温故知新 ~未来へのバトン~ 第1回: 商品開発の歴史<前編>
技術・サービス
これまでの軌跡を辿ると、時代とともに変化が求められる「賃貸住宅の在り方」に向き合い続けてきた商品開発の歴史が見えてきます。大東建託がこれまでどのようにして入居者様のニーズを捉え、オーナー様から支持される事業性の高い商品を創り出してきたのか。今回は、商品開発の最前線で戦い続ける社員にクローズアップし、市場や時代の変遷を振り返りながら、商品開発に対する思いを語ってもらいました。
※1 2023年3月末時点
左/須賀 七海(すが ななみ):商品開発部 企画デザイン課、2019年4月入社。新卒として入社後に商品開発部へ配属となる。商品の販売促進や、賃貸住宅コンペ、防災と暮らし研究室「ぼ・く・ラボ」の活動、技術分野のプロモーション業務などに従事。商品開発歴4年
商品開発歴32年の“商品開発の生き字引”とも言える松岡さんの経験談から見えてきたのは、今日の大東建託を築き上げるまでに経験した、いくつものターニングポイントと、それを乗り越えようと挑戦し続ける姿でした。今回は、このインタビューを通し、これまでのターニングポイントを3つの転換期に整理し、時代を超えた不変の価値観を探っていきます。
■ 第1部:1974年から続く、挑戦と躍進の軌跡に迫る
<市場の転換>
※2「限りある大地の最有効利用を広範囲に創造し、実践して社会に貢献する」を経営理念として掲げている
貸倉庫・貸工場市場から、なぜ「賃貸住宅」だったんですか?
須賀ー 建物賃貸事業の形態を時代のニーズに合わせて変えていった、というのが正解なんですね!
松岡ー 賃貸住宅の市場参入については、当社は後発です。「他社に追い付け、追い越せ」の精神で「他社にはないもの」を作ることで事業をこれまで拡大させてきました。この頃から既に35年一括借上システム(賃貸経営受託システム)の前身となる「大東共済会※3」が導入され、空き家期間のオーナー様の家賃収入を保証する仕組みによって安定した賃貸経営を実現し、オーナー様からの信頼を獲得していきました。
※3 保険業法の改正を機に「大東共済会」は廃止。
入社当時、支店は毎年10支店ずつ増えるほどの急成長期だったという
賃倉庫・貸工場などの事業用賃貸建物から始まった大東建託が、新たに賃貸住宅市場でも成長できたのはどうしてなんでしょうか?
「常に成長している」というイメージが入社時から強かった、という須賀さん
賃貸倉庫には、建物の顔となるエントランスのデザインと機能性を追求した商品が開発されていたという
創業当時のパンフレットにはさまざまなファサードデザインの倉庫・工場が並ぶ。この頃は鉄骨造の事業用建物が主体だった。
創業期の商品開発の現場の様子はどうだったんでしょうか?賃貸住宅市場にシフトして、変化したことはありましたか?
私が入社した1991年はちょうどバブル崩壊後で、既に当社は居住系へシフトしていたことから、即戦力として住宅設計経験者が多く入社してきていました。この時大東建託では、これまでの貸倉庫で培った鉄骨造の技術を活かし、耐震性を高め環境負荷を低減した新工法「鉄骨造システムブレース構造(以下、K型ブレース工法)※4」の開発が進められていました。入社当時の私はK型ブレースによる「ニューエルディム(片廊下タイプ)」の商品開発と、全国に増える支店強化に向けて、新鉄骨造による大東建託専用事務所の設計を担当していました。この時代の当社は、大東建託のブランドイメージを高めようと、デザイン面にも挑戦的な姿勢で向き合い始めていて、全国にシンボリックなデザインの支店を次々と建てていました。
エントランスから続く、中と外をつなぐ曲線の壁が印象的な大東建託金沢支店(大東建託専用事務所)
<建築工法の転換>
2×4工法を選んだ理由は何だったのでしょうか?
カナダから職人が来日し、アドバイザーとして現場従事者へ指導。このことをきっかけに、当社の建築工法は大きく転換してゆく。
賃貸住宅市場へ参入するために商品に求められたのは、どんなデザインだったんですか?
2×4工法による当社初の全国向け賃貸住宅「ニュークレストール24」(1995年)が誕生。輸入住宅がまだまだ珍しかった当時、戸建て感覚を取り入れたアーリーアメリカン風デザインが人気を博した。
ジョージア風「バーシア」(1998年)
スパニッシュ風「プラーノ」(1999年)
イタリアン・ヴィラ風「メリディオ」(2004年)
南仏プロバンス風「サンレミ」(2004年)
<商品構造の転換>
時代の変化とともに商品も多様化し、今では「防災」「環境」「ライフスタイル」のコンセプトに基づいた商品が生まれてきていますよね。これまでのデザインの方向性や開発のプロセスから変化はあったのでしょうか?
本社には、創業当時からの全ての商品パンフレットが保管されている
松岡さんが担当者時代に企画提案のために描いた商品デザイン画(一部)。当時は商品パース・図面は全て手作業で行われ、全国に図面を郵送で送るなど、全てアナログ作業だった。
初期の賃貸住宅のパンフレットには、デザイナー手書きの建物パースが載っている
2022年2月に企画型(高級路線)商品として販売開始された「シエルコート」
DK SELECTが誕生して以降は、ブランドコンセプトに基づいた商品開発方針が立てられるようになったことで開発効率が上がり、開発期間は最短で4か月程度に縮まりました。