温故知新 ~未来へのバトン~ 最終回: 賃貸住宅ブランド「DK SELECT」<前編>

大東建託が「DK SELECT」で目指す賃貸住宅の在り方とは・・・?

技術・サービス

賃貸住宅商品の開発者とともに大東建託の商品開発の歴史を振り返る「温故知新 ~未来へのバトン~」。最終回は当社の賃貸住宅ブランド「DK SELECT(ディーケー・セレクト)」をテーマに、大東建託の目指す「賃貸住宅の在り方」を紐解きます。

右/下平 孝洋(しもだいら たかひろ):商品開発部 課長。2008年入社時より40もの商品を手掛ける。近年では、2階建長屋「クルール」シリーズや「ニューデフィ」、3階建共同住宅「コンテチェストⅢ」、「ぼ・く・ラボ賃貸」シリーズの商品開発を担当。商品開発歴15年
中央/北村 春樹(きたむら はるき):商品開発部 商品開発課、2019年入社。新卒として入社後、商品開発部に配属となる。現在は、下平さんのチームでCLT3階建共同住宅「フォルターブⅢ」の商品開発を担当する。
左/右手 健介(うて けんすけ):商品開発部 商品開発課、2019年入社。新卒として入社後、商品開発部に配属となる。北村さんと同じく、現在は下平さんのチームでCLT3階建共同住宅「フォルターブⅢ」の商品開発を担当する。

※所属は2024年3月末時点のもの
今回は、商品開発部の課長である下平さんと、後輩社員の北村さん、右手さんへのインタビューです。2016年のDK SELECT誕生後に入社した北村さんと右手さんにとって、商品開発は既にブランドコンセプトを基に進められていたため、ブランド誕生の背景についてはあまり詳しく知りません。下平さんへのインタビューを通してブランド誕生の歴史を紐解き、これまで経験してきた“困難を乗り越える姿勢”から、さらなる成長への糧を見つけていきます。

■第1部 : DK SELECTの誕生

DK SELECTとは

2016年1月、自分らしい生き方を叶える 賃貸住宅を目指した賃貸住宅ブランド「DK SELECT」が誕生し、当社グループは新たな舵を切って進み始めました。DK SELECTの展開にあたり、特に商品開発は、お客様の声と当社グループの思いを賃貸住宅というカタチで実現するための重要な要素と位置づけられ、賃貸経営を考えるオーナー様や、そこに住まう入居者様から選ばれる、時代に合わせた商品の開発に注力してきました。

北村:ブランド名「DK SELECT」にはどんな思いが込められているのでしょうか?

北村 春樹さん

ーー下平:「DK SELECT」は、大東建託が追求する「賃貸住宅の在り方」を示した建物ブランド名称です。当社の商品開発は、住まう人の嗜好やライフスタイルに合わせて自由に選択でき、自分らしい生活を送るための「自己実現の場※1」とすることを究極の目標としています。

※1 アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した、人間の欲求を生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現の欲求の5つの階層に分けて説明した心理学理論。自己実現の欲求は最上位に位置し、人間が自己の能力や可能性を最大限に発揮し、自分自身の成長や達成感を追求する欲求のことを指す。

下平 孝洋さん

ーー下平:また同時に、個人の所有物である戸建住宅と異なり、賃貸住宅は入居者様の高い流動性が特徴の循環型住宅として、サステナブルな役割を果たす必要もあります。そのためには、社会課題や家族形態など時代の変化に合わせた進化が求められます。

「DK SELECT」には、生活者のライフスタイルに寄り添う住環境を追求するだけでなく、変わるものと変わらないものを的確に見極めながら、時代に即した柔軟な賃貸住宅の在り方を探り、住まいの本質的な価値を持続的に提供するという当社の姿勢が込められています。

賃貸住宅が向き合う課題

右手:DK SELECTが誕生するきっかけは何だったのでしょうか?

右手 健介さん

ーー下平:何か明確なきっかけがあったというより、社会の変化に合わせて必要になったのだと思います。

2011年頃からCSV経営※2が広まり、社会全体で事業活動を通じて社会課題の解決が求められるようになったことが、DK SELECTが誕生する背景にあったのではないかと思います。特に賃貸住宅の建設は、物的・人的な面で地域社会に大きな影響を与えるため、地域社会との共存がますます重要になってきました。
さらに、当社の賃貸住宅は全国に約220万人※3の方にご入居いただいており、日本の人口の約60人に1人が当社賃貸住宅に住んでいる※4という規模にまで成長しました。これにより賃貸住宅の地域社会への影響がより意識され始め、当社でも「社会の公器」という視点を取り入れた商品開発が行われるようになりました。そして、当社の特徴を活かした賃貸住宅をブランドとして定義し差別化を図っていくことになったのだと思います。

また、賃貸住宅の可能性を当社グループだけでなく、社会とともに追求するために、2012年から毎年「大東建託 賃貸住宅コンペ」を開催しています。このコンペを通じて、多様化する価値観を取り入れた賃貸住宅の仕組みや空間の在り方などについて、若い世代も含めて幅広く議論が交わされるようになりました。


※2 Creating Shared Valueの略。事業活動を通じて社会の持続可能な発展に貢献し、経済的な成功と社会的な影響力を両立させ、持続可能な社会の実現を目指す事業経営手法。
※3 算出方法:居住用家賃管理戸数×1.85人/戸
※4 総務省統計局人口推計2022年12月1日時点の日本総人口(1億2,486万)確定値より算出

DK SELECT誕生に向けた商品開発のあゆみ

右手:大きな社会変化のうねりの中で、社会課題の解決に貢献できる価値の提供が求められていることが分かりました。2012年の賃貸住宅コンペ開催から2016年のDK SELECTが誕生するまでの間に少し期間がありますが、その間どのような商品開発が行われたのでしょうか。


ーー下平:それまでの間も、私たちは様々な社会課題をテーマにして商品開発を行い、試行錯誤を重ねてきました。

環境問題に対しては、2014年にパッシブデザイン※5を取り入れた商品「ソヨカ」を40周年記念商品として開発しました。この商品については、自然の風の流れを取り入れる設計や、室内に取り込む日差しを調節する機能を備える他、敷地内には蓄熱温度を通常よりも低く抑える効果のある舗装材や植栽を配置するランドスケープデザインなども取り入れ、敷地全体が一年を通して心地よい環境となるよう設計しました。

また、少子高齢化問題に対しては、将来の入居需要構造の変化に対応させる新たな試みとして、2016年に多世代コミュニティ賃貸住宅「エンテラス」を開発しました。今後増えていくシニア層と子育て世帯層を基軸に、互いを支え合う持続可能なコミュニティ形成を目指したこの取り組みは、前例のない入居者様募集と管理・運営体制への新たな挑戦でもありました。

※5 機械に頼らず太陽の光や熱、風など自然の力を利用することでエネルギー消費を抑え、快適な生活環境や室内気候を実現させようとする設計手法。

ソヨカ(2014年)

エンテラス(2016年)

ーー下平:これら商品開発での取り組みは、社会に向けた当社の新たな姿勢の表明となりましたが、同時に社会課題の解決に向け、賃貸住宅の役割や課題も明確になりました。

「オーナー様、入居者様、地域社会、当社グループとの関係性をどのように築くか」 ということ。すなわち、コストの配分をどう考えるかということです。社会貢献だからといって、オーナー様の負担が過剰になってはとても持続可能な関係性とは言えません。緩やかなWIN-WINの関係をデザインすること、このバランスが非常に重要です。

特に前例のない新たな取り組みであれば尚更です。新たな取り組みによる影響を様々なステークホルダごとに検証し続けて、社会課題に真正面から向き合っていくことが、“賃貸住宅に求められていること”として明確になったと感じています。


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