イノベーションを起こせ!大東建託グループの挑戦者たち Vol.1

~File. 01 オーダーメイドDIYキット販売「CODD(コッド)」~

事業活動

大東建託グループは、社員と組織の成長を促すために、2020年より「熱い想いと事業アイデアであなたも社長になれる」をキーメッセージとした社内ベンチャー制度「ミライノベーター」を導入し、今年で5回目を迎えました。
「ミライノベーター」はグループ全従業員を対象とした制度で、新規事業の提案者自らが事業オーナーとなり、実証期間を通して顧客課題の検証やテストマーケティングを行いながら、事業化を目指します。2019年の導入開始から4年、これまで提案された事業案は942件、最終審査を通過した事業案は15件となりました。
提案者は原体験を通して生まれたアイディアと熱い想いを原動力に、多くの失敗と成功体験を重ねながら、強い熱意をもって事業化に挑んでいます。彼らがどのようにして原体験を新規事業へと結び付けてきたのか、全4回に分けて4件の事業について提案者へインタビューを行い、事業案の着想から事業化に向けた取り組みの様子について紹介していきます。

今回は第1回ミライノベーターから誕生した“オーダーメイドDIYキット販売店「CODD(コッド)」”の事業について、提案者である池田さんと西山さんにお話を伺いました。
<CODDとは>
「CODD」は、賃貸住宅にお住まいの方でも挑戦しやすい「DIYキット」を販売するサービスです。「じぶんにフィットする」をコンセプトに、家具をオーダーメイドで受注し、DIYキットにしてご自宅へお届けします。現在約400点の商品を展開しています。


オーダーメイドDIYキット販売「CODD」は、
2023年12月末日をもってサービスを終了いたします。

01.着想~新規事業提案まで / きっかけは「働くお母さん」同士の会話から

  「賃貸住宅でも使える家具をDIYキットにして販売する」というのは、大東建託のコア事業である賃貸建物を活かした特徴あるサービスだなと感じました。オーダーメイドだから間取りに合わせてジャストサイズで作れるのも魅力ですよね。どうしてこのようなサービスを始めてみようと思ったのか、まずはCODDが生まれたきっかけについて教えてください。

西山  CODD発案のきっかけは「働くお母さん(親)」としての池田さんの原体験にあります。親になると家庭のこともどこか頭の片隅におきながら仕事をしていて、常に「時間」と「心の余裕」がない。働く親同士の会話で上がったのが、「家事を減らすこと=時短」への切望だったんです。その中でも「収納」が部屋を片付ける上で大きな問題になっていることが見えてきました。
特に子供のいる家庭では、子供の成長にしたがってどんどん物が増えていくため、ライフステージに合わせた収納(部屋)の在り方が必要になってくると考えたという。また、賃貸住宅の間取りは、どんな人でも住みやすいよう標準化されるため、個人のニーズに完全に合うことは少なく、収納に課題があると感じたそう。

事業戦略部 西山 恭平さん

西山  働く親である池田さん自身の「働くお母さん(親)を助けたい」という想いと、賃貸住宅でも叶えられる「一人ひとりに寄り添う部屋づくりをサポートしたい」という想いがCODD発案の原動力になっています。

池田  新規事業を“オーダーメイドのDIYキット”にしようと思いついたのは、DIYが得意な友人が、私と子供のためにオーダーメイドで家具を作ってくれたことがきっかけなんです。引っ越した 後も家に合わせてリサイズしてくれて、長く大切に使いたいと考えていた私の想いにピッタリあてはまりました。同じように「家にフィットする家具が欲しい」という他のお母さん達の声を沢山聞いたことで、これを事業にしてみようと考えました。

事業戦略部 池田 真弓さん

池田  今、量販店などで販売している家具は、「大量生産」の中で最適化を図るためにサイズに規格があって、ジャストフィットはなかなか難しいですよね。その点、DIYであれば、置きたい場所に好きなデザインの家具を置くことをあきらめずに済むため、差別化ができると思いました。

  一度作った家具を組み立て直して別の場所で使うことができるのは、DIYならではの魅力ですね。収納する場所ができれば、お母さんの片付けの家事負担軽減にも繋がります。
働く親目線から新規事業アイデアを生み出したお二人、「シンデレラのガラスの靴の様に、ぴったりサイズの家具を提供したい」という考えから、「C:シンデレラフィット」「O:オリジナル」「D:デザイン」「D:DIY」の頭文字をとって、「CODD」と事業名を名付けました。 実は、ビジネスモデルを考え始めた当初は、原体験者である池田さん一人だけだったそう。
 池田  会社のリソースで何が使えるのか、物流をどうしたらいいのか、1人では分からないことが多かったんです。一連の流れを完結させる具体的なビジネスモデルを完成させることができず、友人や上司の方達にも相談しました。その中で当時、大東建託本社の工事統括部にいた西山さんとは同期入社で、技術部門にいる立場からアドバイスをもらうようになって意気投合。そこから2人でCODDのビジネスモデルを作り上げました。

 西山  私達二人だけでなく、関係する協力業者の方、大東建託本社や大東建託パートナーズの営業所の方々など、当社のグループ力を活かしながら多くの方に相談することで、ようやく形にすることができました
ミライノベーターの審査期間は6月~10月※と、上期の決算を跨いでいたため、「時間を作るのは難しかった」と振り返る西山さん。書類選考通過後には周囲の理解も得られるようになり、時間を作ることに協力してもらったり、相談相手になってもらったりと、両立しやすくなったそう。また、実は拠点が東京と福岡で離れているお二人。会う機会が少なかったことから、メールだけでなく、ミーティングもオンラインを利用しながら、時間を有効活用することで意思疎通を図ってきたそうです。
※ 第1回開催時の審査スケジュール

02.CODDのビジネスモデル / モノからコトへ、「空間から豊かな人生をデザインする」を目指して

  CODD使われる木材に国産材を使っているというのも大きな特徴だと感じました。どうして国産材を使うことになったのでしょうか。

成形合板では表現できない木目の美しい国産材

西山  国産材にしたのは、日本の林業にも光を当てたいと考えたからです。国産材は質が良く、製材技術も高いため表面加工の仕上がりが綺麗です。CODDは当社の賃貸事業やその規模を活かし、「建物に傷をつけない」「シンデレラフィット」「コストパフォーマンス」を柱に、木材を使用した商品展開を考えていました。無垢の国産材であれば、私たちの目指す「長く使える品質の良い商品の提供」と、木そのものの魅力発信にもつながると考えました。

  最初の「物を長く大切にしてほしい」というCODDの着想に結び付いたというわけですね。私達消費者側にとっても、加工されていない無垢の木であれば国産材の魅力発見にもつながりますね。
特に林業では、従事者の減少により管理されない放置林が増え始め、山の地表が弱くなったことによる土砂災害の危険性増加などが問題視されています。お二人は、国産材の魅力を消費者に対し商品を通して伝えていくことで、日本の木材産業の活性化、ひいては森林を守ることにもつながると考えたそう。 また、木材以外にも、CODDをきっかけに、これまで当社が取引してきた協力会社様でも、今までのつながりの中では見えてこなかった新たな魅力が見えてくると言うお二人。
 西山  建材以外にも多角的に事業をされていたりして、「実はインテリアショップもやっています」なんて出会いもあります。実際にインテリア商品を見てみると、今までの建設業界のゴツゴツしたイメージとは違う、意匠性のある素敵なものが多く、そこから魅力を感じて、「これいいね」と取り扱いを決めることもあります。CODDを軸につながる新たな出会いと、お互いの想いに共感し 合いながら一緒に新しいことに取り組んでいけることも、新規事業の魅力であり、やりがいになっています。

CODDplusの家具「HiNGE(ヒンジ)」を前に

池田  CODDが目指すのは「空間から豊かな人生をデザインする」社会の実現です。皆さんと一緒に私達も「暮らし」を原点に、一つひとつのモノに込められたストーリーを大事にしながら、CODDを通じて日本の活性化、日本の良さというものも伝える一翼を担えたらいいなと考えています。

  それぞれの想いをCODDが形にして、消費者に届けていけるのも魅力の1つですね。CODDを起点に、色々な出会いや発見につながり、そこからまた新たな価値を見出すことにも 結び付いていくんですね。

03.商品開発  / 
出会いの連続から生まれる新たな価値共創のストーリー

  今現在CODDで展開する商品にはどのような物があるのでしょうか?

西山  CODDの商品は、「組み立て易いシンプルな作り」「デザイン性」「使い勝手(機能性)」をキーワードに、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドでプランニングする「カスタマイズ家具」と、若手アーティストとコラボして商品企画をする「CODD plus(コッド プラス)」の2つを軸に商品開発をしています。「カスタマイズ家具」では私たちが商品企画をしています。

池田  最初に商品化した棚は、出来上がった試作品のイメージを元に、まずは当社で取引のあるメーカーさんに声を掛けるところから始め、2人で意匠性なども考慮しながら仕入れ先を決めていきました。MVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト=実用最小限の製品)と呼ばれる初期プロダクトを実装し、お客様から直接「こうしてほしい」「これが欲しい」などの声を聞きながら、それをもとに今も少しずつ商品改善も重ねています。

完成したMVP/ 顧客課題をもとに理想形の家具キットを製作。ここから顧客検証を行い、製品・サービスの課題抽出を実施

カスタマイズ事例(棚:NOSEU 机:DESUKU)/ お客様の要望に合わせてぴったりなサイズで 家具をプランニング。組み立て時の困り事も 遠隔でサポート可能

事業化に向けて実証実験中の今、CODDでは、実際に商品をオンラインショップで販売する他、これまでに、認知獲得や顧客ニーズと課題の検証を目的に、福岡の百貨店でポップアップストアを展開したり、CCC(株)様と家具×インテリアのワークショップを実施。そこから、お客様が求めているもの、金額の妥当性、課題点が見えてきたと感じているそう。
西山  今は事業の拡大と再現性を高め、販売拡大させるにはどうしたらいいか、という観点で日々取り組んでいます。 他にも、CODDplusの第1弾として、若手建築家の桐圭佑さんと可変性家具「HiNGE」をデザインしました。幾度の製作と強度試験を重ねながら商品化に辿り着いた商品で、Good Design Award 2022を受賞することができました。今は第2弾として、工業デザイナーと共に賃貸に特化した家具の商品化を進めています。また、新たな取り組みとして、最近では、九州産業大学との産学連携による商品の共同開発なども始めました。

福岡県の博多阪急イベントスペース 「ユトリエ」に出店

CODDの家具「HASHIRA」に絵を描き、アートで自分らしさを表現する面白さを伝えるワークショップを開催

Good Design Award 2022を受賞した 可変性家具「HiNGE」

  産学連携を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

西山  今のメインターゲットは私達と同世代の「働くお母さん(親)」ですが、今後CODDが成長していくにあたって、次世代の考え方も商品開発に取り入れていく必要があります。年代によって考え方や理想とする暮らし方が変わってくるのであれば、未来の住宅のあるべき姿も変わってくるのではないかと考えました。この産学連携の取り組みは、お客様となる若い人たちの考え方を聞くために、知人の勤める九州産業大学へ話を持って行ったことが縁でスタートしました。
大学側としても、今後のあるべき姿について学生に考えさせる上で、企業を交えることで実践的な授業にすることができるという点がメリットになりました。西山さんは実際に講師として授業も行ったことがあるそうで、この取り組みがDIYソロワークブース「HACOCE(ハコス)」の共同開発につながりました。
西山  「個室」は近年のコロナ禍を背景に学生やオフィスでのニーズが高まっていたことから、DIYならではのカスタマイズ性も活かして、専門性の高い研究用ワークスペースにも活用できる商品として開発しています。現在はHACOCEの商品改良に向け、ブラッシュアップをしているところです。

学生による試作1号機の組み立て実演から 利用者としてのリアルな声を集めていく

ソロワークスペース内の環境調査(防音検査)を実施

西山  実はもう1つ、同大学の芸術学部の学生がHASHIRAにアートを描き込んだ作品を「HASHIRA Artist MODEL」としてCODDで販売する取り組みも始めています。芸術学部生は、卒業後のアーティスト活動に向けて、学生のうちから学校外で既にアーティスト名で活動していますが、その中で一番困っているのが名前を覚えてもらう場所がないことだそうです。CODDで何か一緒にできないかと考え、CODDをアーティスト活動の場として提供しています。
ここで生まれた作品の展示販売を福岡県の百貨店で開催したことをきっかけに、福岡県庁での作品展示や、福岡県で取り組む県内アーティストを支援する活動へのCODDの参画にもつながったのだそう。お二人は、今後もCODDとアートと融合させる取り組みを広げ、アーティストの表現する場所として提供していきたいと考えているそうです。

福岡県内にある福岡三越でポップアップストアを開催

福岡県庁でのHASHIRA Artist MODEL展示 会期中には芸術学部生とのワークショップも開催

04.CODDの将来ビジョン / 「物を長く大切に扱う気持ち」と「楽しむ時間」をお客様へ

  事業化を目指す上で、お二人が大切にしていきたいと思っていること、また、それを実現するための今後の課題はどんなことでしょうか。

池田  私は、CODDを通じて働くお母さんに「時間のゆとり」が生まれるよう、お客様の声に耳を傾けながら、「時短」という観点でCODDの商品やサービスをどんどんブラッシュアップしていきたいと考えています。大東建託グループのリソースを活かし、まずは賃貸住宅にお住まいの入居者様へ使っていただけるよう、CODDの魅力をこれからどう伝えていくかが課題です。それには他部門やグループ会社の社員との協力も必要になってくると考えています。私達の事業を広く社内へ伝えるために、CODDで実現したいことを、大東建託の目指す企業像に繋げて伝えていこうと日々取り組んでいます。

西山  物には使い終わりがあって、ある意味「使い捨て」の感覚になっている現代において、お客様に「買ってよかった」と感じていただくことは実はすごく難しいと感じています。CODDサービス・商品を通してお客様の生の声を聞けること、「自分で選んだものは良かったんだ」と感じていただけていることが、私達の喜びになっています。今後は、喜んでもらった経験をどう次のお客様に繋げていくか、ということを課題に考えています。

  最後に、新規事業の魅力、CODDへの想いや今後の展望について教えてください。

西山  CODD立ち上げ時の一番初めに描いていた姿と、今ある姿は全く違っています。新規事業は自分たちが事業オーナーなので、毎日が決断です。「後には引けないけど、やらないといけない」という気持ちで日々やれることが楽しいし、この機会をもらえて会社に対して感謝しています。出会ったお客様からの声やこれまでの経験を忘れずに、一人ひとりのお客様を大切にしながら、これからもどんどん広げていきたいと思っています。

池田  直接お客様の「生の声」を聞けることが、新規事業としてCODDに取り組む楽しさだと感じています。大きな話になってしまいますが、「世界を笑顔にしたい」という想いでやっています。お母さんが笑顔になることが家族みんなの笑顔につながり、そうすることで社会にも好循環が生まれると考えています。CODDを通じて、これからも色々な挑戦をしてきたいですね。

■ ミライノベーターってどんな制度なの?

~第5回ミライノベーターの応募が始まる!~

ミライノベーターとは、大東建託グループ社員であれば誰でも、新規事業を提案できる制度です。事業化までは、「書類審査」「プレゼン審査」「実証実験」「事業化提案」があり、プレゼン審査を通過すると、大東建託の事業戦略部で専任で実証実験を行います。最終審査となる「事業化提案」では、経営会議の場で実証実験結果をもとに事業化の可否が判断されます。審査は各回で提示される提案領域ごとに行われ、第5回目となる今回は、基本領域である「コア(賃貸住宅)事業領域」「コア周辺事業領域」の他、新たに「地方創生」がテーマに加わり、地方の課題に焦点を当てた提案も募集しています。

<第5回ミライノベーター審査スケジュール>

<竹内社長からのメッセージ>

事業化を考えるとハードルが高くなりますが、アイディアベースでは色々と社員のみなさんは持っていると思います。そのアイデアを形にするために、ミライノベーターでは、本社スタッフがエントリーシートの作成から実証実験までをサポートしながら、社員のみなさんを応援していきます。 必要なのは、チャレンジしてみようという熱意だと思います。アイデアのある社員には、是非このチャンスを掴み取り、自身のアイデアを実行レベルに移してほしいと考えています。

社長室にあるテントからビデオメッセージを送る竹内社長。リラックスできる空間で、社員との意見交換の場にもなっている

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