社内ベンチャー制度「ミライノベーター」のミライ

企業を支援するシードアクセラレーター INDEE Japan 津嶋辰郎氏×小林社長 対談
第3回選考の総評と制度を進化させる秘訣とは?

事業活動

大東建託グループが2020年度にスタートした、社内ベンチャー制度「 ミライノベーター」。「熱い想いと事業アイデアであなたも社長になれる」をコンセプトとしたこの制度は、2022年4月より第4回の募集を開始しました。

2021年に実施した第3回の募集では、グループ社員から209件の応募があり、選考を通過したアイデアは実現性・再現性のある事業になるようブラッシュアップが図られています。そこで今回は、第3回の伴走を務めたINDEE Japan 代表取締役の津嶋辰郎氏に、総評と、「ミライノベーター」をより進化させるための秘訣を伺いました。


INDEE Japan
代表取締役 マネージングディレクター
津嶋 辰郎氏

製品開発支援、風土改革の他、イノベーション人材の育成にも力を注ぐ。学生時代に「鳥人間コンテスト」で2度の優勝経験あり。

第3回ミライノベーターを振り返って

津嶋 いろいろな会社の社内ベンチャー制度をみていますが、大東建託はモチベーションと参加率の高さ、そしてクオリティの高さが印象的です。提案者自身が日頃から大東建託グループとして生活総合支援企業となることを目指しているため、思い入れや臨場感が強いのでしょう。

小林 これまで事業を提案できる制度は社内になかったので、「ミライノベーター」は社員の刺激になっていると思います。当社は今後、自ら目標を作って頑張れる組織を目指し、将来的には、「ミライノベーター」という制度に頼らずとも、自然と社員が提案したアイデアを事業として育てていけるような企業にしたいのです。ですからこの制度は、事業発掘の場であると同時に、人材育成の場でもあると考えます。

津嶋 すばらしいのは、制度を開始した当初からある「社長を目指せる仕組みをスタートします」というメッセージが浸透していること。提案者との会話からもそれが伝わりました。


ー 現状の課題は? ー

津嶋 現状では、既存事業(建設・不動産事業)に近く、審査員にとって分かりやすい領域の提案が通過していると感じました。クレイトン・クリステンセンによる書籍『イノベーションのジレンマ』では、「大企業は持続的イノベーションによって成長してきたため、顧客の別の需要に目が向かない。そして破壊的イノベーションが起こせずに新興市場に参入できず、新興企業に大きく遅れをとる」とあります。
地場に深く根づいた不動産業界は安定的にみえますが、スマホの登場でカメラメーカーが苦戦を強いられているように、急激な変化が起こるかもしれません。

小林 既存事業に近い領域は、提案する社員も審査員もイメージしやすいですからね。

津嶋 それが自然の流れだからこそ、既存領域を出る分野のアイデアは外部審査員に判断してもらうなど、外部の力をもっと借りてもいいかもしれません。「ミライノベーター」は、そういうフェーズにきていると思います。

小林 既存事業に近いアイデアとそうでないもの、領域を分けて募集することも必要ですね。

大東建託 代表取締役社長 小林 克満

現在の事業リソースを活用し、既存の事業の枠を壊すような案が理想

 ー 審査のプロセスや進め方について、改善するためのアドバイス ー

津嶋 「出しても通らないかも」となると社員が不安になってしまうので、会社としてやりたいテーマや領域を定めるのがいいかもしれません。しかも、既存事業から離れたテーマが理想的。そうすることで、戦略的にイノベーティブな案が出てくるような気がします。
 
ただ既存事業にまったく関係ない領域ではなく、PoC(新たなアイデアやコンセプトの実現可能性、それによって得られる効果などについての検証)をするうえで、お客様に実際に会って話せるようなテーマであれば、強みを活かせますよね。
 
小林 つまり、入居者様やオーナー様の声を活かしたアイデアを有効に活用する方法をつくり上げる必要がある、ということ。PoCを効率的にできる仕組みがあれば、きっとチャンスメイクができるでしょう。また、自社の事業を改善するだけでなく、既存の事業の枠を壊すような「社内ディスラプター(破壊的起業)」も大歓迎です。
 
津嶋 それはすばらしいスタンスです。Amazonのように本も電子書籍も扱うなど、破壊的なイノベーション理論を実践する文化が浸透していくといいですね。
 
小林 現在の領域において、既存の事業や営業手法を超えていくような提案が出れば、検討のしがいがありますね。
 

ミライノベーターによって新しい価値を生み出したい

津嶋 社内アイデアを推進するには、社外の支援者を活用することが大事です。社内の協力者を巻き込みながら、事業化する方法などは外部に頼ることで、より発展していくでしょう。
 
小林 当社グループのみなさんには、「ミライノベーター」に何度でも挑戦してほしいです。既存と新規事業という「両利きの経営」をしていかなければ、企業は衰退へ向かいます。社員が自分の成長の機会として「ミライノベーター」を活用することで、オーナー様や入居者様にとって新しい価値が生まれ、社員と会社がともに成長できるようになればと考えています。

 

【ミライノベーター】これまでの事業案

●事業化第1号となった「いい部屋スペース」

個室のシェアオフィスや楽器の練習ができる「防音ルーム」など、多様なニーズに対応できるマルチスペースレンタル事業が事業化されました。練馬店・八千代店・新潟店・横浜北山田店・柏店の5店舗が稼働しており、今後も名古屋・福岡と続々オープン予定です。

いい部屋スペース 柏店

 社内選考を通過したアイデアは、事業化に向けて実証実験を進めています。
 
大東アース:建設発生土の再利用で土の高品質化と収益化を図る事業。実証中の浜松で黒字化を達成。
DIYキット販売「CODD(コッド)」:賃貸住宅でも安心して簡単にできるDIYキットを販売。
防災サブスク:防災知識とセットの非常食サブスク。福利厚生やふるさと納税で実証中。
自治会DX:アナログな自治会作業をアプリで解決。1次開発が完了し、複数の自治体が実証中。
建物ID・鍵管理センター:賃貸住宅の部屋単位でIDを付与し、空室確認や名寄せにて収益化。業界大手との合意形成中。
スマート農業:市街化調整区域の土地オーナー様にスマート農業を提案。AI潅水技術でのトマト栽培検討中。
中古戸建住宅のリフォーム+サブリース:戸建て空き家の所有者からリフォームを請負い、グループ会社で借上げ、転貸。実証内容の検討中。
 

「CODD(コッド)」で販売中のDIYキット 完成イメージ

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