それは、
コーヒーがくれた
出逢いだった
ありふれた毎日の中に、
溶け込んでいる「まさか」のこと。
ささいな日常にも目を凝らしたのなら、
暮らしが変わる瞬間も、見えてくる。
3つの深さでつづる、ストーリー
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6:30am
Name:りょうすけ
Old:28
Job:雑貨屋店員
『メッセージが届いたようですよ』
9:00am
『タカシさんはいつも朝が早いんですね
この前のトーク履歴なんかみると、
この前なんか、朝からサーフィン行ってきたって言ってたな。
朝からサーフィンに行ってきたって言ってらっしゃったような。
体幹を鍛えられるスポーツは体力づくりにも
健康維持にもいいと聞きます。
始めたくなったらいつでも言ってください。
スクール情報をお調べしますよ』
今日はアラームを鳴らす必要のない朝。
あくびを噛みながら返信するうちに、
朝に弱いあなたも少しずつ目が覚めていくみたい。
『おはようございます。現在の天気は晴れ、気温は…』
あぁほら、打ち間違えないように気をつけて。
9:30am
ゆっくりできる日は、
お気に入りのドリップコーヒーから。
『タカシさんが誕生日にくれた
セラミックのフィルター、
確かに便利だし美味しく飲める気がする。
珍しくSNSにアップする写真を5枚ほど
撮影してみて挫折してましたよね』
「うるさいなぁ、苦手なんだよ」
『SNSにはあげられなくても、
たしかに便利だし美味しく飲める気がするって、
毎日使っているのはすごく微笑ましいと思います。』
「フィルターを買い足さなくていいから
楽でいいな。
楽でいいんだよ」
『えぇ。環境にも良いアイテムなんですよね。
見た目もお洒落ですごく素敵です』
「でも、そろそろコーヒーを
買い足さないといけないみたいだ。」
『お買い物にいきますか?』
「天気も良いし買いに行こうか。
前に買ったお店の定休日はいつだったっけ。」
『水曜日が定休日のようですね』
10:00am
うっかりSNSに没頭。
『お出かけするんじゃなかったんですか?』
最近、いい感じの棚が欲しいんだよなぁ
「最近、いい感じの棚が欲しいんだよなぁ」って、
ここ三週間ほどチェックし続けているのは知っていますけど。
「DIYとかできたら楽しそう。
でも道具とか揃えるのも面倒だし、
中古で良さそうなの
見つけるのが俺には合ってるな。」
『新品でやたらと物を増やさないのはいい傾向です。
本当は廃材を使ってご自身で作られたら…
なんて思うんですが、
それは高望みというものですね。
リユースでいいものを探しましょう』
11:00am
「今日の天気は?」
『よく晴れていますが、夕方からは雨になりそうです』
「こんなにいい天気なのに、夕方からは雨か」
『洗濯物は取り込んでおいてくださいね』
「今のうちに買い物は
行っちゃう方がよさそうだな。」
『野菜もちゃんと買ってください。
ここ最近ビタミン不足です。』
「濡れたくないし、
折り畳み傘…は自転車だと危ないか。
早めに帰ってこようっと。」
『そうしましょう。
雨までに帰れるように
近道のルートを出しますよ』
11:30am
「あれ、こんなところに店があったんだ」
『素敵なお店ですね』
「いい雰囲気。あとで寄ってみようかな。」
『写真に撮っておきましょう』
「おはよう」
『せっかくならお話されてみては?』
「え、あ…すみません、こんにちは」
「いい天気だね」
「はい。あ、でも夕方からは雨らしいです」
「そうなのかい?じゃあ洗濯物はしまっておこう」
「…あの、ここって夜もやってますか?」
「じゃあまたあとで」
「待ってるよ」
『なんだか嬉しそうですね?』
「お店へのこだわりや歴史を聞けると、
ちょっと近い関係になれた気がして
うれしいもんだよ。」
『そういうものですか』
「コーヒー豆もとっておきのやつを売ってくれるみたい。
ここの店は、豆もフェアトレードのやつしか
扱ってないらしいよ。
せっかくおいしいコーヒーなんだから、
目に見えない事情にも配慮したいって言ってた。
単純にすごいと思う。」
『自分が使っているものが
世界や地球にどんな影響を与えているのか、
ちゃんと分かっている方だったんですね』
「「行きつけの店」の一個くらい、俺にあってもいいよな。」
「車どうする?」
「あーそうだそうだ。これどう?」
「へー、こんなサービスあるんだ?」
『マイカーをシェアするといったサービスでしょうか』
「そうそう。レンタカーも中古車のリユースって
言えばまぁそうなんだけどさ。
こういうサービスだと新しく知り合いが
増えたりもするから、俺は最近よく使ってる」
「流行ってんの?」
「まぁ、シェアカーとか
シェアサイクルは増えてきてるんじゃない?
俺もここの人たちに教えてもらったんだけど」
『ここにいる方々は皆さん情報通なんですね』
「情報通って(笑)。でも確かに、
みんな色んなことを知っているから
助かることも多いかな」
「キャンプにも持っていけるのいいな、それ」
「あぁ。結構軽いし、普段もよく使ってる。
こっちは土からできるらしいよ」
「マジで?すげーな、プラスチックにしか見えないのに」
『検索しますか?』
「うん。お、意外とそんなに高くない。
ちょっと探してみようかな」
02:00pm
「小さい雑貨屋でも結構売ってるんだなぁ。」
「お、これいい感じかも。」
『使用素材からエコプロダクトか
どうか測定しますか?』
「いや、いいよ
俺は素材のこととかはよくわからないけど、
軽さもちょうどいいし、これにしよっと。」
『素材的にはそのお隣の方が』
「あ、袋はなくていです。入るんで」
『エコですね』
「たまたまだよ、荷物もゴミも多くなると面倒だから」
「あとは喫茶店でコーヒーを買って…」
03:00pm
「こんにちは」
「さっきタンブラー買ってきたんですよ」
「じゃあ今度そちらを持ってきてくれたら少しサービスしますよ」
「え、いいんですか?」
「もちろん。あとこれ、もしよかったら」
「え!いただいちゃっていいんですか?」
『とても立派な野菜ですね。みずみずしくて綺麗です』
「趣味で小さい畑をやってるんだけど、
僕と妻だけじゃ食べきれなくて」
「へぇ、ありがとうございます!」すごい。
お店のメニューに使ったりはしないんですか?」
「店に? いやいや考えたこともなかったなぁ…」
「絶対いいと思いますよ、プチ地産地消みたいな(笑)。
とにかくこれ、ありがとうございます!」
『いいアイディアですね、プチ地産地消。
配送コストや燃料のことを考えると、
その方が環境にもやさしそうです』
「知っている人が作っていると思うと
なんだか心があったかくてくすぐったいよ。」
『素敵なご主人でしたね』
「店主さん、今度サンドイッチでも
試作してみようかなぁだって。
そしたら絶対食べに行くって
言っておいた。
挨拶してみると、
こんなこともあるんだなぁ。」
『心拍数と体温がやや上昇しています。
行きつけができそうでよかったです』
04:00pm
「野菜もあるし、今日は久しぶりに何か作りたいな。」
『いただいた野菜と今ある調味料で作れるメニューを出しますか?』
「うん。最近忙しくてなかなか自炊もできていなかったけど、
そういえば俺、料理作るのもそこそこ好きだったよなぁ。」
『はい。過去に保存したメニューは三一件ありますよ』
「明日も朝、店主さんに会えるかな。」
『コーヒーを買いに立ち寄ってみてもいいかもしれません』
「うん。もし目があったら、野菜美味しかったですって
また挨拶してみよう。
こういう小さなところから少しずつ、
毎日が〝暮らし〟になっていくのかもしれないな。」
『雨が降ってきたみたいです』
喫茶店の情報とマップとリンクさせて、
タカシさんとのキャンプ日程もカレンダーに。
心拍数や脈拍の記録と、今日のお買い物の記録も。
冷蔵庫の中身の情報もアップデートしておきますね。
ご飯ができたらいつものBGMも流しましょう。
今日は少しアップテンポでもいいかもしれませんね。
こうして少しずつ、わたしはあなたの側で、暮らしのことを知っていく。
三月十一日。
ほんの少し、この街が近くなった日。
いつも私のそばにある、生き抜くそなえ
普段の何気ない習慣を、少し見方をかえてみる。
防災は、実はもう少し、奥が深いもの。
環境に配慮したささやかなアクションも回り回って、自然災害を起こさずに
ともに生きていくそなえに、繋がっている。