温故知新 ~未来へのバトン~ 第2回: 「2×4工法」商品の歴史<前編>
技術・サービス
創業50年目を迎えた大東建託が目指す「賃貸住宅の在り方」とは何か。これまでの軌跡の中から未来へとつながるバトンを商品開発部の先輩・後輩社員による対談を通して見つけていきます。
中央/田﨑 俊幸(たざき としゆき):商品開発部 課長、1992年11月入社。大東建託初となる2×4(ツーバイフォー)工法による賃貸住宅の商品開発に関わり、発売当時大ヒットとなった「ニュークレストール24(ツーフォー)」を誕生させた生みの親。現在はスペシャリストとして商品開発に携わりながら後進の育成にも取り組む。商品開発歴29年(その他の本社歴も一部含む)
左/永井 千尋(ながい ちひろ):商品開発部 商品開発課、2019年4月入社。新卒として入社後に商品開発部へ配属される。清水さんと同じく「ニューライズ」の意匠を担当。その他、大東建託の高付加価値商品シリーズ「シエルオーナー」「シエルガレージ」などの商品開発にも携わる。商品開発歴4年
■ 第1部:起死回生の一手「ニュークレストール24」の誕生
清水ー鉄骨造主軸でやってきた大東建託が、なぜ新たに2×4工法に挑戦することになったのでしょうか?鉄骨造のままでは難しかったのでしょうか?
永井ー「ニュークレストール24」の前身となる商品があったのは知らなかったです!
清水ー木造2×4工法という言葉自体がまだ新しく、しかも鉄骨造が当社ではまだ主力だった中、社員もクレストール24の販売に苦労したのではないでしょうか?
体制や売上げ、社員への浸透もままならない状況にもかかわらず、一般地域(全国)向けに再び新たな2×4商品を作る号令が掛かったんです。当時売上げが伸び悩む状況の中での経営判断で、創業者がこの頃に視察で訪れたアメリカで、2×4工法の住宅を目の当たりにしたことがきっかけでした。その工法に可能性を見出した創業者からのトップダウンで、当社初の全国向けの2×4工法商品が誕生しました。 起死回生を狙いこの時指示された内容は、「輸入っぽいもの(輸入住宅風賃貸住宅)を作れ!」でした。
永井ー「輸入っぽいもの」の指示に対して、どうやってデザインへ落とし込んでいったんですか?
出来上がった最初の「輸入住宅風デザイン」は、従来からある中階段タイプだった
永井ー「変わっていない」という指摘を受け、変化をつけるためにどうアプローチしていったんですか?
2回目プレゼンのデザイン画。外観だけでなく屋根形状や間取りも一から考え直し、1つの「邸宅」に見えるような、これまでにないデザインが完成した。
※1 廊下や階段などの共用部分を持たない集合住宅
1回目プレゼン時のフロアプラン/当時の集合住宅では一般的な「中階段形式」を採用した
2回目プレゼン時のフロアプラン/各階に配置されていた玄関が1階に集約されたことで、1Fと2Fの間取りが異なる賃貸住宅が完成した
田﨑ー 資料を見せた途端に「これ自分の家にいいなぁ!」と好評価を受けました。即商品化が決定し、そこから2か月半後にフラットタイプ※2とメゾネットタイプ※3の2タイプ、計22プランが、全国に一斉販売されることが決まりました。こうしてできたのが、ニュークレストール24です。社内に浸透しづらかった2×4工法第1号商品のクレストール24から一転、ニュークレストール24は社員にも好評となりました。
※2 1階層からなる部屋、※3 室内に階段があり、2階層以上からなる部屋
2回目プレゼン時の外観デザイン案/海外住宅を模した「輸入住宅風デザイン」の外観が完成。
完成したニュークレストール24。開発着手から2か月半で販売開始に至った。
当時の商品パンフレットに掲載された内観※(一部抜粋)/玄関から2階リビングまでの吹き抜けや、戸建で使われる建材を採用するなど、これまでのアパートとは一線を画した、魅力ある空間となった ※メゾネットタイプ
ニューライズ(2022年)
ニューライズには、多彩なプランバリエーションに加え、趣の異なる4つの外観デザインも用意されている
第2部:2×4工法から始まった木造賃貸住宅への挑戦
清水ー初めて全国展開する商品が鉄骨造ではなく、2×4工法に決まった背景は何だったんでしょうか。前例がない中での全国展開に、ハードルはなかったんでしょうか?
清水ー全国展開に向けて、どのように材料調達と施工体制を整備していったんですか。
永井ー2×4工法が定着した後も、当社は新たな工法(ネオフレーム工法※4)の開発などに挑んできていますが、それはどうしてでしょうか。
田﨑ー ネオフレーム工法は、使用する集成材をすべて工場でプレカットすることで、現場での廃材量の削減にも、施工精度の向上にも寄与できる合理的な工法です。この新工法の開発には、私も参加していました。
2×4工法は、「ニュークレストール24」の開発をきっかけに、大東建託の主力工法へと成長しましたが、その道のりは平坦なものではありませんでした。特に、1994年にアメリカ(クリントン大統領政権下)で策定された森林計画 を受け、輸入木材を入手できなくなくなったことを背景に、木材ではない“スチールハウス工法 ”に取り組んだこともあります。その後、木材に頼らない当社オリジナルの“Kブレース工法(鉄骨造)”の開発や、国内林業活性化に向け国産材を活用した“ネオフレーム工法”の開発などが進められ、当社の商品開発 はさまざまな社会課題と向き合うことで多様化してきたんです。現在では、現場作業の負担を軽減するなど、昨今深刻化する大工の担い手不足といった課題解決にも貢献できる工法として、エコプレカット工法もありますね 。
永井ー 「今までにないことをやろう」という大東建託の柔軟な考え方が、社会や求められるニーズの変化も、成長のきっかけへと上手く切り替えることができたんですね。
第3部:これからの未来へ、つないでいきたいこと
永井ー田﨑さんの考える「大東建託らしさ」とはどんなものでしょうか。
永井ー 確かに、外観を見ただけで大東建託の建物だと分かります!そう考えると、最近の商品はより建物の中での「暮らし」に焦点を当てていて、生活の豊かさの表現方法は「“賃貸住宅らしからぬ”間取り」へと変化してきたのかなと感じました。
田﨑ー 時代の変化とともに人々の価値観や暮らし方が変わってきたのだろうと思います。最近の商品の中には、これまでの賃貸住宅には当たり前にあった“バルコニー”に代わり、“サンルーム”を取り入れた 間取りも出てきていますね。これも近年の小家族化やライフスタイルの多様化に合わせた新しい挑戦だったと思います。商品開発の現場でも、私達の生活を取り巻く環境の変化に合わせて、アプローチの仕方や時間の掛け方など昔とは違ってきていますが、「設計者として自分自身の“思い”を一番大切にする」という事だけは、これからの世代のみなさんにも、ずっと持ち続けていって欲しいなと思っています。
サンルーム仕様の間取り例/入居者様の暮らしにゆとりをプラスする自由な空間「エクストラルーム」を設置(クルールピット)