できます。

一方、土地は減価償却の適用対象外となっています。

土地は建物部分と違い、時間の経過や利用などにより劣化せず価値が変化しないので、建物のように耐用年数を計算できないためです。

また、建物附帯設備の中でも、家屋に取り付けられ構造上一体となっているものは、建物附属設備としてではなく、建物として減価償却します。

区分けが難しい場合は、明確にしたい場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

2.アパート経営の際に行う減価償却費の計算

アパート経営における減価償却の基本を理解したところで、実際に減価償却費の計算のポイントを見ていきましょう。

 

2-1.減価償却費の計算に必要な項目


・法定耐用年数


法定耐用年数とは、固定資産の資産価値が消滅するまでの期間を定めた年数のことです。

ただし、ここでいう価値消滅はあくまで「資産価値が帳簿上から消滅する」ことを指しており、実際の建物の価値がなくなるわけではありません。

住宅用建物の場合、種類や構造によって異なる耐用年数が定められています。

以下に国税庁が定めている構造ごとの法定耐用年数をまとめます。

 

構造

法定耐用年数

木造・合成樹脂造

22年

金属(鉄骨)造 (骨格材の厚み4mm超)

34年

金属(鉄骨)造 (骨格材の厚み3mm超、4mm以下)

27年

金属(鉄骨)造 (骨格材の厚み3mm以下)

19年

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)

鉄筋コンクリート造(RC造)

47年

 

【出典】主な減価償却資産の耐用年数表(国税庁)

 

一方、建物附属設備の法定耐用年数は種類によって異なりますが、おおよそ15年程度に設定されているものが多くなっています。

 

なお、新築物件ではなく中古物件を購入した場合、法定耐用年数すべてを経過した物件は、その法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とします。

計算式にすると以下の通りです。

 

耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%

 

一方、法定耐用年数の一部を経過した物件は、法定耐用年数から取得時の経過年数を差し引いたうえ、経過年数の20パーセントを加えた年数を耐用年数とします。

計算式にすると以下の通りです。

 

耐用年数 = (法定耐用年数 - 経過年数) + 経過年数 × 20%

 

もし上記計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、端数を切り捨てその年数が2年に満たない場合には2年として計算します。

 

・物件の取得価額

物件の取得価額とは、物件を取得する際にかかった費用のことです。

建物の建築費だけでなく、購入・建設にかかった諸費用も含まれる点に注意しましょう。

以下に取得価額に該当する主な費用をまとめます。

 

 

・建物の購入金額

・仲介手数料

・固定資産税精算金

・立ち退き料

 

なお、土地は非減価償却資産なので、土地の購入金額は物件の取得価額に含まれません。このほかにも取得価額に含まれるものがあるので、わからないときは不動産会社などへ問い合わせ、確認するようにしましょう。

 

 

・償却率

償却率とは減価償却費の計算を簡易化するために用いられる割合のことです。

耐用年数と後述する減価償却費の計算方法によって用いる数字が変わります。

償却率がどのくらいになるのかは、国税庁のWebサイトに公開されているので、以下のページから確認するようにしましょう。

 

【参考】減価償却資産の償却率等表(国税庁)

 

2-2.減価償却費の計算方法


減価償却費の計算方法には、定額法と定率法の2種類があります。

定額法は原則として毎年の減価償却費を一定にして計算する方法であり、建物や建物附属設備、構築物は一般的に定額法が用いられます。

一方、定率法は取得価格からこれまでの減価償却費の累計額を差し引いたもの(残存簿価)に、償却率を掛ける方法です。

減価償却費の額は初年度が最も多く毎年減少していくため、経過年数が長くなればそれに応じて償却率も低くなっていきます。

ただし、平成28年(2016年)度改正では、平成2841日以後に取得する建物附属設備および構築物の減価償却方法は、定率法が廃止され定額法とすることになっています。

今後アパート建築をする方は、定額法が前提になることを覚えておきましょう。

 

なお、定額法、定率法の計算式は以下の通りです。

【定額法】
・取得価額×定額法の償却率

【定率法】
・未償却残高×定率法の償却率

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3.アパートの減価償却費シミュレーション

実際にアパート経営で減価償却費を活用すると、どのような結果が生じるのでしょうか。

2種類のプランで具体的な数値を用いながらシミュレーションしてみます。

※なお、本シミュレーションでは定額法を用いて計算します。

ケース1:新築の木造アパートで減価償却


はじめに以下の条件でアパートの減価償却費をシミュレーションしてみましょう。

なお、便宜上、物件取得費は諸費用込みとしております。


諸経費には含まれるのは、主に以下のものです。

 

・不動産取得税

・登録免許税

・印紙税

・固定資産税

・都市計画税

・仲介手数料

・火災保険料

・ローン手数料

 

物件取得費はあくまでイニシャルコストなので、管理費や修繕積立金のようなランニングコストは諸経費の中に含まれないことを理解しておきましょう。

ただし、賃貸住宅経営に関わる修繕費やリフォームなどのランニングコストは、減価償却ができるケースもあります。

減価償却費を計上すれば、場合によっては節税効果につながる可能性があります。

では、条件に移ります。

 

【条件】

・物件:新築アパート

・構造:木造

・用途:住宅用

・物件取得費(諸経費込み):5000万円

・物件取得日:2022年1月

 

構造が木造で住宅用の場合、法定耐用年数は22年です。

耐用年数22年の定額法の償却率は、減価償却資産の償却率より0.046であることがわかります。

したがって、減価償却費は以下のように計算します。

 

減価償却費 = 5000万円×0.046= 230万円

 

本事例では、20221月に物件を取得しているため、2044年まで毎年230万円の減価償却費を経費として計上できます。

(定額法の場合、減価償却費は変わらないため)

 

ケース2:新築の鉄筋コンクリート(RC)造アパートで減価償却


次に以下の条件で同じくアパートの減価償却費をシミュレーションしてみましょう。

 

【条件】

・物件:新築アパート

・構造:鉄筋コンクリート(RC)造

・用途:住宅用

・物件取得費(諸経費込み):2億円

・物件取得日:202212

 

構造が鉄筋コンクリート(RC)造で住宅用の場合、法定耐用年数は47年です。

耐用年数47年の定額法の償却率は、減価償却資産の償却率より0.022であることがわかります。

したがって、減価償却費は以下のように計算します。

 

減価償却費 = 2億円×0.022=440万円

 

本事例では、20221月に物件を取得しているため、2069年まで毎年440万円の減価償却費を経費として計上できます。

 

4.減価償却が終わるとどうなるのか

減価償却期間が終わるということは、つまり法定耐用年数が満期に達することを意味します。

アパートなどの建物は法定耐用年数を超えても利用できるのか、危惧される方も多いと思われますが、法定耐用年数の経過と建物が劣化する年数は、別物として考えるのが一般的です。

そのため、基本的に法定耐用年数を超えた場合でも、これまで通りアパート経営は続けられます。

法定耐用年数と聞くと建物の寿命のように感じられますが、あくまで減価償却の計算に使う税務上の指標と捉えておきましょう。

ただし、経年劣化が進んだ建物にはさまざまなデメリットやリスクもあるため、修繕やメンテナンスは適時行っていく必要があります。

 

5.減価償却費の目安を把握しよう

アパート経営では家賃収入によって高い利益を上げた場合、税金負担も重くなりがちです。

減価償却を活用した損益通算は、有効な税金対策になるので、仕組みをしっかりと把握しておくことをおすすめします。

また、経費として計上できるものの種類は、修繕費、リフォーム費、ローンの返済などの多岐にわたります。

こうした経費の種類のほか、確定申告時の記載方法、注意点なども同時に理解しておくことが大切です。

なお、一定の知識があれば実際に計算式を用いて減価償却費シミュレーションを行えますが、オーナー様ご自身で計算するのが困難であれば、信頼できる不動産会社への相談を検討すると良いでしょう。

■監修者プロフィール

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表
宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。

現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。

また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。

【保有資格】 税理士、CFP®