イノベーションを起こせ!大東建託グループの挑戦者たち Vol.3

~File. 03 暮らしのお困りごと解決サービス「ienote(イエノテ)」~

事業活動

この連載企画では、大東建託グループの全社員が参加できる社内ベンチャー制度「ミライノベーター」で、自らが提案した新規事業案の実現を目指し、日々実証実験に取り組む事業オーナーのみなさんにインタビューを行い、企画に至ったきっかけから、その事業への思い、さらには実現に向け挑戦する姿などをご紹介していきます。

連載第3回目となる今回は、昨年の2022年度 第4回目のミライノベーターより誕生した、暮らしのお困りごと解決サービス「ienote(イエノテ)」の事業について、提案者で事業オーナーである大東建託パートナーズの岡部さん、二見さん、安永さんにお話を伺いました。

左:大東建託 事業戦略部 岡部哲也さん、中央:大東建託パートナーズ 豊橋営業所 二見健太さん、右:大東建託パートナーズ 京都営業所 安永吉伸さん

<「ienote」とは>
大東建託グループの大東建託パートナーズ※で働く管理スタッフの日々の業務から生まれた「暮らしのお困りごと解決サービス」事業。自宅修繕や植栽剪定などの「自宅のお困りごと」と、草刈り作業が中心の「所有する空き地休耕地の管理」の2つのサービスを提供する新規事業として、2023年5月よりミライノベーターで実証実験がスタートしました。

   大東建託グループのコア事業である「賃貸住宅事業」に関わる建物の管理・運営業務を担う。オーナー様と入居者様のやり取りの全てを同社の管理スタッフが窓口となり行っています。

01.ienoteのビジネスモデル / 暮らしの中の「お困りごと」から社会課題解決に挑む

第1フェーズとなる実証実験は、岡部さんの担当エリアだった浜松営業所を中心にスタートすることとなりました。岡部さんは勤務地を浜松に置いたまま専任担当として大東建託の事業戦略部へ配属となり、二見さんと安永さんのお二人は、これまで通り各営業所の管理業務に従事しながらienoteの事業担当を兼任しています。

  実際にオーナー様からの「お困りの声」は多いのでしょうか。

岡部  私たち管理スタッフやアセットスタッフは、普段から賃貸経営のことだけでなく、オーナー様のお困りごとを聞く機会は多くあります。オーナー様は年配者が多いので、電球交換1つであっても苦労したり、故障した室内設備の修理の依頼先に悩まれていたりと、オーナー様ご自身はもとより、気軽に相談できる身近な存在もいないなど、日常生活の中で自分の力では解決できないことが沢山あることに気付かされます。核家族化、少子高齢化などの社会課題を抱える中、この先こうした問題はますます大きくなっていくと感じています。管理スタッフとオーナー様との間で築き上げられた信頼関係の延長線上で、ienoteではオーナー様のお困りごとを解決するための、ご家族に代わる身近な存在になりたいと考えています。
  管理スタッフと共にオーナー様宅へお伺いする、定期訪問専任のスタッフ

  大東建託パートナーズ内の既存スキームを活用したことで、ienoteの事業立ち上げは他の事業案と比較して早かったのでしょうか。

岡部  そうですね、ienoteでは大東建託パートナーズの持つ顧客管理システムと協力業者のリソースを活用することで、お客様へのご提案・契約から施工管理までを一括管理することができるため、新たな事業スキームの構築に時間を掛けずにスタートさせることができました。3次審査通過から2か月後の今年5月から実証実験を始め、今は「お困りごとサービス」に絞って開始しています。もう一つの「空き地休耕地管理サービス」はこれから展開していく予定です。

ienoteのビジネススキーム/大東建託パートナーズと連携し、オーナー様宅への定期訪問時に「お困りごと」をお伺い。ienoteへ情報をつないでいく。

ienoteのサービスメニュー(リーフレットより抜粋)

空き地休耕地管理サービスの事例/ienoteがお客様の土地の手入れを一年通して定期的に行い、常にきれいな状態を保つことで不法投棄やトラブルの予防にもつながる

  他の方にも同じような経験があるのでしょうか。

安永  特に独り身のオーナー様からは「手伝ってほしい」と本当に些細な相談事をされることがよくありましたね。一方で、私達管理スタッフがどの程度までそういった相談を受けられるのか、ということも課題に感じていました。「何とかしてあげたい」という気持ちはありつつも、それができなくてもどかしさを感じている管理スタッフは全国的に多いだろうなと感じていたので、岡部さんのアイデアには共感できました。大東建託パートナーズ内だけでなく、大東建託の建築営業の人たちにとっても、そういう相談をオーナー様から受ける事は多いと思うので、窓口をしっかり設けて分業化することで、営業サポートにもつながるのかなと感じています。

  お客様とコミュニケーションする上で、1番大切にされていることは何でしょうか?

岡部  オーナー様と当社グループとの間にある信頼関係がベースある、というのが他社のサービスにはないienoteの一番の強みであり、一番大切にしていることです。この関係があるからこそ、言いにくい悩みやご相談なども気軽にienoteにお話しいただけていると実感しています。だからこそ、こちら側も的確なアドバイスやご提案をオーナー様へ差し上げられるよう、緊密に連絡を取りながら気持ちに寄り添うコミュニケーションを心掛けています。こうしてienoteがオーナー様との繋がりを大切にしていくことで大東建託グループの中でも相乗効果が生まれ、より強い信頼関係の構築につながっていくと思っています。

02.着想~事業提案まで / 始まりは「オーナー様の声」

  ienoteの事業は、みなさんが大東建託パートナーズで管理スタッフとして働く中で経験したエピソードから誕生したと伺いましたが、具体的にはどのようなエピソードがきっかけだったのでしょうか。

岡部  この新規事業提案に至ったきっかけは、ご自宅の室内設備の交換・修理や草刈りといった賃貸住宅管理以外のサービスを求める「オーナー様からの声」でした。大東建託パートナーズの持つ賃貸建物管理スキームの中でこのニーズに応えることも可能でしたが、対応については担当者の裁量に委ねられていました。こうしたご自宅の「お困りごと」を解決する新規サービスができれば、顧客様ニーズに応える柔軟なご提案が行えるようになり、大東建託グループが提供するソリューションの1つになるのではと考えました。
また、もともと私自身が「一年に一回は形に残る仕事をする」ことを目標に掲げ、本業とは別に、プラスアルファで何か他のことにも挑戦することを自分の中で決めていました。ミライノベーターで新規事業に挑戦しようと思ったきっかけも、そうした気持ちから興味が湧いたというのがそもそもの始まりだったように思います。

  発端は岡部さんからだったのですね。ミライノベーターの事業オーナーは最大3人までですが、営業所の異なる社員がどのようにしてメンバーになったのでしょうか。

二見  岡部さんが私に声を掛けてくれたのは応募前で、この3人のメンバーになったのは2次審査後です。安永さんは別の新規事業提案をしていて、2次審査に向けた仮プレゼンの際に初めて出会いました。安永さんは大東建託パートナーズの管理建物周辺の植栽管理に関する提案をされていて、庭木の剪定なども提供サービスの1つに含めていた私たちの提案事業と内容が近いと感じてスカウトました。

岡部  私は設定した目標を徹底的に追い求めるタイプです。一方、二見さんは状況を冷静に判断しながら問題をスムーズに解決する能力があり、安永さんは相手を思いやる心を持ちつつ、一途に努力を重ねるタイプです。私たちが一つのチームとしてそれぞれの個性を発揮していけば、互いを高め合い、確実に良い結果が得られると確信していました。それが、二見さんや安永さんに声をかけた理由です。

  最終審査の中で一番伝えたかったこととはなんでしょうか。審査通過に向けて大変だったことはありますか。

二見  「実際に困っている人がいる」と言うことを審査員へ一番に伝えたいと考えました。これまで私達が頭の中で思い描いてきたアイデアをカタチにするために、提案事業は本当に顧客様の課題の解決になっているのか、その事業は求められているものなのか、持続可能な事業なのか等の視点で事業性を考えながら、提案資料の中に落とし込んでいく過程が一番大変だったなと感じます。 他の新規事業とは異なり、実際にオーナー様からの声も業務を通してお伺いしていたので、ienoteの事業案に顧客様ニーズがあることは確信できていましたが、お困りごと解決サービスをただ既存オーナー様に展開するだけでは、大東建託パートナーズの事業領域内で終わってしまい、新たな事業化につながらないと感じていました。ienote事業のもう1つの柱である「空き地休耕地管理サービス」は、そうした中で行ったオーナー様への空き地休耕地の管理状況に関するアンケートで、オーナー様の約半数が「自分自身で管理をしている」という実態から見えてきた課題を、何とか解決できないか?という思いから生まれました。

03.ミライノベーターを通して見えてきたこと / 大東建託グループ成長の新たな動力になる

  新規事業オーナーとなってみて何か変化はありましたか?挑戦してみてよかったと感じる瞬間はどんな時ですか?

安永吉伸さん/空き地休耕地管理に関する市場分析・競合分析を担当し、実行性を高める戦略企画を行う。

安永  私自身も岡部さん同様、新しいことにチャレンジし続けることは大事だと考えていて、これまでにもミライノベーターだけでなく、普段の仕事以外の挑戦をいくつも続けてきました。最近は新規事業の提案を目指す色々な人から相談を受けるようにもなってきていて、「どんな事にチャレンジしたらいいのか?」「どんな風に取り組めばいいのか?」「どんな心構えでいたらいいのか?」など、全然知らない社員から電話が掛かってくることもあります。やりがいは、自分自身の「やりたいこと」が形を成し、それが社会の中で誰かの役に立っていると実感することで得られるものだと考えています。こういった相談を受けるようになったことで、私の挑戦からも少なからず会社に影響を出せているのかなと実感しています。

  新規事業の魅力とはどんなものでしょうか。先ほど安永さんから「やりたいことの実現」という言葉が出てきましたが、当社グループが成長する中でその実現はどんな役割を担っていくものだと感じていらっしゃいますか?

二見  ミライノベーターは、この会社で成功していくための1つの手段だと考えています。この制度で感じる最大の魅力は「事業リスクが少ない中で新規事業に挑戦ができる」という点です。前職にベンチャー企業で働いた経験がありますが、自分がやりたい事業をやるにもリスクと隣り合わせの中でやっていました。ミライノベーターは、社員の誰もが大東建託グループが持つリソースを活用しながら、自身の手で道を切り開くことができる制度です。こうして私たちが新規事業に挑戦している姿を発信していくことでミライノベーターが身近な存在となり、「自分もやってみようかな」という気持ちを持つきっかけになれば一番いいなと感じています。

二見健太さん/大東建託グループ内の部門間連携・営業オペレーションを担当し、ienote事業スキームの構築と営業促進を行う。

二見  話は変わりますが、今年行われた大東建託グループ創業50年目を祝うグループ全社員対象の記念イベントがきっかけで、実は考え方にちょっと変化がありました。大東建託の竹内社長がスピーチの中でグループの力を大きな1つの「木」に例え、私たち社員一人ひとりの考動が「根」となり、そこから「枝」分かれしたグループ会社の事業がそれぞれに成長していくことで、「葉」となってコア事業である賃貸住宅を中心に社会に価値を生み出していく姿を表現していました。その絵を見たときに、「この会社の新規事業は、この「木」の中でグループが紡ぎだしている未来の1つ」なのかなと思えたんです。この話を聞いて、私たちienoteの成長も、グループの目指す未来の姿にしっかりとつながっているのだなと改めて実感できました。

04.ienoteの将来ビジョン  / “オーナー様に寄り添う”を第一に

 最後に、 ienoteの今後の展望について教えてください。

岡部哲也さん/ienote事業リーダーとして、事業戦略や方針の取り決めを担当。専任オーナーとして大東建託パートナーズ浜松営業所を拠点に営業活動を行う。

岡部  ienoteの最終ゴールはまだ決めていません。まずは日常生活の「困った」時に、本人のご家族に代わる身近な存在となることを目指し、そこからまたさらに成長していける事業にしたいと考えています。今はまだ大東建託グループと接点のあるオーナー様を対象としていますが、将来的にはオーナー様以外のお困りごとを抱えている地域住民の方にもターゲットを広げていく計画で、今後この実証実験の中で検証していく予定です。これに伴い、11月からienoteメンバーが1名増え、専任担当は私を含めて2人体制になりました。これまで以上にお客様とのコミュニケーションを大切にして信頼関係を強くしていき、何か困った時は気軽に「とりあえずienoteに聞いてみよう」と思えるような、“生活の一部”のような存在になれたらいいなと考えています。

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