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【初心者向け】不動産の証券化とその仕組みをわかりやすく解説

公開日: 2024.04.30

最終更新日: 2024.05.01

不動産経営というと、土地と建物を所有し、貸付や家賃回収などの経営を行うのが一般的なイメージです。
しかし、このように不動産の所有と経営の両方を担うのは大変です。

「不動産の証券化」は、不動産を有価証券という小口の金融資産に変え、その証券を投資家に売却する手法です。これにより、現物不動産の所有者、投資家ともにさまざまなメリットを得ることができます。

この記事では、不動産の証券化の基礎知識について説明します。証券化の概要や専門用語の説明、メリットとデメリット、代表的な商品について、気になるポイントを具体的に解説します。

最後までぜひチェックしてください。

 

目次

1. 不動産証券化の概要

1-1.不動産の証券化とは何か?

1-2.不動産証券化に関する用語

1-3.不動産証券化の仕組み

2. 【不動産の所有者向け】不動産を証券化するメリットとデメリット

メリット1:投資の単位を小さくできる

メリット2:不動産のオフバランス化ができる

メリット3:不動産経営のリスクを分散できる

デメリット1:仕組みが複雑でコストがかかる

デメリット2:証券化できる不動産が限られる

3. 【投資家向け】証券化した不動産を購入するメリットとデメリット

メリット:少額でリスク分散ができる点・手間がかからない

デメリット:投資法人の倒産リスクがある点・ローンを利用できない

4. 不動産証券化の代表的な商品

4-1.J-REIT

4-2.不動産信託受益権

5. 不動産運用の一手法として証券化を押さえておこう

1.不動産証券化の概要


まずは、不動産の証券化を理解するために、専門用語をひとつずつ確認していきましょう。

1-1.不動産の証券化とは何か?

不動産の証券化とは、不動産を小口化して多くの人にその利益を分配する仕組みのことを指します。
不動産は高額で物件そのものを分割することはできません。

しかし、「有価証券」という形に変える(証券化)ことで投資の単位を小さくし、多くの人が所有できるようになります。
結果、株式と同様に、不動産経営のリスクを分散したり、流動性を高めたりする効果が期待できます。

 

通常の不動産では、物件から得られる家賃収入はそのまま不動産のオーナーへと入ります。
一方、証券化された物件から得られる家賃収入などの収益は、証券を購入した投資家へと分配されます。    

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1-2.不動産証券化に関する用語

まずは、不動産の証券化を理解するために必要な専門用語の解説をします。
これらの用語の意味がわかれば、不動産証券化のことをより理解しやすくなるはずです。

SPV

特別目的事業体(Special Purpose Vehicle)と呼び、不動産という資産を裏付けに、証券を発行する為の組織です。

 

SPC

SPVのうち、株式会社のような法人の形態をとるものをSPC(特別目的会社・Special Purpose Company)と呼びます。

企業から切り離した不動産を保有・利用するためだけに作られるもので、ペーパーカンパニー同様、事業や従業員の雇用は行いません。

SPCは保有する不動産を証券化し、投資家から出資を受けることができます。

 

・オリジネーター

オリジネーター(Originator)とは、証券化の対象となる不動産をもともと所有していた者を意味します。

オリジネーターはSPVSPC)に不動産を売却し、資金調達を行います。

 

・アレンジャー

「アレンジャー」(Arranger)とは、不動産の証券化において、資金調達者と投資家の間に立つ調整係を意味します。

アレンジャーになるために資格は必要ありませんが、専門知識が必要なことから、証券会社や都市銀行・信託銀行などの金融機関や、不動産会社・コンサルタントなどが務めるのが一般的です。

 

・投資家

投資家は、アレンジャーを経由してSPCから不動産証券を購入します。

これにより、不動産から生じる家賃収入などのキャッシュフローを得る代わりに、不動産の有するリスクを引き受ける存在です。

 

・証券化スキーム

証券化スキームとは、ここまで説明した不動産を有価証券という形にし、取引を簡単にする一連の流れのことです。

1-3.不動産証券化の仕組み

 不動産証券化は、以下のような方法で行われます。

①SPC立ち上げ

まずは、ペーパーカンパニーとしてSPCを立ち上げます。オリジネーターが所有する不動産をSPCに売却し、所有権をSPCに移します。

SPCの開設については、主に3種類のスキームに分類することができます。

 

・TK-GKスキーム

TKは匿名組合、GKは合同会社の頭文字です。証券化を小規模に行う場合に採用されます。配当への二重課税回避・不動産特定共同事業法の許認可を受けずに簡便に作れるという2つのメリットがあり、私募ファンドの多くで活用されています。

 

・TMKスキーム

TMKは特定目的会社の頭文字です。二重課税回避について、資産流動化法(SPC法)を根拠としており、確実性が高いと評価できます(TK-GKスキームは法人税基本通達14-1-3「匿名組合契約に係る損益」を根拠としている。)。一方、手続き面の負担が重く、時間がかかるスキームです。

 

・REIT(リート)スキーム

投資法人を設立し、不動産投資信託の形で金融機関や投資家に広く出資を募るスキームです。GK-TKスキーム・TMKスキームと比べ、個人の投資家も購入できる上場した公募ファンドで利用されます(非上場の場合は、私募ファンドの取り扱いになります)。

②出資を募る

 SPCは所有不動産を根拠に、匿名組合出資や投資口という有価証券にして、出資を募ります。

これらを購入する投資家や金融機関は管理運営の手間なく、不動産という資産を実質的に所有することができるようになります。

③収益を還元する

不動産が生み出した家賃収入・売却益などの収益は、証券を購入した投資家などに還元されます。

投資家は、有価証券を購入し、不動産から生み出される家賃収入や売却益などの収入を、配当金という形で得ることとなります。
もしSPCが金融機関から融資を受ける場合には、この収入をもとに、元金や利子が支払われます。

2.【不動産の所有者向け】不動産を証券化するメリットとデメリット


不動産の証券化が持つメリットデメリットを確認しましょう。

メリット1:投資の単位を小さくできる

証券化により、投資の単位を小さくし多くの投資家に購入してもらえるようになります。

現物不動産は株式などの資産と比較しリスクが少ない一方、価格が高く投資家にとっては安易に取得しづらいと評価されることもあります。

しかし、証券化によって投資単位が小口化されることで、投資する敷居が低くなる効果が期待できます。 

メリット2:不動産のオフバランス化ができる

オフバランス化とは、企業会計の財務諸表の一つである貸借対照表(バランスシート)から対象となる資産を分離することを意味します。

CRE(企業が所有する不動産のこと)は金額が高いことから、企業のバランスシートにおいても大きな存在感を持っています。
証券化では、不動産の所有権がSPC等に移行しているため、企業のバランスシートから不動産を消すことができます。

これにより、バランスシートがスリムになり、資産保有リスクの低減や、企業価値(財務的な評価)の向上が図れるメリットがあります。

メリット3:不動産経営のリスクを分散できる

不動産は現物資産であることから、災害による破損や老朽化、周囲の変化に伴う収益性減少などのリスクが存在します。
所有者を複数に分散することで、こういったリスクを投資家間で分散することが可能です。

投資家にとっては、証券の形であれば少ない金額で複数の不動産を実質的に所有することができるようになり、リスク分散の効果があります

デメリット1:仕組みが複雑でコストがかかる

不動産の証券化は、現物不動産の売買取引と比較して多くの人が関与しなければなりません。
関係者と行う契約や手続きなどの業務が煩雑で、専門知識も必要となります。

また、会社設立などの手続きを行うため、司法書士など専門家への依頼報酬などの諸経費も必要となります。

アレンジャーである証券会社や金融機関に対しても、スキームを構築する依頼報酬が発生します。

デメリット2:証券化できる不動産が限られる

証券化できる対象資産に特に制限はなく、不動産市場には、アパートやマンション、オフィスビル、ホテル、物流施設などさまざまな不動産を証券化した投資商品があります。
しかし、実務においては、高い価値があり利益を生み出す不動産でなければ、証券化しても買い手が見つからないというのが実情です。

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3.【投資家向け】証券化した不動産を購入するメリットとデメリット


不動産投資信託は証券取引所に上場しているため、株式や債券などと同じように、証券会社を通じて購入できます。
では、投資家から見た場合のメリット・デメリットはどういったものがあるのでしょうか。

メリット:少額でリスク分散ができる点・手間がかからない

現物不動産投資と比べ、小口の資金で複数の不動産に分散投資ができます。

現物投資では価格が高くて手が出せない不動産も購入できます。

少額であることから、市場でも売却しやすいという点も挙げられます。

また、株式や債券などのペーパーアセットと同じ有価証券のため、自ら
不動産の管理に関わる業務をしなくて良いのも魅力です。

デメリット:投資法人の倒産リスクがある点・ローンを利用できない                   

投資法人が倒産した場合、債権者に弁済した後の余った財産から投資金額を回収することとなるため、全額回収できないリスクがあります。
また、対象のREITの上場廃止が決定されたりすると、価格が下落する恐れもあります。

また、不動産の有価証券を購入するにあたって、不動産投資用のローンを利用することはできません
現物不動産のように、少ない自己資金で大きいリターンを狙うレバレッジ効果を狙うことができないのは、デメリットと言えます。

4.不動産証券化の代表的な商品


最後に、不動産証券化を利用した代表的な商品を2つご紹介します。

4-1.J-REIT

投資家から資金を集めて不動産を運用する金融商品です。
日本式の不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)からJ-REITという名前がついています。

投資家から集めた資金で不動産へ投資し、その不動産が生み出した賃料収入などが投資家へ分配される仕組みです。

J-REITは、個人投資家でも証券会社を通して銘柄を売買することが可能です。
比較的少額で投資できるため、株式や債券などと合わせ、資産ポートフォリオの一部にJ-REITを組み込まれる方もいます。

4-2.不動産信託受益権

不動産信託受益権とは、信託銀行等の第三者に不動産の管理運用を信託し、その受益権を売却する仕組みです。


具体的な流れは以下の通りです。

不動産の所有者が不動産を信託銀行等に託し、信託銀行から不動産信託受益権(不動産から得た収入を得る権利)を得ます。
この受益権を買主(受益者)に売却し、売却代金を得ます。買主は信託銀行等から、不動産から得た収入をもらいます。

 

不動産信託受益権は証券でありながら、J-REITと異なり現物不動産を所有するのと同様の節税効果があります。
そのことから、このスキームを用い、現物不動産を小口化してから、複数の子に相続するなどの方法を取ることができます。

管理は信託を受けた業者が行うため、不動産管理の手間も省くことができます。
相続税対策・遺産分割対策に活用できる点は大きなメリットと言えるでしょう。

5.不動産運用の一手法として証券化を押さえておこう


今回は、不動産の証券化について説明しました。

不動産は現物資産であることから、分割しづらく流動性が低いという特徴を持っています。

しかし、有価証券という形に変えることで、大勢の人が投資し、その利益を得ることができるようになります。
投資家にとっても、小口で不動産という資産を株式や債券、金などの他の資産とともに所有することで、リスク分散を図るニーズがあります。

今はその予定がなくとも、今後の資産運用や事業拡大戦略の一つのケースとして、頭に入れておきましょう。

■監修者プロフィール

公認会計士/税理士
梶本 卓哉

税務署法人課税部門(税務大学校首席卒業)、大手監査法人や大手投資銀行勤務等を経て公認会計士・税理士事務所開設。大手監査法人在籍時は、不動産のアセットマネジメントを行う上場会社の監査業務にも従事。宅地建物取引士の資格も有する。

【保有資格】:公認会計士、税理士、宅地建物取引士、管理業務主任者